読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
5年ほど前から肩と背中に湿疹が出て、「ダリエー病」と診断されました。たいしたかゆみはありませんが、処方薬があまり効きません。今後どうしたらよいのですか。(47歳男性)

この相談に対して、北里大病院皮膚科診療講師である佐藤直哉先生は以下のようにお答えになっています。
ダリエー病は、くび、わきの下、胸、背中、またなどに、かさぶたの付いた褐色の発疹がたくさんできる遺伝病です。夏場に悪化する傾向があり、特にわきとまたでは発疹がジメジメし、細菌が感染することもしばしばです。時には、手足、つめ、口の粘膜にも発疹が生じます。

多くは10歳代に発症しますが、質問者のように40歳以降で初めて発症することも珍しくありません。全体的に症状は長く続き、完全に治すのは難しいのですが、命にかかわることはない病気です。

原因は、特定の遺伝子の変異です。この遺伝子は、皮膚の最も表面にある角質が作られる際に重要な役割を担っており、ダリエー病になると角質が正常に作られなくなって発疹などの症状が表れます。

ダリエー病とは


ダリエー病(Darier's disease)とは、体幹の播種性角化性丘疹を基本とし、増殖性変化や水疱形成など多彩な症状を示すことがある、常染色体優性遺伝性疾患です。組織学的に異角化を示します。稀な疾患であり、5万〜10万人に1人の発生頻度です。

12番染色体長腕12q23-24.1に局在する、ATP2A2遺伝子に変異を生じているといわれています。この遺伝子がコードする蛋白は、細胞内カルシウムポンプに関係していおり、細胞内カルシウム濃度の異常によって、細胞間結合と表皮細胞分化に障害が生じ病変が起こると考えられています。

ダリエー病の診断


ダリエー病は、10〜20歳代で発症し、胸背部、顔面、頭部、鼠径部などの脂漏部位を中心に、硬い丘疹が生じます。融合して疣状に隆起し、また水疱を形成することもあります。

二次感染が生じると湿潤し悪臭を放ちます(夏期に悪化)。口腔粘膜に中央が陥凹した白色丘疹がみられ、単純ヘルペスが感染してKaposi水痘様発疹症を合併することも多いです。線状または帯状に皮疹が出現するモザイク例も報告されています。

診断確定のためには皮膚生検が必要となり、表皮基底層直上を主体に裂隙を形成し、棘融解細胞がみられます。表皮上層には円形体、角層には顆粒などの異角化細胞がみられ、異角化は毛嚢や汗管に好発します。

ダリエー病の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
治療では、正常な角質が作られるのを助けるビタミンAの内服薬と、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の塗り薬を併用するのが一般的です。効果が乏しい場合には、ビタミンAの働きを強めた「エトレチナート」を内服することもあります。

ただし、エトレチナートを服用すると唇が荒れるなどの副作用があるため、服用する場合には、専門の医師の指導を十分に受けてください。

日常生活では、高温多湿の環境や過度な摩擦を避けるほか、日焼け止めなどで紫外線を防止し、肌を清潔に保って細菌感染を予防することで、症状を悪化させる要因をなるべく取り去りましょう。

治療は、重症度によって異なります。軽症例ではサリチル酸ワセリンや尿素軟膏などの角質溶解剤の外用を行います。

重症例では、エトレチナート(チガソン)の経口投与などを行います。0.2〜1.0mg/kg/日で良好な成績が得られることが多いです。内服開始後比較的早い時期に、びらんや皮膚の発赤が著明になることがあるため、初期量は0.5mg/kg/日以下にとどめます。

ステロイド薬の外用で皮疹が増悪することがあるため、炎症が強いとき以外は使用を避けることもあります。

また、日光で悪化することがあるので注意し、夏季には二次感染で悪臭を発しやすいので、頭部や腋窩、鼠径部などを特に清潔を保ちます。そのために殺菌性石鹸を用いることもよいですが、ときには抗生薬の内服で感染を抑えることが必要です。

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