読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター長である佐原力三郎先生は、以下のようにお答えになっています。
裂肛(切れ痔)は、肛門部に生ずる急性の裂創から慢性の潰瘍までを総称するものです。痔核、痔瘻とならんで頻度の高い痔疾患です。
急性のものはいきんで硬い便を排泄した時に、疼痛と出血を伴って生じます。数日の安静で治るものが多いですが、排便状態の不良や感染、内括約筋の痙攣痛を伴うものは慢性化するといわれています。
慢性期では、難治性潰瘍となり、内肛門括約筋繊維が見られることがあります。肛門縁に、いわゆる「見はりいぼ」や歯状線部に「肛門ポリープ」を伴うこともあります。
これらの診断は、臀部を広げる視診で潰瘍を確認することで行い、指診で内肛門括約筋の状態などを診断します。
鑑別診断としてCrohn病、梅毒、肛門癌などがあります。6時、12時方向以外に存在する潰瘍や、治療に反応しない病変には注意する必要があります。
裂肛の治療としては、以下のようなものがあります。
保存的療法としては、まず生活指導が必要となります。便秘や下痢を防ぎ、適度な水分や食物繊維の摂取を行います。便意に忠実な排便を心がけ過度のいきみや長時間のトイレを避け、排便後は強く拭き取るよりは適度に洗浄するようにします。
出血や疼痛のあるときはアルコールや刺激物は避けるようにし、入浴は腫脹疼痛症状を緩和する効果が高いです。
薬物療法としては、外用薬と内服薬があります。出血する場合は、止血効果のあるビスマス系含有坐剤(ヘルミチンS 坐剤)などを使用します。
手術治療としては、側方皮下内括約筋切開術やSSG(sliding skin graft)皮膚弁移動術などがあります。
側方皮下内括約筋切開術では、内括約筋の一部を側方で切開し、括約筋レベルの肛門管の狭窄を解除し肛門の伸展性を回復させます。SSG(sliding skin graft)皮膚弁移動術は、肛門上皮の瘢痕化からくる強度の肛門狭窄例に適応となります。
上記のような状態では、おそらく手術が必要になると思われます。その後、まずは排便の状態を良く保つことなどの保存的療法が行われ、日常の中で気をつけていただけると良いかと思われます。
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以前から便秘がちで硬い便になることが多く、無理にいきむと痛んで紙に血がつきます。最近は、肛門の出口にいぼのようなものができてしまいました。(32歳女性)
この相談に対して、社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター長である佐原力三郎先生は、以下のようにお答えになっています。
治りにくい慢性の切れ痔(じ)(慢性裂肛(れっこう))の典型的な経過です。
硬い太い便を無理に排泄(はいせつ)した時、感覚が鋭敏な肛門内側の皮膚が傷つき、痛みとわずかな出血を伴うのは急性の切れ痔です。特に便秘傾向の若い女性に頻度の高い疾患です。便通が改善すれば通常は数日で痛みも出血も軽くなるので、医師にかからなくても治ることが少なくありません。
適切な対応を怠り、便秘を繰り返していると、慢性の切れ痔へと変化していきます。慢性期の特徴は、排便時の痛みと出血以外に、切れ痔部分の皮膚側が腫れる「見張りいぼ」や、ポリープが肛門に出来ることで、肛門の筋肉や皮膚も硬化して開きにくくなります。
すると、便は鉛筆ぐらいの太さになります。便が硬いと排泄が大変なため、下剤に頼りがちですが、さらに肛門が開きにくくなる恐れがあります。
裂肛とは
裂肛(切れ痔)は、肛門部に生ずる急性の裂創から慢性の潰瘍までを総称するものです。痔核、痔瘻とならんで頻度の高い痔疾患です。
急性のものはいきんで硬い便を排泄した時に、疼痛と出血を伴って生じます。数日の安静で治るものが多いですが、排便状態の不良や感染、内括約筋の痙攣痛を伴うものは慢性化するといわれています。
慢性期では、難治性潰瘍となり、内肛門括約筋繊維が見られることがあります。肛門縁に、いわゆる「見はりいぼ」や歯状線部に「肛門ポリープ」を伴うこともあります。
これらの診断は、臀部を広げる視診で潰瘍を確認することで行い、指診で内肛門括約筋の状態などを診断します。
鑑別診断としてCrohn病、梅毒、肛門癌などがあります。6時、12時方向以外に存在する潰瘍や、治療に反応しない病変には注意する必要があります。
裂肛の治療
裂肛の治療としては、以下のようなものがあります。
治療は排便障害を改善する手術が中心となり、手術後はとても楽になります。肛門を締める筋肉の一部に小さな切れ目を入れるか、肛門のすぐ外側の皮膚を肛門の中側にずらして肛門を広がりやすくする方法があり、個々の患者さんの状態に合わせて選択されます。
局所麻酔による日帰り手術を行う施設も、数日間の入院が必要な腰椎麻酔で手のこんだ手術をする施設もありますが、それぞれに利点があり、どちらがいいとは決まっていません。
再発防止には、便秘や下痢を避け、排便の状態を良く保つことが大切です。
保存的療法としては、まず生活指導が必要となります。便秘や下痢を防ぎ、適度な水分や食物繊維の摂取を行います。便意に忠実な排便を心がけ過度のいきみや長時間のトイレを避け、排便後は強く拭き取るよりは適度に洗浄するようにします。
出血や疼痛のあるときはアルコールや刺激物は避けるようにし、入浴は腫脹疼痛症状を緩和する効果が高いです。
薬物療法としては、外用薬と内服薬があります。出血する場合は、止血効果のあるビスマス系含有坐剤(ヘルミチンS 坐剤)などを使用します。
手術治療としては、側方皮下内括約筋切開術やSSG(sliding skin graft)皮膚弁移動術などがあります。
側方皮下内括約筋切開術では、内括約筋の一部を側方で切開し、括約筋レベルの肛門管の狭窄を解除し肛門の伸展性を回復させます。SSG(sliding skin graft)皮膚弁移動術は、肛門上皮の瘢痕化からくる強度の肛門狭窄例に適応となります。
上記のような状態では、おそらく手術が必要になると思われます。その後、まずは排便の状態を良く保つことなどの保存的療法が行われ、日常の中で気をつけていただけると良いかと思われます。
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