テレビドラマや映画などを観て、何らかの影響を受ける人は少なくない。尊敬している監督の作品や大好きな俳優が出演している作品ならなおさらだろう。とは言え、時にその影響がほかの人から見れば不可解なカタチで現れることもある。今回中国の揚子晩報などで報じられたニュースは、テレビドラマに影響され、自ら手術をしてしまった男性の話だ。
50代の男性、呉さんは1年前に転倒事故を起こし、左足脛骨を骨折してしまった。呉さんは手術で足に鋼板を入れられたのだが、今年9月、医者からすでに脛骨は良くなっていると告げられ、鋼板を取り除く手術を受けることを勧められる。しかしそのとき、呉さんは医者の勧めにハッキリとは返答をしなかったそうだ。
それにはふたつの理由があった。ひとつは金銭面の問題。そして、もうひとつはテレビドラマの影響だ。少し前、呉さんはテレビドラマで傷を負った主人公が自ら手術をして生還したシーンを見ていた。その主人公に強く感化された呉さんは「自分でもできる」と思い込んでしまったのだという。
そして呉さんは、家族が家にいないスキを見計らい手術を決行した。手術用に包丁とドライバーを用意し、まず包丁をアルコールで消毒。包丁を足に当て、傷口を開いていった。しかし、包丁の刃が鋭利ではなかったらしく、手術は難航。また、麻酔をかけていなかったため、痛みは相当のものだったそうだ。
かなりの時間を要して何とか傷口を開くことができた呉さん。今度は問題の鋼板を取り除かなければならない。呉さんは歯を食いしばり、鋼板のネジにドライバーの先を当てて取り除こうとしたが、これまた難航。悪戦苦闘の末、呉さんは「手術が失敗した」と理解するに至った。しかし、もはや後戻りもできない。傷口を縫うこともできない呉さんの足からは、とめどなく血が流れていたという。
しばらくして血だらけになった呉さんを、帰宅した家族が発見。すぐに呉さんは病院に運ばれ、緊急手術を受けることになった。1時間かけて呉さんの足からは鋼板が取り除かれたものの、傷の悪化とともに感染症が見られ、今も病院で治療中とのことだ。
(テレビドラマの影響を受けて自ら手術を敢行、失敗して病院に運ばれる。)
膝下の下腿には、2つの骨がありますが、このうち内側にある大きい骨を脛骨といいます。上端で大腿骨との間に膝関節をつくり、上下の2か所で腓骨と関節し、下端で距骨との間に距腿関節をつくっています。脛骨の前縁は下腿の皮下にむこうずねとして触れます。
下腿は直達外力を受けやすく、またスキーなどによる介達外力による受傷も多く、四肢長管骨骨折のなかで脛骨骨幹部骨折は最も頻度が高いです。さらに、脛骨はほぼ全長が皮下にあるため開放骨折も多いです。
このように、直達外力がにより骨折することが多く、交通事故など強大な外力が加わり、開放骨折や多発外傷となることも稀ではありません。この場合、横骨折や粉砕骨折の形態をとることが多いです。また、スポーツ中や転倒などで足部が固定された状態で介達外力が働くと、螺旋骨折や斜骨折を生じることもあります。
脛骨骨折はJohner-Wruhs分類により分けられ、これは骨折が骨幹部に限局するものや、主たる骨折線が骨幹部にあるが骨端部にまで広がっているものを、骨折形態、外力の方向、受傷機転に基づいて総括的に分類したものです。
この3群に大きく分け、各群でさらに3型に細分化しています。1型は螺旋骨折であり、スキーによる介達外力により発生します。この際、腓骨骨折を合併するときは、脛骨より近位で生じます。2型は斜骨折であり、C群ではsegmental fractureとなります。3型は横骨折の形態をとります。この2型と3型は交通事故などで大きな直達外力が作用して発生し、腓骨骨折も同じレベルでみられます。
開放骨折では骨折の形態以上に軟部組織損傷の程度が治療方針と予後に大きく影響し、Gustiloの分類がよく用いられています。
前後、側面の2方向のX線撮影を行いますが、必要であれば両斜位も追加します。また、介達外力損傷では腓骨骨折の部位が脛骨骨折と異なることがあるので、下腿全長のX線を撮ります。
開放骨折では軟部組織損傷の程度をGustiloの分類により評価し、開放創からの細菌培養をしておくことも重要です。
神経損傷は比較的少ないですが、整復操作、外固定、牽引などにて二次的に発生することもあるので、初診時に知覚や足関節、足趾の自動運動を検査するようにします。多発外傷例では神経損傷のチェックは困難なことが多いので、末梢の循環状態だけは必ず調べておきます。
脛骨骨折の治療としては、以下のようなものがあります。
50代の男性、呉さんは1年前に転倒事故を起こし、左足脛骨を骨折してしまった。呉さんは手術で足に鋼板を入れられたのだが、今年9月、医者からすでに脛骨は良くなっていると告げられ、鋼板を取り除く手術を受けることを勧められる。しかしそのとき、呉さんは医者の勧めにハッキリとは返答をしなかったそうだ。
それにはふたつの理由があった。ひとつは金銭面の問題。そして、もうひとつはテレビドラマの影響だ。少し前、呉さんはテレビドラマで傷を負った主人公が自ら手術をして生還したシーンを見ていた。その主人公に強く感化された呉さんは「自分でもできる」と思い込んでしまったのだという。
そして呉さんは、家族が家にいないスキを見計らい手術を決行した。手術用に包丁とドライバーを用意し、まず包丁をアルコールで消毒。包丁を足に当て、傷口を開いていった。しかし、包丁の刃が鋭利ではなかったらしく、手術は難航。また、麻酔をかけていなかったため、痛みは相当のものだったそうだ。
かなりの時間を要して何とか傷口を開くことができた呉さん。今度は問題の鋼板を取り除かなければならない。呉さんは歯を食いしばり、鋼板のネジにドライバーの先を当てて取り除こうとしたが、これまた難航。悪戦苦闘の末、呉さんは「手術が失敗した」と理解するに至った。しかし、もはや後戻りもできない。傷口を縫うこともできない呉さんの足からは、とめどなく血が流れていたという。
しばらくして血だらけになった呉さんを、帰宅した家族が発見。すぐに呉さんは病院に運ばれ、緊急手術を受けることになった。1時間かけて呉さんの足からは鋼板が取り除かれたものの、傷の悪化とともに感染症が見られ、今も病院で治療中とのことだ。
(テレビドラマの影響を受けて自ら手術を敢行、失敗して病院に運ばれる。)
脛骨骨折とは
膝下の下腿には、2つの骨がありますが、このうち内側にある大きい骨を脛骨といいます。上端で大腿骨との間に膝関節をつくり、上下の2か所で腓骨と関節し、下端で距骨との間に距腿関節をつくっています。脛骨の前縁は下腿の皮下にむこうずねとして触れます。
下腿は直達外力を受けやすく、またスキーなどによる介達外力による受傷も多く、四肢長管骨骨折のなかで脛骨骨幹部骨折は最も頻度が高いです。さらに、脛骨はほぼ全長が皮下にあるため開放骨折も多いです。
このように、直達外力がにより骨折することが多く、交通事故など強大な外力が加わり、開放骨折や多発外傷となることも稀ではありません。この場合、横骨折や粉砕骨折の形態をとることが多いです。また、スポーツ中や転倒などで足部が固定された状態で介達外力が働くと、螺旋骨折や斜骨折を生じることもあります。
脛骨骨折はJohner-Wruhs分類により分けられ、これは骨折が骨幹部に限局するものや、主たる骨折線が骨幹部にあるが骨端部にまで広がっているものを、骨折形態、外力の方向、受傷機転に基づいて総括的に分類したものです。
A群:単純骨折
B群:蝶形の第3骨片を有する骨折
C群:粉砕骨折
この3群に大きく分け、各群でさらに3型に細分化しています。1型は螺旋骨折であり、スキーによる介達外力により発生します。この際、腓骨骨折を合併するときは、脛骨より近位で生じます。2型は斜骨折であり、C群ではsegmental fractureとなります。3型は横骨折の形態をとります。この2型と3型は交通事故などで大きな直達外力が作用して発生し、腓骨骨折も同じレベルでみられます。
開放骨折では骨折の形態以上に軟部組織損傷の程度が治療方針と予後に大きく影響し、Gustiloの分類がよく用いられています。
I型:開放創が1cm以下であり軟部組織損傷も最小このように分類されます。
II型:開放創が1cm以上10cm以下であり、軟部組織の挫滅も比較的軽度である。
III型:高度の汚染のある開放骨折である。
IIIa:骨折部を軟部組織にて被覆できるもの。
IIIb:被覆できないもの
IIIc:IIIbに血管損傷を合併し血行再建を必要とするものである。
脛骨骨折の診断
前後、側面の2方向のX線撮影を行いますが、必要であれば両斜位も追加します。また、介達外力損傷では腓骨骨折の部位が脛骨骨折と異なることがあるので、下腿全長のX線を撮ります。
開放骨折では軟部組織損傷の程度をGustiloの分類により評価し、開放創からの細菌培養をしておくことも重要です。
神経損傷は比較的少ないですが、整復操作、外固定、牽引などにて二次的に発生することもあるので、初診時に知覚や足関節、足趾の自動運動を検査するようにします。多発外傷例では神経損傷のチェックは困難なことが多いので、末梢の循環状態だけは必ず調べておきます。
脛骨骨折の治療
脛骨骨折の治療としては、以下のようなものがあります。
保存治療は転位のない骨折、転位があっても整復後に安定している骨折、腓骨骨折を合併していない螺旋骨折などが適応となります。
侵襲が少なく、感染の危険性がないことが利点ですが、長期の外固定が問題点であり、足関節や距骨下関節の拘縮が懸念されます。以前は徒手整復後に大腿から足関節までのギプス包帯による固定法が行われてきましたが、現在ではSarminentoに準じたcast-brace法が主流です。
ギプスシーネ固定を、転位があれば鋼線牽引にて整復し、腫脹が消失する1〜2週間後にPTB(patella tendon bearing)ギプス包帯を巻きます。その後3〜4週で着脱可能なPTB装具に変更します。当初は週1回のX線撮影を行い、短縮や再転位がみられれば観血的治療への変更を考慮します。
脛骨長が保持できないような粉砕骨折、同側大腿骨骨折を伴うfloating kneeの症例、徒手整復不能例、整復可能でも不安定な例、分節骨折などが手術的適応として考えられます。
上記の例では、プレート固定が行われていたようです。プレート固定は、術中にX線被曝の危険性がなく、解剖学的な整復が得られるなどの利点はありますが、広範な骨膜剥離による骨癒合率の低下や金属性疲労による折損などから、荷重歩行を慎重に行う必要があります。また、抜釘後の再骨折の可能性などから以前に比べて用いられなくなってきています。
最近では骨折部は展開せず、離れた近位、遠位の主骨片部分に小切開を加えプレートを挿入して行うminimally invasive plate osteosynthesis(MIPO)が行われています。
近位、遠位の主骨片のみを固定するbridge plate固定を原則としますが、骨折部に間隙を残したままにすると遷延癒合となることがあるので、骨折型により骨折部にスクリューで圧迫固定することもあります。
その他、プレート固定の手術意外に、髄内釘固定やEnder釘固定が行われることがあります。
上記のケースは、まさに常軌を逸した、としか言えないような行為ですが、やむにやまれぬ事情もあったようです。ですが、結局は入院や治療の期間が延びてしまっており、もう少し考えていただけたら、と思う次第です。
【関連記事】
肋骨骨折して入院していた−松田龍平さん
下顎骨骨折で手術していた−佐藤勇さん
侵襲が少なく、感染の危険性がないことが利点ですが、長期の外固定が問題点であり、足関節や距骨下関節の拘縮が懸念されます。以前は徒手整復後に大腿から足関節までのギプス包帯による固定法が行われてきましたが、現在ではSarminentoに準じたcast-brace法が主流です。
ギプスシーネ固定を、転位があれば鋼線牽引にて整復し、腫脹が消失する1〜2週間後にPTB(patella tendon bearing)ギプス包帯を巻きます。その後3〜4週で着脱可能なPTB装具に変更します。当初は週1回のX線撮影を行い、短縮や再転位がみられれば観血的治療への変更を考慮します。
脛骨長が保持できないような粉砕骨折、同側大腿骨骨折を伴うfloating kneeの症例、徒手整復不能例、整復可能でも不安定な例、分節骨折などが手術的適応として考えられます。
上記の例では、プレート固定が行われていたようです。プレート固定は、術中にX線被曝の危険性がなく、解剖学的な整復が得られるなどの利点はありますが、広範な骨膜剥離による骨癒合率の低下や金属性疲労による折損などから、荷重歩行を慎重に行う必要があります。また、抜釘後の再骨折の可能性などから以前に比べて用いられなくなってきています。
最近では骨折部は展開せず、離れた近位、遠位の主骨片部分に小切開を加えプレートを挿入して行うminimally invasive plate osteosynthesis(MIPO)が行われています。
近位、遠位の主骨片のみを固定するbridge plate固定を原則としますが、骨折部に間隙を残したままにすると遷延癒合となることがあるので、骨折型により骨折部にスクリューで圧迫固定することもあります。
その他、プレート固定の手術意外に、髄内釘固定やEnder釘固定が行われることがあります。
上記のケースは、まさに常軌を逸した、としか言えないような行為ですが、やむにやまれぬ事情もあったようです。ですが、結局は入院や治療の期間が延びてしまっており、もう少し考えていただけたら、と思う次第です。
【関連記事】
肋骨骨折して入院していた−松田龍平さん
下顎骨骨折で手術していた−佐藤勇さん