読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
3年ほど前から健康診断を受けると、尿潜血があると言われます。再検査を受けると異常はないと言われるのですが、心配です。(69歳女性)

この相談に対して、慶応大病院泌尿器科教授の大家基嗣先生は以下のようにお答えになっています。
血が混じっている尿を血尿と言います。血尿は、尿が赤く、明らかに見た目で血尿と分かるものと、顕微鏡で見ないと血が混じっていることが分からない尿潜血とに大きく分けられます。

尿潜血の検査は、尿試験紙を尿に浸して反応を見ることで行います。試験紙は市販されており、検査は自宅でも簡単に行えます。ただ、この検査では血が混じってなくても陽性と出る疑陽性になることがあります。

特に女性の場合、自分で尿を採ると、膣(ちつ)からの分泌物や血液が混じることがあり、疑陽性が出やすくなります。

再検査は、顕微鏡で尿を調べたり、特殊な装置で尿に含まれている赤血球を調べたりして行います。

こうした検査を行って異常なしと判定されたのであれば、全く心配する必要はありません。一年に一度の尿検査を続けるようにして下さい。

血尿には、肉眼的血尿と顕微鏡的血尿があります。肉眼的血尿は腫瘍、炎症、外傷などにより尿路上皮の血管が破綻したときに多量に出血した場合に起こります。

顕微鏡的血尿の大部分は腎糸球体ろ過に際して基底膜の異常により小孔から漏れ出てきたものが多く、慢性や急性の糸球体腎炎のときにみられます。このほか、nutcracker症候群は左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈とに挟まれて静脈圧が上昇し、肉眼的腎出血を起こします。

特発性腎出血は諸検査にてもなんら異常のみられない肉眼的血尿のことをいい、別名「良性血尿」ともよばれます。

また、最近ではパナルジン、ワーファリン、バイアスピリンなどの抗凝固薬の過量投与による肉眼的血尿も多いので、慎重に問診する必要があります。

血尿の精査としては、以下のようなものがあります。
ただ、再検査でも尿潜血と診断された場合、腎臓結石や尿管結石、膀胱(ぼうこう)炎といった病気の恐れがあり、腎臓や膀胱に異常がないかどうかを調べる腹部超音波検査を行います。

また、膀胱がんや腎臓がん、尿管がんである可能性もあり、尿の中にがん細胞があるかどうかを調べる尿細胞診検査を行います。

特にがんは、命にかかわる病気で、早期に発見することが必要です。今後、再検査でも尿潜血が見つかるようでしたら、一度、泌尿器科を受診し、医師に相談することをお勧めします。

肉眼的血尿の場合、まず尿沈渣、尿細胞診および腎・膀胱の超音波検査を行い、病変部位の見当をつけます。これらの検査で確定的な診断ができない場合は排泄性腎盂造影やCT検査を行います。初期、中期の泌尿器癌では無症状のことが多く、単に肉眼的血尿が出るだけの場合が多いですが、晩期になれは腫脹、疼痛を訴えることもあります。

結石は結石疝痛で診断は明らかだが、排泄性腎盂造影が最も診断に効果的です。CTでは微小な腎結石まで検出可能ですが、すぐに治療を要するものではありません。膀胱炎は尿沈渣で血膿尿と細菌を認め、排尿終末時痛、頻尿、残尿感を伴います。

顕微鏡的血尿は尿沈渣で赤血球≧5/視野のことをいいます。軽度の基底膜異常のことが多いが、蛋白尿や円柱を伴う場合には慢性糸球体腎炎のこともあるので注意する必要があります。どちらの場合も糸球体ろ過に際して生じた赤血球の形態異常がありそれとわかります。

蛋白尿を伴わない症例では尿検による経過観察でよいですが、中等度以上の蛋白尿がある場合は腎内科に紹介する必要があります。このほか、泌尿器疾患を合併していることもあるので、超音波検査と尿細胞診を施行し、疑わしい場合には排泄性腎盂造影やCTを撮り、悪性腫瘍や結石など否定する必要があります。上記の諸検査でも異常がない場合は良性の顕微鏡的血尿として経過観察します。

ご心配ならば、まずはこうした検査をしっかりと行い、精査を行うことが重要であると考えられます。

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