口腔がんの中では最も多く(5-6割)、ピークが50代と比較的若い世代に発症するがん。元チェッカーズのドラムス、クロベエ(徳永善也)が40歳の若さで亡くなったのもこの病気が原因だ。口腔内の粘膜病変は種類が多い。危なそうな病変は早めの受診で鑑別してもらおう。

【ヘリの病変は危険】
舌がんを見分ける上で最も分かりやすいのは、病変のできる部位。ほとんどは舌の縁(へり)にでき、先端や表面にできることはごくまれだ。

ただ、病変のでき方が人によって違ってくる場合があるので、安易に自己判断するのは禁物だ。

「大きく分けると舌の中に固いシコリを作る浸潤型と病変が外に向かって広がる増殖型がある」と説明するのは、東京セントラル歯科(東京・八重洲)の寶田博院長(口腔外科指導医)。

普通、本当の口内炎なら1-2週間内で治る。舌に当たる悪い歯が潰瘍の原因なら、歯を治療すれば治るはず。いずれにしても病変が少しも改善することなく、拡大する一方なら疑いありだ。

【がん化の前に発見】
また、がん化する可能性がある“前がん病変"という場合もある。
「舌の縁に白い部分ができる『白板症』は15-20%の確率でがん化するといわれる。赤くタダレる『紅板症』は、危険性がもう少し高く30-40%ぐらい」(寶田院長)

両側の縁の辺りがレース状に白くなる「扁平たいせん」という病変もがん化する可能性があるといわれている。舌の変色に注意しておくことは大事なポイントだ。

しみたり、痛みの有無も病変の種類によって分かれる。タダレや潰瘍の場合には痛いが、白板症やシコリではほとんど無痛。見落としがないように歯磨きのときには歯周病のチェックも兼ねて口腔内を観察しておこう。

【早期は90%以上治る】
原因はまだ明らかではない。が、強い香辛料を使った食事や噛みタバコの習慣があるインドやパキスタンなどの地域の発生率が非常に高いことから、怪しいのは慢性的な刺激。日本では他のがん同様、飲酒や喫煙、加えて虫歯や入れ歯などが舌に当たる機械的な刺激が誘因とされている。

口の中にできるがんは「扁平上皮がん」というタイプで進行はそれほど早くはないが、舌がんは口腔底がん(舌と歯肉の間にできる)と並んで転移しやすいのも特徴。

ただ、寶田院長は「病変が2センチ未満でリンパ節転移がなければ90%以上は手術や放射線治療で治る」と、早期であれば恐れる必要はないという。1日1回、鏡に向かって“あっかんべー"をしておこう。

★「舌がん」チェックリスト
・舌の縁に口内炎ができて1カ月以上治らない

・舌の縁に白い部分ができて少しずつ拡大していく(無痛)

・舌の縁が赤くただれている

・舌の縁に痛みのないシコリができて次第に大きくなってきた

・虫歯や詰め物、入れ歯などが舌に当たって潰瘍ができた

・舌の縁にできた潰瘍の周りが固くなっている

1つでも該当したら可能性があります。
(舌がんチェックは“あっかんべー” 白色、赤いタダレなど変色に注意)

舌癌とは


舌癌とは、その名の通り舌(有郭乳頭より前の舌可動部)に生じる上皮性悪性腫瘍です。ちなみに、同じ舌でも、舌根のものは中咽頭癌に分類されます(境界は有郭乳頭です)。舌のへり(舌縁部)、それも後方に好発します。

全癌の1%、口腔癌の60%を占めるといわれています。原因となるのは、う歯(虫歯)、不適合義歯などの器械的刺激、喫煙、飲酒などがリスクとしてあげられています。特に、不良歯牙や不適切な義歯による慢性的な刺激と口腔内の不衛生が発症の主たる原因と考えられています。

初期症状としては、舌の違和感、軽度の痛みなどがあります。進行すると、食事をしている時の痛みや、舌運動制限、構音障害(言葉を発するときの障害)、嚥下障害(飲み込みにくさ)などが出現します。

病変を見ると、潰瘍やその周囲の硬結が特徴的で、前癌状態(そこから癌に進行することがある病変)として白板症、紅板症などがあります。

診断としては、生検による確定することができ、画像診断(頭部CT、MRIなど)により原発巣、頸部リンパ節転移、遠隔転移の拡がりを診断することができます。初診時頸部リンパ節転移の頻度は、40〜50%ですが、遠隔転移は少なく、経過中に発生する部位では肺が多いという特徴があります。

治療方針の決定において、原発部位と癌の深達度が重要です。MRIで軟部組織への浸潤範囲を、CTで骨組織への浸潤程度を確認します。

舌癌の治療


舌癌の治療としては、以下のようなものがあります。
早期例では、放射線治療(小線源組織内照射)ないしは舌部分切除術(レーザー使用)が行われます。小線源組織内照射は、頚部転移のないT1,T2とT3の一部が適応となります。

進展例では、拡大根治手術が主体で、これに化学療法、放射線療法が組み合わされます。進展範囲により、舌の半側切除、亜全摘、全摘などが選択されます。初期例を除くと、隣接領域に浸潤しやすく、下顎骨、咽頭などの合併切除が必要な場合もあります。

術後に嚥下、構音の障害が必発なので(舌の切除をするわけですから)、これに対しては皮弁によって欠損部を再建します。術後の嚥下、構音障害を最小限にするため、遊離皮弁などを用いた再建術が併用されます。頸部リンパ節転移には頸部郭清術が行われます。手術不能例では、放射線、化学療法などが姑息的に行われます。

お心当たりの方は、上記のチェックポイントで調べ、すぐに病院へ行き、早期発見・治療することが重要であると思われます。

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