読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
3年前から手のひらに小さなしこりがあり、大きくなり始めました。整形外科医には「デュピュイトラン拘縮で、次第に指が曲がってくる」と言われています。(62歳女性)

川崎市立川崎病院理事である堀内行雄先生は、以下のようにお答えになっています。
手の甲の皮膚は容易につまみ上げられますが、手のひらの皮膚は動きが少なく、物をしっかり持てるようになっています。これは手のひらの皮膚のすぐ下に「手掌腱膜(しゅしょうけんまく)」という薄い膜が、手首の部分から5本の指に向かって扇状に広がり、皮膚が動かないようしっかりと皮膚とつながれているからです。

デュピュイトラン拘縮という病気では、手掌腱膜にできた小さなしこりが徐々につながり合って太くなり、ひも状になって縮んで硬化します。しこりができても特に痛みはありませんが、進行すると指の付け根の関節が曲がったまま、伸ばせなくなります。

原因は不明です。病気にかかりやすい人は中年男性で、白人に多いのですが、日本人にも軽症例は少なくありません。糖尿病患者に多い傾向もあります。両手に発生することが多く、できやすい場所は薬指や小指ですが、5本の指すべてにできたり、足の裏にできたりすることもあります。

デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮は、主に手掌に、時に足底に生じる、腱膜の肥厚および拘縮です。手掌に生じたものは手掌腱膜拘縮ともいいます。当初は手掌部の硬結で気づかれますが、進行すると罹患腱膜の場所によって中手指節(MP)関節あるいは近位指節間(PIP)関節の屈曲拘縮を生じます。

手掌腱膜の線維化は、皮膚の陥凹pit、小結節noduleから始まります。原因は不明であるが中年以降、とくに50代後半以降の男性に多いです(男女比は2.5〜8:1)。環指に最も多く発生し、以下小指、中指、示指、母指と続きますが母指の発生は稀です。半数以上が両側例ですが、利き手から発症することが多いです。

人種差があり、白人は有色人種よりも発生率が高いと報告されていますが、日本の発生頻度は欧米と同等であるといわれています。ただし重症例は日本では少なく、手掌病変のみのものが多いです。

家族発生の報告もあり、糖尿病との合併が多いです。足底(Ledderhose病)や陰茎(Peyronie病)の皮下に同様の結節を合併することがあります。

治療としては、以下のようなものがあります。
一般的には徐々に進行しますが、軽症のまま終わる人も少なくありません。物理的な刺激を受けるうちに悪化することもありますので、しこりの部分をあまり触らないように心がけることが大切です。

手のひらがテーブルにぴったりつけられなくなったら、しこりのある手掌腱膜を周囲の神経や血管を傷つけないように取り除く手術が必要になります。その時は「日本手の外科学会」が認定する専門医に受診することをお勧めします。

軽症例では、積極的に手術を行う必要はありません。トリプシンやステロイドなどの局所への注入療法の報告もありますが、一般的ではありません。

手指の屈曲拘縮が強くなれば外科的治療が必要となります。拘縮を除去するためには手掌腱膜の切除と皮膚欠損の処置、さらにPIP関節の屈曲拘縮の除去が必要です。

拘縮の程度によって、手術法が変わります。手掌腱膜の切除が基本ですが、どこまで切除するかについては種々の意見があります。皮膚と一塊にして切除して植皮を行う方法もあります。

術後に拘縮が起こらないように皮切をデザインします。術後に皮膚を一期的に閉じる方法と植皮を行う方法、皮膚欠損を開放したまま上皮化を待つ方法(open palm technique)などがあります。

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