読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
声帯にポリープがあり、時々、声がかすれます。手術をするべきか、薬で消す方法があるのか、放っておいても大丈夫なのか教えてください。(72歳男性)

この相談に対して、大北メディカルクリニック院長である松永敦先生は次のようにお答えになっています。
声帯はのど仏の辺りにあり、左右一対の粘膜のヒダが向かい合わせになっています。このヒダが閉じたり、開いたりしながら細かく振動することで声が出ます。声帯ポリープとは、その粘膜にできる良性のできものです。

原因は、声の出し過ぎや、せき払いのし過ぎなどです。粘膜の中を走る血管がつぶれ、そこから血液や浸出液が染み出して血豆状になったり、炎症が強くなって粘膜自体が腫れたりします。ポリープのせいで、向かい合わせのヒダがきれいに閉まらず、すき間ができてしまい、息が漏れるために声がかすれてしまうのです。

まず、耳鼻咽喉科に行って、医師にポリープの状態をよく診察してもらってください。

もし、ポリープが血豆状になっていれば、内服薬や吸入薬はあまり役に立たず、手術が望ましいということになります。まだ血豆状になっていない場合は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入薬や、炎症を抑える飲み薬、注射治療などで治すことができます。

声帯ポリープは、職業的に声をよく使う人に多くなっています。声の酷使による声帯の機械的刺激過多に炎症や喫煙が加わり、声帯粘膜の血液循環障害が生じ、血腫や浮腫形成からポリープ病変に発展すると考えられています。

特に、低いピッチでの過緊張性発声(必要以上にのどに力を込めて発声する状態)が原因となることが多いようです。過緊張性発声によってポリープを生じ、ポリープがあって声を出しにくいので、さらに過緊張性発声をしてしまう…という悪循環があるため、ポリープがなかなか治らない、ということになってしまうようです。

症状としては、嗄声(声の音質の異常で、嗄れた声になってしまう)が主だったものです。声を出すとき、左右の声帯が発声時内転して真ん中で近づき、下方からの呼気流によって振動します。つまり、この声帯が震えることと後きちんと閉鎖した上で震えることできれいな声が出ます。

ここにポリープ、つまり声帯の突出物があると声帯がきれいに閉じず、嗄声という『声の嗄れ』が起こるというわけです。

治療としては、小さなポリープでは、沈黙療法(声を使わない)や音声指導(あまり声帯に負荷がかからないようにする)による保存的治療が有効です。ただ、歌手や教師などで急激に発症した場合は、応急処置として副腎皮質ステロイド薬の投与と吸入治療を行うこともあります。

保存的治療に抵抗したり、患者さんが音声改善を希望する場合には手術が行われます。たとえば、間接喉頭鏡下に喉頭鉗子を用いたり、処置用喉頭ファイバースコープを用いて、ポリープを切除する外来手術や、全身麻酔で喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージリー)を行ったりします。

手術治療としては、以下のようなものがあります。
もっとも、このような治療を1か月以上続けても治らない場合は、やはり手術が一番です。

良性のできものですから放っておいても命に別条はありませんが、徐々に大きくなり、かなり声が出にくくなることがあります。

中にはポリープに見えて実はがんのでき始めというものもあります。少なくとも1か月に1度は通院し、ポリープの状態を見てもらいましょう。

外来手術では、間接喉頭鏡下に喉頭鉗子を用いて、または処置用喉頭ファイバースコープを用いて、ポリープを切除します。喉頭反射が起きないように十分に表面麻酔することが重要です。適応は有茎性ポリープに限られ、患者の協力と術者の熟練が必要です。

喉頭顕微鏡下手術では、一般的には数日の入院で全身麻酔下に行います。直達喉頭鏡による歯牙の損傷を避けるため、歯牙プロテーゼを作製する場合があります。

原則として術後1週間は、発声禁止となります。退院後は、外来で声の安静・衛生の指導や、音声訓練を行い、再発を予防する必要があります。

まずは保存的治療を行い、それでも改善が難しければ、主治医と相談の上、手術治療などを行ってはいかがでしょうか。

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