体調が悪くて吐き気や胃がもたれているときに、栄養をつけようと無理やり食べ物を詰め込もうとして吐いてしまったという経験をした人もいると思いますが、常に何も食べることができない遺伝子形成を持つ少年がいるそうです。

この少年は牛乳のような液体も飲み込むことができず、自分一人で栄養を補給することが困難とのこと。

イギリス北東部にあるタイン・アンド・ウィア州のサンダーランドに住むKeaton Foale君(5歳)は「Congenital Disorder Glycosylation Type Two(先天性疾患糖鎖形成タイプ2)」という1億3500万人に1人しかいない非常にまれな遺伝形成を持っており、胃の中に入ってこようとする食べ物をすべて拒絶してしまう特異体質になっているそうです。また、定期的に内出血を起こしてしまうため、1年の間に多量の血液を失ってしまうとのこと。

Keaton君が先天性疾患糖鎖形成タイプ2であることが判明したのは生後3ヶ月の時で、急激に体重が落ち始めたため鼻からチューブを通して食べ物を注入したりミルクのような液体状のものを与えようとしたそうですが、すべて吐き出してしまったり肺の中に入ってしまったりするため詳細な検査を行った結果、特殊な遺伝子形成を持っていることが明らかになったそうです。生後1年まで黄疸・貧血・感染症などに苦しみ、盲目にならないようレーザー手術も受けたとのこと。

現在、特注のチューブを胃の中まで入れて栄養価の高い特殊なミルクを流し込むという1回50分間もかかる食事を1日に4回行わなければならないそうです。遺伝子形成の問題であるため、現代医療での治療は難しいとされており、Keaton君先天性疾患糖鎖形成タイプ2と一生戦い続けなければならないそうです。
(何も食べることができない特殊な遺伝子形成を持つ少年)

先天性糖鎖合成異常症(CDG)とは


糖鎖を結合した蛋白質のことを糖蛋白質といいます。もともと蛋白質の特殊な一群と考えられていましたが、今日では生体を構成する蛋白質の大部分が糖蛋白質であることが知られています。

糖鎖は、蛋白質の親水性を増大させたり、特定の立体構造を安定に形成したり、プロテアーゼに対する抵抗性を高めたり、シアル酸や硫酸基の付加により荷電を調節する意義があるといわれています。

糖鎖が欠損すると、酵素蛋白であれば活性が低下したり、血液凝固因子であれば凝固因子の活性が低下したりといったことがみられます。

先天性糖鎖合成異常症(congenital disorders of glycosylation;CDG)は、蛋白質に糖鎖を結合するための、小胞体やゴルジ体の中で糖転移酵素などのステップ過程における異常です(小胞体やゴルジ体の異常が主要な病態と考えられています)。

先天性糖鎖合成異常症(CDG)には、I型とII型があります。CDG I型は、小胞体で脂質中間体が合成される過程の異常であり、CDG II型は、ゴルジ体での糖鎖プロセッシングのための酵素の異常であるといわれています。

CDGの中では、Ia 型(phosphomannomutase-2)が最も多いといわれています。phosphomannomutase-2(PMM2)遺伝子(Man6P を Man1P に変換する酵素の遺伝子)異常による先天代謝異常であるといわれています。

I型には、a〜lおよびxのタイプに分かれています。それぞれ別の酵素の異常が原因となり、CDGを発病すると考えられています。II型はa〜eのタイプに分かれています。

具体的な症状などは、以下のようなものがあります。
先天性糖鎖合成異常症CDGにおける多くのタイプで共通の症状としては、乳児期筋緊張低下、体重増加不良、重度精神運動発達遅滞、特徴的顔貌などがあります。

他にも、てんかん、内斜視などの眼科異常、臀部脂肪沈着・乳頭陥没などの皮膚症状や、心嚢液貯留・心筋症、肝機能障害、血液凝固因子異常(特に、凝固因子活性、Antithrombin-?が低下)を認めることがあります。

上記の例では、II型であったようです。免疫異常(恒常的な好中球数増加、好中球遊走能低下)や出血傾向といったこともあるようです。

CDGにいける画像所見としては、MRI で大脳白質異常、小脳虫部の欠損ないし低形成を認めることがあります。原因不明であるとされ、leukodystrophy、Dandy−Walker や Joubert 症候群、点頭てんかんなどと診断された症例の中には、CDGであるケースもあると考えられています。

最近のトピックスであり、治療もあまり確立したものもない現在、対症療法を行っていくしかないようです。遺伝子治療を含めた研究がなされているようですが、早く彼らが「普通の生活」を送れるようになれば、と願わずにはいられません。

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