読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
1歳10か月になる娘が保育園で行った尿検査で潜血があると指摘されました。どのような病気が考えられますか。(41歳男性)

この相談に対して、東京女子医大病院 腎臓小児科教授である服部元史先生は、以下のようにお答えになっています。

尿は、血液に含まれている余分な水分や老廃物が腎臓で取り除かれたものです。通常、血液が尿に混じって排せつされることはほとんどありません。

血が混じっている尿を血尿といいますが、顕微鏡で見ないと分からないほどの微量の場合は、「尿潜血」と判定されます。血尿があると、何らかの病気が隠れている可能性があります。

血尿の原因は様々ですが、代表的な病気として挙げられるのは「糸球体腎炎」や「尿路感染症」です。

糸球体腎炎は、腎臓で濾過(ろか)機能を果たしている「糸球体」という組織が何らかの原因で炎症を起こす腎臓病です。原因の違いや病気の進行の速度などによっていくつかの種類に分類されます。

尿路感染症は、尿の通り道である尿路に細菌などが感染することにより起きます。生まれつき、腎臓が通常よりも小さいことがあり、これが尿路感染症の原因となっていることもあります。

ただ、保育園や学校、職場で行われる尿検査は、簡便かつ短時間で結果が出る尿試験紙を用いて行われるため、実際に尿に血液が混じっていなくても「尿潜血陽性」の反応が出ることがあります。

血尿は尿に赤血球が排泄されている状態です。また臨床的に、血尿は肉眼的血尿と顕微鏡的血尿に分けられます。尿潜血反応は非常に鋭敏であり、ヘモグロビン尿のみならずミオグロビン尿、ポルフィリン尿や下剤などの薬剤の影響でも陽性になることに留意します。

尿潜血は、腎あるいは尿路からの出血により尿中へ赤血球が排泄されたときに陽性反応を示します。正常でも赤血球は3個/μL(強拡大で毎視野1個程度)は生理的にみられます。試験紙法では赤血球5個/μL(強拡大で毎視野2〜3個程度)で陽性を示します。

腎糸球体〜尿細管〜腎盂以降の尿路いずれの部位からの出血でも尿潜血陽性となります。溶血によるヘモグロビン尿や筋融解によるミオグロビン尿でも尿潜血反応は陽性となります。沈渣で赤血球を見出せば血尿と確定できます。

ヘモグロビン尿では血清がピンク〜赤色であり、溶血があったことが示されますが、ミオグロビン尿では血清は着色していません。ヘモグロビン尿とミオグロビン尿の鑑別には免疫電気泳動が有用です。

さらに、以下のようなことを考えます。
このため、まずは小児科を受診し、本当に血尿があるのかどうか再検査する必要があります。

この検査でも陽性となった場合は、腎臓に詳しい小児科医などを受診し、病気の原因を特定してから、適切な治療を受けて下さい。

尿潜血では、糸球体腎炎、間質性腎炎、尿路感染、尿路結石、尿路腫瘍などが考えられ、出血性素因、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、性器出血の混入も原因となります。

赤血球が尿中にあるか沈渣の鏡検で確認、尿路造影・超音波により結石、腫瘍の有無の確認、糸球体疾患が疑われたら腎生検などを行います。

【関連記事】
腎機能の把握などに重要−尿検査って何?

健康診断で尿潜血を指摘されている69歳女性

腎性糖尿で倦怠感をきたした80歳女性