以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。

少年の名前はベン。1994年イギリスで3,500グラムの体で元気よく生まれてきた。そんな彼は今、死と隣り合わせの毎日を過ごしている。

ベンは両親と3歳年下の妹と4人家族の家で育った。スポーツが得意で活発なこの少年の体に最初の異変が起こったのは彼が7歳になるころだった。ある朝、母が学校に遅刻するよと、急いで起こしにベンの部屋へ向かったのだが、体にだるさ感じなかなか起きられない。

またある日、小さな体のベンだったが、特大のピザを一人で平らげるほどの異常な食欲を見せた。これらは彼が発症した、珍しくも重篤な病気“突発性視床下部機能障害"のせいであった。

この病気の原因は脳にあり、過食、睡眠過多、低体温などの症状を見せる。中でも低体温が非常に問題視され、ベンの体温は朝方には34℃、夕方には30℃と常に35℃を下回る。その為、どんな暑い日でも大量の防寒着を身にまとう必要があり、さらに対策はしても体温は下がり、何度も卒倒し病院へ運ばれた。

ベンは今どうしているのだろうか?仰天スタッフが現在15歳になるベンのもとを訪ねた。彼は現在、体の調子があまり良くなく、入退院を繰り返している。それでも持ち前の明るさからカメラの前では無邪気な姿を見せてくれた。

視床下部症候群とは


視床下部には、内分泌機能、自律神経機能、体温調節、摂食・飲水・睡眠・情動行動など多くの機能の中枢が存在します。このため、何らかの原因でこの部に病変を生じるとこれらの機能に障害を呈します。

これらを総称して、「視床下部症候群」といいます。原因としては、頭蓋咽頭腫、胚芽腫、鞍上部進展を来した下垂体腫瘍など視床下部を冒す腫瘍性疾患が最も多いですが、頭部外傷、治療目的の放射線照射、ヒスチオサイトーシスX、サルコイドーシスなどの肉芽腫性病変、結核その他の髄膜脳炎なども本症候群を起こしえます。これらの場合、視力や視野障害、精神神経機能異常などを伴うこともあります。

器質性疾患の存在が明らかでなく、特発性と分類されるものもあります。上記の場合、原因は明らかではないようです。さらに神経性食欲不振症、心因性多飲症、心因性無月経などを広義の視床下部症候群として加えることもあります。

視床下部症候群の症状


1)内分泌異常
視床下部基底部の破壊や視床下部と下垂体との連絡路の障害のため、視床下部ホルモンによる調節が不能となり下垂体前葉ホルモンの分泌が障害されます。複数のホルモン分泌が障害されることが多いですが、その頻度や程度には差があり、成長ホルモン(GH)分泌が最も障害されやすく、次にゴナドトロピン(LH、FSH)分泌の障害が起こりやすく、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)は比較的障害されにくいです。

視床下部ドパミンで主に抑制性調節を受けているプロラクチン(PRL)分泌は、視床下部障害で分泌が亢進し乳汁分泌をきたすこともあします。成長期のGH分泌不全は低身長をもたらします。LH、FSH分泌障害(視床下部性性機能低下症)が思春期前から存在する場合は二次性徴の発来はなく、成人で発症すると二次性性腺機能低下症が起こります。

思春期早発症も起こることがあり、男子の場合、9歳未満で睾丸、陰茎、陰嚢などの発育、10歳未満で陰毛発生、11歳未満で腋毛、ひげの発生や声変わり、女子の場合、7歳未満で乳房発育、8歳未満で陰毛発生、外陰部早熟、腋毛発生、9歳未満で初経発来がみられることがあります。

2)水代謝異常
中枢性尿崩症が起こることもあり、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌障害によって起こり、多尿、口渇、多飲などの症状が出現します。浸透圧受容体が正常ならば飲水によって血漿浸透圧は正常範囲に維持されれますが、同時に渇中枢の浸透圧受容体に障害が起こると飲水行動をとらず高ナトリウム血症性脱水、意識混濁、昏睡に陥ります。

無飲水性高ナトリウム血症は、口渇中枢の浸透圧受容体が障害された場合で、飲水量は低下、高ナトリウム血症を示す。本症では浸透圧上昇に伴うADH分泌は障害されているが、体液量減少に伴うADH放出は保たれているため細胞外液量や血圧、脈拍数はほぼ正常値を示します。

抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群[syndrome of inappropriate secretion of ADH(SIADH)]は、ADHの持続性分泌によって低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下、尿中Na排泄増加、尿浸透圧上昇が起こりえます。

3)体温異常
視床下部障害による体温異常には、持続性低体温、発作性低体温、持続性高体温、発作性高体温、変動体温があります。最もよくみられる変動体温は、外界の温度によって体温が2度以上変動するもので、視床下部後部の体温調節機構の異常によって起こりえます。

4)カロリーバランスの異常
視床下部性肥満 飽満中枢である腹内側核の破壊が過食と肥満をもたらし、一方、摂食中枢である視床下部外側野の障害はやせを引き起こします。末梢組織からのレプチン、インスリン、グレリンが視床下部に働き、最終的に食欲および食行動を変化させ、また同時にエネルギー消費にも変化が起こり、肥満ややせが起こると考えられています。

視床下部性やせ(るいそう)が起こることもあり、飽満中枢の腹内側核に対し摂食中枢は外側核に存在し、摂食中枢の障害はやせを引き起こします。

5)精神神経症状
視床下部の障害で種々の程度の意識障害、無動無言症、記銘力低下、指南力の障害、Korsakoff(コルサコフ)症候群、発動性の障害、情動の障害などが現れます。間脳自律神経てんかんは発作的に起こる自律神経系の症状で、頻脈、高血圧、発汗、唾液分泌、体温異常などを特徴とします。視神経もしばしば障害され視力低下、視野欠損をきたします。

視床下部症候群の治療とは


視床下部症候群の治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、原因疾患に対するものが基本となります。腫瘍の場合には摘出が原則ですが、手術不能例や再発例には放射線照射が行われます。

下垂体前葉ホルモンの分泌不全がある例では、それぞれのホルモンの補充療法が必要です。視床下部機能障害の原因の除去と欠落機能に対する対症療法、そしてホルモン補償療法があります。

予後は病因の種類と広がりによります。3歳ごろまでに発症する乳児間脳症候群では、症候が進行性の痩せを伴う成長障害に限られるという特異なタイプがありますが、これは通常第3脳室底から視交叉にかけて発生する低分化の星状神経膠腫によります。

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