読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
3年ぐらい前、あまりに頭痛が続くため、頭痛外来に行ったところ、「ストレートネック」と言われました。治療する必要があるのでしょうか。(35歳女性)

この相談に対して、杏林大病院整形外科教授の里見和彦先生は以下のようにお答えになっています。
首の骨(頸椎)を横からエックス線画像で見ると、通常は前方に出っ張る形に湾曲しています。しかし、頸椎が真っすぐ(ストレートネック)か、逆に後方に湾曲していると、これまでは、通常の姿ではないとされていました。

しかし、健康な成人のエックス線画像を測定した調査では、40歳未満の女性ではストレートネックか、後方への湾曲が30%を占め、特に20歳代女性では46%がストレートネックでした。

従って、ストレートネックは異常なものではありません。最近の若い人は全身の運動量が少なく、頸椎を支える筋力が弱ってきたためだと思われます。

かなりの高齢者では首の動脈の血行不全で頭痛が起きることがありますが、頻度は少なく、頸椎の形状と頭痛の間には関連はほとんどないと考えられています。頭痛が続くようなら、頭痛の専門医で別の原因を探すべきでしょう。

首に痛みがなければ、ストレートネックは治療の必要はありません。ただし、頸椎への負担は大きいので、適度な運動やストレッチで首に筋肉をつけ、将来的に頸椎が加齢で変形しないよう、予防することは大切です。そのための運動は水泳が最もお勧めです。

緊張型頭痛は、緊張しやすい気質であったり、同じ姿勢をとり続けた後などに発生しやすいです。また、直線状頸椎(straight neck)など頭頸部筋群が緊張しやすい体形であると、生じやすいともいわれています。また、生活環境の変化、体格変化などから小児でも少なくないといわれています。

頭痛とは


頭痛は、大きく分けて一次性頭痛(原発性頭痛)、二次性頭痛(続発性頭痛)、神経痛・顔面痛などと3つに分けられます。

一次性頭痛は片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に代表され、いわゆる慢性の頭痛といわれるものです。それぞれの有病率は片頭痛8.4%、(20代女性に限ると約20%)、緊張型頭痛22.3%、群発頭痛0.07−0.09%と報告されており、頻度の高い疾患であるといえます。

二次性頭痛(続発性頭痛)は、脳、血管、鼻、眼、関節、歯などの器質性疾患に起因する頭痛です。原因は多く、生命の危険も存在するところから、特に注意深い診察が必要とされます。

一次性頭痛の代表的なものの1つが片頭痛です。片頭痛とは、拍動性頭痛(ズキンズキンと脈打つような痛み)を主体として、これにさまざまな随伴症状を伴う発作性頭痛です。こうした痛みが月に1〜2回、多い人では週に1〜2回発作性に起き、数時間から3日間ほど続きます。前兆を伴うものと伴わないものがあります。

片頭痛の特徴としては、「若くして発症し、女性に多く、主に片側性(両側性もありうる)に繰り返す拍動性の頭痛」です。悪心・嘔吐といった随伴症状を伴いやすく、体動、光、音で痛みが増強します。発作間欠期には症状は示しません。

約3割に視覚異常や麻痺や感覚障害などの前兆を伴う症例(前兆を伴う偏頭痛)があり、しばしば家族歴を有します。中でも、代表的前徴は視野の中心付近から始まるキラキラ光る境界をもつ暗点(閃輝暗点)です。前徴は5〜10分にわたって徐々に進行し、60分以内に治まり、引き続いて頭痛が出現します。

前兆を伴わない片頭痛は、最も多いタイプ(50〜80%)で、明らかな前駆症状を伴わず発現します。頭痛が4〜72時間持続します。日常の動作で増悪することがあり、光過敏、音過敏を認めることがあります。

誘因として空腹や寝不足、寝すぎ、アルコール、月経周期、経口避妊薬、運動、入浴、外出(騒音、暑さ、乾燥、日光での誘発)、匂い、ストレスなどが挙げられます。

こうした誘因をしっかりと把握することで、頭痛がおこることを回避することができるかもしれません。その意味で、上記のように記録を残しておくことは重要です。

ちなみに、国際頭痛学会による診断基準では「4時間以上持続する頭痛発作が過去に5回以上あったこと」を条件としています。具体的な症候上の診断基準としては、「1)片側性、拍動痛、日常生活に支障がある、体動により頭痛が増悪する、の4項目のうち2項目を満たし、2)悪心あるいは嘔吐、光・音過敏、のうち1項目を満たすもの」とされています。

緊張型頭痛とは、ストレス頭痛ともいわれ、精神的あるいは身体的ストレスによって起こる頭痛と考えられています。持続的な頭痛で、徐々に始まり、1日中あるいは毎日続いて起こる頭痛です。頭部全体を締めつけられるような、頭全体が重く圧迫されるような不快な頭痛で、常々頭痛にとりつかれているように感じます。一般には後頭部に強く、頭部、後頸部の筋の持続的な収縮を伴い、長時間続くことが多いです。

緊張型頭痛によく伴う症状としては、目の疲れ、耳鳴り、めまい、肩こり、疲れやすさなどがあります。片頭痛は体を動かすと頭痛がひどくなるのに対し、緊張型頭痛は体を動かしたほうがかえって気がまぎれて頭痛を忘れることがあるといった特徴があります。

そして、もう一つ群発頭痛と呼ばれるものがあります。1,000人に1人と比較的まれな頭痛ですが、20〜40代男性に好発する短期持続性の一側頭痛が眼窩部、眼窩上部または側頭部にみられ、頭痛と同側に流涙・鼻漏などの自律神経症状を伴うのが特徴です。

発作は数週−数か月間群発し、群発期間は年に数回から数年に1回のこともあります。就寝中に多く、飲酒により誘発されます。片頭痛と異なり、発作中は激しい頭痛にもかかわらず不穏と興奮を呈し、多くの患者は横になることができず歩き回るような状態になります。

また、これら3つのうち、2つをあわせ持つ「複合型頭痛」があります。中でも最近の研究で近年急増していると考えられているのが、片頭痛と緊張型頭痛をあわせ持つ「片頭痛および緊張型頭痛」です。

頭痛の治療


頭痛の治療としては、以下のようなものがあります。
緊張型頭痛の治療としては、NSAIDsを中心とした治療が行われますが、慢性の使用が問題となる場合もあります。予防的投与としては抗うつ薬である塩酸アミトリプチリン(トリプタノール)の併用を行うことがあります。

ほかにも抗不安薬、筋弛緩薬が用いられていることもあり、エチゾラム(デパス)は保険適用となっています。また、肩こりを伴う症例など頭痛体操、ストレッチ、低い枕などの生活指導も有効である場合があります。

片頭痛の軽症例にはNSAIDsまたはエルゴタミン製剤に適宜制吐薬を併用します。トリプタン系薬物とは、セロトニンという1Bと1D受容体に選択的に作用して血管の拡張と炎症を抑える薬です。いずれも発作初期の服用で有効です。

エルゴタミン製剤については有効性も確認されていますが、ほかの内服薬に比し吐き気の副作用が多いためナウゼリン(胃腸機能調整薬)との併用が有用であるといわれています。吐き気の強い場合はNSAIDsの坐薬が使われることもあります。

中等から重症なものには、初めからトリプタン系薬剤を用います。ある程度頭痛が強くなってからでも効果がありますが、1錠当たりの薬価が高いというデメリットがあります。また、前兆期には使用できず、冠動脈疾患などを有する患者さんでは使用できません。

発作頻度が高いときや、発作が重度のときが多い場合には、予防治療を併用することもあります。ただ、すぐに効果が発現しない場合もあるので、有効性は少なくとも2ヶ月の投与をする必要があります。Ca拮抗薬(テラナス)やβ遮断薬(インデラル)、抗てんかん薬(デパケン)、抗うつ薬(トリプタノール)などが用いられます。

片頭痛の治療薬であるトリプタン製剤は、注射薬や錠剤、点鼻薬があり、医師の処方薬で、鎮痛薬が効かない頭痛にも効果があるといわれています。

最も手軽で、広く使われているのは錠剤です。ただ、効き始めるまでに30分ほどかかるため、重症の患者では、飲むタイミングが遅れると効かないことも多いです。吐き気がひどいと、飲んだ錠剤を吐くこともあります。

そんな時に効果的なのが注射薬です。注射後、5〜10分で効き始めます。ですが、片頭痛は体を動かすと悪化するため、痛みがひどい時は、注射のために医療機関に行くのは難しいです。そこで、自宅で使えるよう、トリプタンの一つ「スマトリプタン」(商品名イミグラン)の自己注射薬も発売されています。

まずはしっかりと頭痛の原因を探り、その上で治療を行うことが望まれます。

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