ヨルカ×ヨルタに以下のような相談(彼にしてもらう健康チェック【ヨルコヨルタ】)が寄せられていました。
知り合いが、彼に乳がんを発見してもらったと言っていました。たしかに、セルフチェックを怠りがちの私には、彼にも協力してもらうというのは大切かもしれません。彼にチェックしてもらう際のポイントはありますか? そして、乳がん以外にも彼にチェックしてもらえる病気などはありますでしょうか?
(28歳 和歌子)
この相談に対して、産婦人科医の須藤なおみ先生は以下のようにお答えになっています。
優しい彼氏さんですね。 パートナーに乳癌を発見してもらったケースって結構あるんですよ。

彼にチェックしてもらう時も自分でチェックする時も、ポイントは一緒。月経直後のあまり胸が張ってない時期に、指先と手のひらでまんべんなく胸をなでてしこりがないかチェックしていきます。

特に、わきの下近くのエリアは乳癌が一番できやすい場所だから、バンザイした状態でくまなく確認してもらいましょう。乳首からお乳が出たり、出血したりしてないかの確認も大事。 乳首を軽く絞るようにすればチェックできます。

乳癌では、腫瘤上の皮膚の陥凹(Delle)、浮腫、発赤、皮膚への癌の浸潤、潰瘍形成などが乳癌の所見としては有名ですが、これらは進行した癌でみられるようです。早期の乳癌や良性腫瘍、乳腺症などでは皮膚所見はほとんどみられません。

また、上肢を挙上したり、手を腰に当てて胸を張ったときに、乳房の一部に陥凹(slight dimple)が現れないかどうかをみておくことも必要となります。これは、Cooper(クーパー)靭帯に乳癌が浸潤し、皮膚との距離が短縮されたために起こる現象です。

一般的に、乳房の触診は仰臥位で、両手を頭の後ろで手を組み、肘を張って、胸を張るようにした体位で行います。乳癌の特徴的な触診所見は、弾性がやや乏しい硬い腫瘤として触知し、表面は粗いか凸凹で、周囲の乳腺組織との境界がやや不明瞭となります。

触診のポイントとしては、腫瘤の形状、辺縁の境界、表面の性状、硬さ、可動性、圧痛やえくぼ徴候(腫瘤両端皮膚を2指で軽く中央に寄せると観察できる)の有無などです。

また、両側の鎖骨上窩と腋窩を触診し、リンパ節の腫脹の有無を調べることも重要です。リンパ節を触知した場合は、個数とともに、それぞれのリンパ節の大きさ、硬さ、可動性などを調べます。

乳房腫瘤をきたす3大疾患は、乳癌、乳腺症、線維腺腫です。外来診察時の頻度は、乳腺専門外来か一般外来かにより大きく異なります。

3大疾患の好発年齢は、線維腺腫は20〜40歳代、乳腺症は30〜50歳代、乳癌は乳腺症よりさらに5〜10歳高いです。頻度は低いですが鑑別が必要な疾患としては、乳管内乳頭腫(血性乳頭分泌を伴う)、葉状腫瘍(急速増大する)、腺腫(乳癌との鑑別は難しい)、副乳、脂肪壊死、異物肉芽腫などがあげられます。

ただ、乳癌を鑑別するためには、視・触診では不十分です。以下のような検査を行う必要があります。
検査としては、超音波検査あるいはマンモグラフィーを行います。
超音波検査では、正常の乳腺は皮膚の下のエコー輝度の低い脂肪に囲まれたエコー輝度の高い均一な像として描出されます。一方、乳腺に腫瘍性病変があるとこの組織構成が崩されて、低エコーの像として描出されることが多くなります。

マンモグラフィーでは、描出された腫瘤陰影と石灰化像から、その腫瘤の良・悪性を診断していくことになります。乳癌の典型的な像としては、放射状陰影(spicule)を有する不整形の腫瘤陰影で、周辺の透明帯(halo)を伴わないか、伴ったとしても不均一なものです。また、形状不整の集蔟した微小石灰化像は、乳癌を疑う所見となります。

病歴情報や身体所見、超音波検査やマンモグラフィーの結果に基づき、腫瘍の存在が疑われたときには穿刺吸引細胞診へ進みます。診断は通常の細胞診と同様に細胞の異型度から、class ?(正常)から class ?(癌)の5段階で行われます。

「しこり」に気づいて受診した場合、43%の患者さんが、すでにしこりは2 cm以上であるそうです。胸を触る自己診断で見つかる乳癌の大きさは平均約2cmで、自然に気づく場合は3cm以上が多いとのことです。

このように、乳癌はしこりを触知するかどうかでなく、是非とも検診を定期的に受けることで早期発見を目指していただければ、と思われます。

また、上記の記事では、以下のようなことも記されていました。
乳癌以外だと、腟の出口や肛門の周りにイボができたり水ぶくれができたりしていないかチェックしてもらってもいいけど、ちょっと恥ずかしいかもですね。コンジローマのイボを彼に発見されたりすると、返って気まずかったりもしますし。性感染症のチェックは彼に頼らず事前にきちんとセルフチェックしておくのが大人のマナー。

このようなチェックも、しっかりと行っていただければ、と思われます。

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