エレナ・デッセリッチちゃんに深刻な病気が発見されたのは、6歳の誕生日を間近に控えた2006年11月末のこと。言葉がうまく話せなくなり、まっすぐに歩けなくなったエレナちゃんを医者に見せたところ、びまん性グリオーマという悪性の脳腫瘍と診断された。米放送局ABCは、この病気を「米国で年間200〜300人程度の子どもが発症する最も毒性の強いガン」と説明している。エレナちゃんには残念ながら回復の見込みはなく、余命4か月半と宣告された。
しかし、わずかな可能性に賭け、エレナちゃんに病状を告げずに懸命の対処を試みた両親。それと同時に「残された時間を、エレナと妹のグレイシーにとって特別な瞬間にしよう」(英紙デイリー・メールより)と、夫婦は心に誓ったという。「腫瘍だけにとらわれず、家族と共にエレナがしたいことをすべてやれるようにしたかった」と話す父キースさん。病気が明らかになってすぐ訪れたクリスマスも盛大にパーティーを開くなど、4人の時間を大切に使い始めた。
医者に宣告された余命日数は超えたものの、病気は確実に進行。診断から約9か月が経った2007年8月、エレナちゃんは短い生涯を閉じた。最後は麻痺から話せなくなったというエレナちゃん。しかし、本と絵が好きだった彼女は、自らの運命を知っていたかのように、家族に内緒である行動を続けていた。残された家族がそれに気付いたのは、エレナちゃんが亡くなって数日後だったそうだ。
両親や妹のグレイシーちゃんは、家の中の至るところから、エレナちゃんが書いたメモを発見。ポストイット、プリンター用紙、切れ端など、さまざまな紙に書かれたそのメモは、両親や妹のほか、祖母やおばさんの飼い犬にまで宛てたメッセージの数々だった。その多くは、似顔絵と共に「パパもママも、グレイシーも大好き」とメッセージが書かれたもの。彼女は自分に時間が残されていないと気付いていたかのように、家のいろいろな場所にメモを隠していた。
今までに数百という多くのメモが、3つの箱が満たされるほど見つかったそうだが、2年経った今でも新たに見つかる時があるという。キースさんは「メモはブリーフケースからも見つかったし、本の間や化粧台の引き出し、クリスマスグッズの箱にもあった」(米ニュースサイトMSNBCより)と話し、まるで“宝物”探しのような状態。しかし、見つければ見つけるほど、隠されたメモが少なくなっていくため、「(新たな発見を)終わりにしたくない」との思いから、家族は1通だけは目を通さず、大事にその“宝物”を保管している。
エレナちゃんが一生懸命メモを隠し続けている間、両親はエレナちゃんの闘病日記を綴っていたのだが、10月27日にメモのメッセージも一緒に掲載された本「notes left behind」が米国で出版された。本の収益金は、エレナちゃんを追悼して設立された慈善団体にそのまま寄付されるという。決して大人とは言えない年齢で人生の幕を下ろしたにもかかわらず、亡くなって2年が経った今も両親や妹にたっぷりの愛情を注ぎ続けるエレナちゃん。まだまだ、家に多くの“宝物”が埋もれていることを願いたい。
(家中から見つかる娘のメモ、2年前に亡くなった少女が隠した家族への想い。)
脳腫瘍とは頭蓋内に発生する新生物の総称であり、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に大別されます。
脳実質由来の神経膠腫、脳を包む髄膜から発生する髄膜腫、脳神経鞘から発生する神経鞘腫、脳下垂体前葉から発生する下垂体腺腫で原発性脳腫瘍の80%を占めます。そのほかに頭蓋咽頭腫、胚腫・胚細胞性腫瘍などは本邦に比較的多いです。近年では、悪性リンパ腫も増加傾向にあります。
また、小児脳腫瘍とは、15歳未満に発症する脳腫瘍を指します。頻度は人口10万人につき2人弱であり、これは成人を含めた全脳腫瘍の約15%に相当します。脳幹や小脳などに発生するテント下腫瘍が約6割を占め、神経膠腫の占める比率が成人の脳腫瘍に比して高いです。また、頭蓋正中に発生する腫瘍が多いため、脳室系を圧迫し水頭症を来すことが多いといわれています。
小児脳腫瘍の病理組織分類別の頻度は
の順になっています。上位を占めるこれらの腫瘍のうち頭蓋咽頭腫以外は、すべて悪性腫瘍であり、頭蓋咽頭腫は先天性腫瘍です。成人と比較した場合に、小児では悪性腫瘍が多いのが特徴です。
悪性腫瘍のうち髄芽腫、多形膠芽腫は特に悪性度が高いです。髄芽腫、胚細胞腫は放射線感受性が高い悪性腫瘍です。
ちなみに、「1歳未満に発症が認められる脳腫瘍」を先天性脳腫瘍と定義しています。先天性脳腫瘍であると診断される症例をA:確実、B:ほぼ確実、C:推定の3群に分類するとAでは奇形腫(teratoma)が最も多く(50%)、ABC全体では星細胞腫が最も多い(25%)といわれています。
神経膠腫(glioma)とは、外胚葉の神経上皮由来のグリア細胞を発生母地とする脳腫瘍を指します。
組織学的には星状細胞腫、膠芽腫がおのおの30%でそのほか悪性星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫が続きます。小児期では星状細胞腫が、成人では膠芽腫が最多です。性差は4:3でやや男性に多い。上衣腫以外は大脳半球に好発します。
エレナちゃんのケースでは、びまん性内在性橋膠腫(diffuse intrinsic pontine glioma;DIPG)だったそうです。脳幹部内部に発生する予後不良の小児腫瘍であり、3歳から7歳くらいの小児に多いです。組織学的には、星細胞系腫瘍(びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、膠芽腫)が多いようです。
脳幹とは、間脳を含む場合もありますが、通常は延髄、橋、中脳を合わせてこう呼びます。脳幹には、脊髄と前脳との間を連絡する多くの線維路に加え大部分の脳神経核および脳神経根があります。
そのため、この部位が腫瘍などで傷害されると、部位と大きさによって、各部位に特有な脳神経麻痺や種々の程度の運動麻痺、感覚麻痺、運動失調、意識障害などがみられます。脳幹部の広範な傷害では、高度の意識障害+四肢麻痺をきたすことが多いです。呼吸の異常も伴うこともあります。
上記のように、まずは初期症状はふらついて歩くのが不安定になること(失調性歩行)が多いようです。さらに、四肢の運動麻痺ばかりでなく顔面神経麻痺(顔がゆがむ)や、眼球運動障害(眼の位置・動きがおかしい)などの脳神経症状もでてくることもあります。
脳腫瘍の治療としては、以下のようなものがあります。
しかし、わずかな可能性に賭け、エレナちゃんに病状を告げずに懸命の対処を試みた両親。それと同時に「残された時間を、エレナと妹のグレイシーにとって特別な瞬間にしよう」(英紙デイリー・メールより)と、夫婦は心に誓ったという。「腫瘍だけにとらわれず、家族と共にエレナがしたいことをすべてやれるようにしたかった」と話す父キースさん。病気が明らかになってすぐ訪れたクリスマスも盛大にパーティーを開くなど、4人の時間を大切に使い始めた。
医者に宣告された余命日数は超えたものの、病気は確実に進行。診断から約9か月が経った2007年8月、エレナちゃんは短い生涯を閉じた。最後は麻痺から話せなくなったというエレナちゃん。しかし、本と絵が好きだった彼女は、自らの運命を知っていたかのように、家族に内緒である行動を続けていた。残された家族がそれに気付いたのは、エレナちゃんが亡くなって数日後だったそうだ。
両親や妹のグレイシーちゃんは、家の中の至るところから、エレナちゃんが書いたメモを発見。ポストイット、プリンター用紙、切れ端など、さまざまな紙に書かれたそのメモは、両親や妹のほか、祖母やおばさんの飼い犬にまで宛てたメッセージの数々だった。その多くは、似顔絵と共に「パパもママも、グレイシーも大好き」とメッセージが書かれたもの。彼女は自分に時間が残されていないと気付いていたかのように、家のいろいろな場所にメモを隠していた。
今までに数百という多くのメモが、3つの箱が満たされるほど見つかったそうだが、2年経った今でも新たに見つかる時があるという。キースさんは「メモはブリーフケースからも見つかったし、本の間や化粧台の引き出し、クリスマスグッズの箱にもあった」(米ニュースサイトMSNBCより)と話し、まるで“宝物”探しのような状態。しかし、見つければ見つけるほど、隠されたメモが少なくなっていくため、「(新たな発見を)終わりにしたくない」との思いから、家族は1通だけは目を通さず、大事にその“宝物”を保管している。
エレナちゃんが一生懸命メモを隠し続けている間、両親はエレナちゃんの闘病日記を綴っていたのだが、10月27日にメモのメッセージも一緒に掲載された本「notes left behind」が米国で出版された。本の収益金は、エレナちゃんを追悼して設立された慈善団体にそのまま寄付されるという。決して大人とは言えない年齢で人生の幕を下ろしたにもかかわらず、亡くなって2年が経った今も両親や妹にたっぷりの愛情を注ぎ続けるエレナちゃん。まだまだ、家に多くの“宝物”が埋もれていることを願いたい。
(家中から見つかる娘のメモ、2年前に亡くなった少女が隠した家族への想い。)
脳腫瘍とは
脳腫瘍とは頭蓋内に発生する新生物の総称であり、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に大別されます。
脳実質由来の神経膠腫、脳を包む髄膜から発生する髄膜腫、脳神経鞘から発生する神経鞘腫、脳下垂体前葉から発生する下垂体腺腫で原発性脳腫瘍の80%を占めます。そのほかに頭蓋咽頭腫、胚腫・胚細胞性腫瘍などは本邦に比較的多いです。近年では、悪性リンパ腫も増加傾向にあります。
また、小児脳腫瘍とは、15歳未満に発症する脳腫瘍を指します。頻度は人口10万人につき2人弱であり、これは成人を含めた全脳腫瘍の約15%に相当します。脳幹や小脳などに発生するテント下腫瘍が約6割を占め、神経膠腫の占める比率が成人の脳腫瘍に比して高いです。また、頭蓋正中に発生する腫瘍が多いため、脳室系を圧迫し水頭症を来すことが多いといわれています。
小児脳腫瘍の病理組織分類別の頻度は
1)星細胞腫;astrocytoma(全小児脳腫瘍の20.0%)
2)髄芽腫;medulloblastoma(17.0%)
3)頭蓋咽頭腫;craniopharyngioma(11.4%)
4)胚細胞腫;germinoma(7.5%)
5)上衣腫;ependymoma(6.0%)
6)多形膠芽腫;glioblastoma multiforme(4.5%)
の順になっています。上位を占めるこれらの腫瘍のうち頭蓋咽頭腫以外は、すべて悪性腫瘍であり、頭蓋咽頭腫は先天性腫瘍です。成人と比較した場合に、小児では悪性腫瘍が多いのが特徴です。
悪性腫瘍のうち髄芽腫、多形膠芽腫は特に悪性度が高いです。髄芽腫、胚細胞腫は放射線感受性が高い悪性腫瘍です。
ちなみに、「1歳未満に発症が認められる脳腫瘍」を先天性脳腫瘍と定義しています。先天性脳腫瘍であると診断される症例をA:確実、B:ほぼ確実、C:推定の3群に分類するとAでは奇形腫(teratoma)が最も多く(50%)、ABC全体では星細胞腫が最も多い(25%)といわれています。
神経膠腫とは
神経膠腫(glioma)とは、外胚葉の神経上皮由来のグリア細胞を発生母地とする脳腫瘍を指します。
組織学的には星状細胞腫、膠芽腫がおのおの30%でそのほか悪性星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫が続きます。小児期では星状細胞腫が、成人では膠芽腫が最多です。性差は4:3でやや男性に多い。上衣腫以外は大脳半球に好発します。
エレナちゃんのケースでは、びまん性内在性橋膠腫(diffuse intrinsic pontine glioma;DIPG)だったそうです。脳幹部内部に発生する予後不良の小児腫瘍であり、3歳から7歳くらいの小児に多いです。組織学的には、星細胞系腫瘍(びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、膠芽腫)が多いようです。
脳幹とは、間脳を含む場合もありますが、通常は延髄、橋、中脳を合わせてこう呼びます。脳幹には、脊髄と前脳との間を連絡する多くの線維路に加え大部分の脳神経核および脳神経根があります。
そのため、この部位が腫瘍などで傷害されると、部位と大きさによって、各部位に特有な脳神経麻痺や種々の程度の運動麻痺、感覚麻痺、運動失調、意識障害などがみられます。脳幹部の広範な傷害では、高度の意識障害+四肢麻痺をきたすことが多いです。呼吸の異常も伴うこともあります。
上記のように、まずは初期症状はふらついて歩くのが不安定になること(失調性歩行)が多いようです。さらに、四肢の運動麻痺ばかりでなく顔面神経麻痺(顔がゆがむ)や、眼球運動障害(眼の位置・動きがおかしい)などの脳神経症状もでてくることもあります。
脳腫瘍の治療
脳腫瘍の治療としては、以下のようなものがあります。
脳腫瘍は種類が多彩であり、さらには同じ組織型でも発生部位やサイズによって治療方針・予後が大きく異なる場合があります。
脳腫瘍の一般的な治療としては、手術によって可及的全摘出を目指しますが、個々の腫瘍に応じて手術、放射線治療(ガンマナイフなどの定位放射線治療を含む)、化学療法の中から最も適切な治療法を選びます。
上記のような脳幹部の腫瘍は、手術は不可能(重大な機能障害をきたすと考えられる)と言わざるとえないでしょう。そこで、場所によっては放射線治療が行われることもあります。
化学療法としては、塩酸ニムスチン(ニドラン)、カルボプラチン(パラプラチン、カルボメルク)、硫酸ビンクリスチン(オンコビン)やエトポシド(ベプシド、ラステット)やテモゾロマイド(テモダール)などが使用される場合もあります。
それ以外は、高度な脳浮腫や急性水頭症による頭蓋内圧亢進などの対処療法を行っていくことになるでしょう。これには、グリセオール(濃グリセリン)やD-マンニトールなどの高張溶液の点滴静注を行います。また、さらに併発するおそれのあるけいれん発作予防のために抗けいれん薬を投与します。
一般的には部分発作にはテグレトール、エクセグランなどの使用を、全般発作にはデパケンなどを用いることが多いです。注射薬ではセルシンなどの静注が行われます。
胸が締め付けられるようなエピソードです。娘さんは、死期を悟っていたのか、それとも単なる遊びでメッセージを残していたのか分かりませんが、いつまでもお子さんの存在を感じられることは、両親にとって幾ばくかの救いになっていて欲しいと思いました。
【関連記事】
15歳で脳腫瘍を発症した青年、母子の闘病−錦戸亮さんが演じる
新生児の脳腫瘍から奇形腫?−手術により摘出後、順調に回復
脳腫瘍の一般的な治療としては、手術によって可及的全摘出を目指しますが、個々の腫瘍に応じて手術、放射線治療(ガンマナイフなどの定位放射線治療を含む)、化学療法の中から最も適切な治療法を選びます。
上記のような脳幹部の腫瘍は、手術は不可能(重大な機能障害をきたすと考えられる)と言わざるとえないでしょう。そこで、場所によっては放射線治療が行われることもあります。
化学療法としては、塩酸ニムスチン(ニドラン)、カルボプラチン(パラプラチン、カルボメルク)、硫酸ビンクリスチン(オンコビン)やエトポシド(ベプシド、ラステット)やテモゾロマイド(テモダール)などが使用される場合もあります。
それ以外は、高度な脳浮腫や急性水頭症による頭蓋内圧亢進などの対処療法を行っていくことになるでしょう。これには、グリセオール(濃グリセリン)やD-マンニトールなどの高張溶液の点滴静注を行います。また、さらに併発するおそれのあるけいれん発作予防のために抗けいれん薬を投与します。
一般的には部分発作にはテグレトール、エクセグランなどの使用を、全般発作にはデパケンなどを用いることが多いです。注射薬ではセルシンなどの静注が行われます。
胸が締め付けられるようなエピソードです。娘さんは、死期を悟っていたのか、それとも単なる遊びでメッセージを残していたのか分かりませんが、いつまでもお子さんの存在を感じられることは、両親にとって幾ばくかの救いになっていて欲しいと思いました。
【関連記事】
15歳で脳腫瘍を発症した青年、母子の闘病−錦戸亮さんが演じる
新生児の脳腫瘍から奇形腫?−手術により摘出後、順調に回復