読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、ちば県民保健予防財団総合健診センター診療部長の橋本秀行先生は以下のようにお答えになっています。
乳頭分泌とは、非授乳期に乳頭から乳汁様、漿液性、膿性あるいは血性の分泌物を排出することを指します。漿液性の場合は乳腺症や乳腺炎、膿性の場合は化膿性乳腺炎を考えます。
一方で、血性の場合は乳管内乳頭腫、癌などの腫瘍性病変が乳管内に存在する可能性が高いので注意が必要です。細胞診、分泌物中の癌胎児性抗原(CEA)濃度の測定や乳管造影、乳管内視鏡検査を行うことによって、乳管内に潜伏する病変を診断します。
乳癌の診断は、以下のように行います。
一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、視触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。早期がんの発見には、マンモグラフィ検診が有効です。乳癌の死亡率を下げるには、集団検診の受診率を上げることが不可欠とされています。
しこりの訴えがある場合は、その部位を念頭において、まず問診を行います。乳房腫瘤に気づくきっかけ、疼痛、乳頭分泌、腫瘤増大の有無を聴取し、さらに、月経状況、出産・授乳歴、乳腺疾患の既往、乳癌の家族歴、ホルモン補充療法の有無を聴取することが重要です。乳房腫瘤をきたす3大疾患は、乳癌、乳腺症、線維腺腫であり、これらを鑑別することが重要です。
問診の次は、視・触診を行います。腫瘤上の皮膚の陥凹(Delle)、浮腫、発赤、皮膚への癌の浸潤、潰瘍形成などが乳癌の所見としては有名ですが、これらは進行した癌でみられるようです。早期の乳癌や良性腫瘍、乳腺症などでは皮膚所見はほとんどみられません。
また、上肢を挙上したり、手を腰に当てて胸を張ったときに、乳房の一部に陥凹(slight dimple)が現れないかどうかをみておくことも必要となります。これは、Cooper(クーパー)靭帯に乳癌が浸潤し、皮膚との距離が短縮されたために起こる現象です。
乳房の触診は仰臥位で、両手を頭の後ろで手を組み、肘を張って、胸を張るようにした体位で行います。乳癌の特徴的な触診所見は、弾性がやや乏しい硬い腫瘤として触知し、表面は粗いか凸凹で、周囲の乳腺組織との境界がやや不明瞭となります。また、両側の鎖骨上窩と腋窩を触診し、リンパ節の腫脹の有無を調べることも重要です。リンパ節を触知した場合は、個数とともに、それぞれのリンパ節の大きさ、硬さ、可動性などを調べます。
検査としては、超音波検査あるいはマンモグラフィーを行います。これらは、以下のような検査です。
乳首から透明の分泌液が出て、乳首を絞るとたくさん出るようになりました。乳がん検診は受けていませんが、触ってもしこりは感じられません。(48歳女性)
この相談に対して、ちば県民保健予防財団総合健診センター診療部長の橋本秀行先生は以下のようにお答えになっています。
授乳期の母乳以外に乳首から分泌液が出ることを「乳頭異常分泌」といいます。その原因は、腫瘍のほか、乳腺症、乳管拡張症、ホルモンの異常、薬の副作用など様々なものが考えられます。
質問者の場合、触ってしこりが感じられなくても、乳頭異常分泌が乳がんの初期症状ということもありますので、注意が必要です。分泌液に血が混じっていたり、多量に継続して出ていたり、あるいは、分泌液の出ている乳首の小さな穴が1か所である時には、乳がんでないか、慎重な見極めが必要です。
また、肉眼で見て透明や黄色であっても、よく調べると血液が混じっていることがありますので、勝手な自己判断は危険です。
診断では、マンモグラフィ(乳房エックス線撮影)と超音波の検査を必ず行いますが、母乳が通る乳管の中の小さな病変は映らないこともしばしばあります。分泌液の細胞を診る検査を追加するほか、必要に応じて磁気共鳴画像(MRI)や乳管造影、乳管内視鏡も行って乳がんの兆候を見逃さないようにします。
乳がんでは、乳管の中にできたほんの小さな腫瘍から出血することがあり、放置しておくと次第に広がり、大きなしこりになってしまうことがあります。
ただ、すべての乳頭異常分泌が乳がんと診断されるわけではありません。全く治療が必要ない患者さんもたくさんいますので、乳腺外来のある専門の施設を受診して、正確な診断を受けることが重要です。
乳頭分泌とは、非授乳期に乳頭から乳汁様、漿液性、膿性あるいは血性の分泌物を排出することを指します。漿液性の場合は乳腺症や乳腺炎、膿性の場合は化膿性乳腺炎を考えます。
一方で、血性の場合は乳管内乳頭腫、癌などの腫瘍性病変が乳管内に存在する可能性が高いので注意が必要です。細胞診、分泌物中の癌胎児性抗原(CEA)濃度の測定や乳管造影、乳管内視鏡検査を行うことによって、乳管内に潜伏する病変を診断します。
乳癌の診断は、以下のように行います。
乳癌の診断について
一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、視触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。早期がんの発見には、マンモグラフィ検診が有効です。乳癌の死亡率を下げるには、集団検診の受診率を上げることが不可欠とされています。
しこりの訴えがある場合は、その部位を念頭において、まず問診を行います。乳房腫瘤に気づくきっかけ、疼痛、乳頭分泌、腫瘤増大の有無を聴取し、さらに、月経状況、出産・授乳歴、乳腺疾患の既往、乳癌の家族歴、ホルモン補充療法の有無を聴取することが重要です。乳房腫瘤をきたす3大疾患は、乳癌、乳腺症、線維腺腫であり、これらを鑑別することが重要です。
問診の次は、視・触診を行います。腫瘤上の皮膚の陥凹(Delle)、浮腫、発赤、皮膚への癌の浸潤、潰瘍形成などが乳癌の所見としては有名ですが、これらは進行した癌でみられるようです。早期の乳癌や良性腫瘍、乳腺症などでは皮膚所見はほとんどみられません。
また、上肢を挙上したり、手を腰に当てて胸を張ったときに、乳房の一部に陥凹(slight dimple)が現れないかどうかをみておくことも必要となります。これは、Cooper(クーパー)靭帯に乳癌が浸潤し、皮膚との距離が短縮されたために起こる現象です。
乳房の触診は仰臥位で、両手を頭の後ろで手を組み、肘を張って、胸を張るようにした体位で行います。乳癌の特徴的な触診所見は、弾性がやや乏しい硬い腫瘤として触知し、表面は粗いか凸凹で、周囲の乳腺組織との境界がやや不明瞭となります。また、両側の鎖骨上窩と腋窩を触診し、リンパ節の腫脹の有無を調べることも重要です。リンパ節を触知した場合は、個数とともに、それぞれのリンパ節の大きさ、硬さ、可動性などを調べます。
検査としては、超音波検査あるいはマンモグラフィーを行います。これらは、以下のような検査です。
超音波検査では、正常の乳腺は皮膚の下のエコー輝度の低い脂肪に囲まれたエコー輝度の高い均一な像として描出されます。一方、乳腺に腫瘍性病変があるとこの組織構成が崩されて、低エコーの像として描出されることが多くなります。
マンモグラフィーとは、専用のX線撮影装置を用いて乳房を強く挟んで病変前後の乳腺を排除して撮影するものです。二方向で撮影あるいは圧迫スポット撮影を行って評価します。
非触知乳癌の発見や乳房腫瘤の良悪性の鑑別、乳癌の拡がり診断に有効であるといわれています。マンモグラフィーでは、描出された腫瘤陰影と石灰化像から、その腫瘤の良・悪性を診断していくことになります。
マンモグラフィーにおける乳癌の典型的な像としては、放射状陰影(spicule)を有する不整形の腫瘤陰影で、周辺の透明帯(halo)を伴わないか、伴ったとしても不均一なものです。また、形状不整の集蔟した微小石灰化像は、乳癌を疑う所見となります。
病歴情報や身体所見、超音波検査やマンモグラフィーの結果に基づき、腫瘍の存在が疑われたときには穿刺吸引細胞診へ進みます。診断は通常の細胞診と同様に細胞の異型度から、class ?(正常)から class ?(癌)の5段階で行われます。
まずは、乳腺外来などを受診し、検査を受けることが望まれます。その上で、経過観察を含めた対処を行うべきだと思います。
【関連記事】
早期乳癌を教えてくれた赤ちゃん−Milk-rejection signとは
乳癌との闘病の末、亡くなる−川村カオルさん
マンモグラフィーとは、専用のX線撮影装置を用いて乳房を強く挟んで病変前後の乳腺を排除して撮影するものです。二方向で撮影あるいは圧迫スポット撮影を行って評価します。
非触知乳癌の発見や乳房腫瘤の良悪性の鑑別、乳癌の拡がり診断に有効であるといわれています。マンモグラフィーでは、描出された腫瘤陰影と石灰化像から、その腫瘤の良・悪性を診断していくことになります。
マンモグラフィーにおける乳癌の典型的な像としては、放射状陰影(spicule)を有する不整形の腫瘤陰影で、周辺の透明帯(halo)を伴わないか、伴ったとしても不均一なものです。また、形状不整の集蔟した微小石灰化像は、乳癌を疑う所見となります。
病歴情報や身体所見、超音波検査やマンモグラフィーの結果に基づき、腫瘍の存在が疑われたときには穿刺吸引細胞診へ進みます。診断は通常の細胞診と同様に細胞の異型度から、class ?(正常)から class ?(癌)の5段階で行われます。
まずは、乳腺外来などを受診し、検査を受けることが望まれます。その上で、経過観察を含めた対処を行うべきだと思います。
【関連記事】
早期乳癌を教えてくれた赤ちゃん−Milk-rejection signとは
乳癌との闘病の末、亡くなる−川村カオルさん