読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、日本医科大病院血液内科教授である檀和夫先生は以下のようにお答えになっています。
貧血とは、末梢血液中の赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)濃度あるいはヘマトクリット(Ht)値が低下した状態を指します。一般には、成人男性でHbが 14g/dl 未満、成人女性で 12g/dl 未満、高齢者では男女ともに 11g/dl 未満を貧血とします。
貧血は、赤血球の産生低下、破壊の亢進、出血による喪失、そして体内での分布異常によって発生します。Hb濃度の低下に基づく組織の低酸素症状は共通していますが、基礎疾患にそれぞれ特有な症候があり、それらにも注意を払って鑑別診断を進めていきます。
貧血の診断では、末梢血液検査が最も重要であり、次のようにスクリーニングを行っていきます。まず、血球検査(血算)にてRBC、Hb濃度、Ht、網赤血球数(Ret)、白血球数(WBC)、血小板数を測定します。
さらに、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)を次式で求め、貧血を分類します。
また、血球だけでなく、各血球の形態を観察し、形態学的変化の有無を調べます。各種貧血や骨髄異形成症候群(MDS)では、それぞれに特徴的な所見があります。また白血病では、特徴的な白血病細胞が出現してきます。
血液生化学検査では、Fe、総鉄結合能(TIBC)もしくは不飽和鉄結合能(UIBC)、フェリチン、ビタミンB12、葉酸、間接ビリルビン、LDH、ハプトグロビン(Hp)などを検査し、貧血患者を鑑別診断します。
ほかには、尿検査で腎疾患による貧血を鑑別し、便検査では、便の潜血反応を調べます。
上記のような式で、小球性貧血、正球性貧血、大球性貧血などが判明した場合、以下のような疾患が疑われます。
小球性貧血の代表は鉄欠乏性貧血であり、貧血症のなかでは最も頻度が高いです。慢性疾患に伴う二次性貧血も小球性貧血に属し、成人の貧血のなかで頻度は高い方です。鉄芽球性貧血、サラセミア、先天性無トランスフェリン血症などが頻度は低いがこの群に含まれます。
正球性貧血では、溶血性貧血、出血後の貧血、腎性貧血など多くの疾患を含みます。再生不良性貧血、骨髄異形成症候群なども含まれます。
大球性貧血では、大球性貧血は巨赤芽球性貧血と非巨赤芽球性貧血とに大別されます。前者はビタミンB12や葉酸欠乏に基づき、後者は肝疾患、アルコール中毒、甲状腺機能低下症などに随伴する貧血であり、頻度はこちらのほうが高いです。
網赤血球が相対的に増加する急性出血後や溶血性貧血でもみられます。一部の再生不良性貧血や骨髄異形成症候群でも、大球性貧血を呈することがあります。
正球性貧血の診断アプローチに必要な検査としては、網赤血球数、赤血球形態、骨髄像、クームス試験などがある。正球性貧血は種々の疾患によってもたらされるので、順序立てた診断のための検査計画をたてる必要があります。
網赤血球数が正常ないし低下している場合は、骨髄穿刺などを行い、白血病や再生不良性貧血、骨髄線維症などを診断します。
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赤芽球癆と診断された47歳女性
勤務先の健康診断で、「正球性正色素性貧血の疑い」と診断されました。どのような貧血なのでしょうか。(33歳女性)
この相談に対して、日本医科大病院血液内科教授である檀和夫先生は以下のようにお答えになっています。
貧血とは、体内の赤血球の量が減少している病気の総称で、その中には多くの病気が含まれています。
診断には血液検査が必要で、特殊な装置により、血液中の赤血球の数や大きさ、その中に含まれている赤い色素のヘモグロビン量などを調べます。
この検査の数値により、すべての貧血症は、赤血球が小さく色素の量が少ない「小球性低色素性貧血」、赤血球の大きさに異常はない「正球性正色素性貧血」、赤血球が大きい「大球性貧血」の三つに分けられます。
貧血とは、末梢血液中の赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)濃度あるいはヘマトクリット(Ht)値が低下した状態を指します。一般には、成人男性でHbが 14g/dl 未満、成人女性で 12g/dl 未満、高齢者では男女ともに 11g/dl 未満を貧血とします。
貧血は、赤血球の産生低下、破壊の亢進、出血による喪失、そして体内での分布異常によって発生します。Hb濃度の低下に基づく組織の低酸素症状は共通していますが、基礎疾患にそれぞれ特有な症候があり、それらにも注意を払って鑑別診断を進めていきます。
貧血の診断では、末梢血液検査が最も重要であり、次のようにスクリーニングを行っていきます。まず、血球検査(血算)にてRBC、Hb濃度、Ht、網赤血球数(Ret)、白血球数(WBC)、血小板数を測定します。
さらに、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)を次式で求め、貧血を分類します。
MCV(fl) = Ht(%)/RBC(106/μl) × 10
MCH(pg) = Hb(g/dl)/RBC(106/μl) × 10
MCHC(%) = Hb(g/dl)/Ht(%) × 100
また、血球だけでなく、各血球の形態を観察し、形態学的変化の有無を調べます。各種貧血や骨髄異形成症候群(MDS)では、それぞれに特徴的な所見があります。また白血病では、特徴的な白血病細胞が出現してきます。
血液生化学検査では、Fe、総鉄結合能(TIBC)もしくは不飽和鉄結合能(UIBC)、フェリチン、ビタミンB12、葉酸、間接ビリルビン、LDH、ハプトグロビン(Hp)などを検査し、貧血患者を鑑別診断します。
ほかには、尿検査で腎疾患による貧血を鑑別し、便検査では、便の潜血反応を調べます。
上記のような式で、小球性貧血、正球性貧血、大球性貧血などが判明した場合、以下のような疾患が疑われます。
ご質問の正球性正色素性貧血には、「溶血性貧血」や「再生不良性貧血」などの病気が含まれます。
溶血性貧血は、約4か月ある赤血球の寿命が異常に短くなって壊れて起きます。それによってできる「ビリルビン」の数値などが高いと、この貧血である可能性が高くなります。
また、再生不良性貧血の場合は、赤血球のほかに白血球や血小板の数が減少します。何らかの原因で、骨髄で血液が作られなくなるために起こります。
さらに、関節リウマチや肝臓病など、ほかの病気が原因で起こる「二次性貧血」という場合もあります。
正球性正色素性貧血は、このように様々な血液の病気やほかの病気が潜んでいる可能性があります。
これらの病気は、食事だけで治せるものではありません。血液内科を受診してどのタイプの貧血なのか診断してもらい、それぞれの病気に対する適切な治療をすることをお勧めします。
小球性貧血の代表は鉄欠乏性貧血であり、貧血症のなかでは最も頻度が高いです。慢性疾患に伴う二次性貧血も小球性貧血に属し、成人の貧血のなかで頻度は高い方です。鉄芽球性貧血、サラセミア、先天性無トランスフェリン血症などが頻度は低いがこの群に含まれます。
正球性貧血では、溶血性貧血、出血後の貧血、腎性貧血など多くの疾患を含みます。再生不良性貧血、骨髄異形成症候群なども含まれます。
大球性貧血では、大球性貧血は巨赤芽球性貧血と非巨赤芽球性貧血とに大別されます。前者はビタミンB12や葉酸欠乏に基づき、後者は肝疾患、アルコール中毒、甲状腺機能低下症などに随伴する貧血であり、頻度はこちらのほうが高いです。
網赤血球が相対的に増加する急性出血後や溶血性貧血でもみられます。一部の再生不良性貧血や骨髄異形成症候群でも、大球性貧血を呈することがあります。
正球性貧血の診断アプローチに必要な検査としては、網赤血球数、赤血球形態、骨髄像、クームス試験などがある。正球性貧血は種々の疾患によってもたらされるので、順序立てた診断のための検査計画をたてる必要があります。
網赤血球数が正常ないし低下している場合は、骨髄穿刺などを行い、白血病や再生不良性貧血、骨髄線維症などを診断します。
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