以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り扱われていた内容です。

2005年イギリス・ロンドン。イギリス王室主催のイベントで注目を浴びる一人の母親がいた。彼女の名はリサ・ジョンソン。トニーという5歳になる少年の母親だった。トニーは未熟児で生まれ、原因不明の病に侵され、数え切れないほどの手術を繰り返してきた。そんな息子を24時間、献身的に看病してきたリサは、イギリスで一番慈愛に満ちた母として尊敬を集めていたのだ。

だが、リサには恐ろしい裏の顔があった。実はトニー、完全な健康体だった。リサは我が子を無理やり病人に仕立てることで、献身的な母を演じ、周囲から「健気な母親」だと注目を集めたかったのである。

我が子を利用した母親の異常行動…この症状は、代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる。病名の由来は、童話の主人公「ほら吹きミュンヒハウゼン男爵」からきたもの。

男爵は自分の病気やケガをねつ造し、悲劇の主人公を演じ、自分に注目を集めようとした。このことから、自分の代わりに子供など弱者を傷つけ悲劇の主人公を演じる症状を代理ミュンヒハウゼン症候群という。日本では87%の確率で子供を死に至らしめる可能性のある恐ろしい症状。

リサの行動は日々エスカレート。「色々な種類のミルクを与えてもすべて吐いてしまう」という訴えを信用した医師は、胃に直接チューブを通し栄養分を摂取させることを提案。まだ生後間もないトニーは、その小さな体にメスを入れられた。

そしてトニーが5歳になった頃には、歩くことさえままならぬ少年にされていた!そのような状況に至っても、周囲の人たちだけでなく、夫や医師までもがリサの素顔を見破れなかった。24時間、誰よりもトニーのそばに付き看病しているリサを、誰も疑おうとはしなかったからだ。

リサとトニーは新聞の取材を受け、その記事は大反響となり話題を呼んだ。その結果、難病のトニーのためにと車のプレゼントや多額の寄付が集まった。その額なんと2977万円!リサはイギリスで一番素晴らしい母親と呼ばれ、尊敬の眼差しを一身に浴びるようになっていった。

そんなリサの姿に疑惑を抱く医師がいた。なぜ、リサは検査を何かと理由をつけて断るのか?それに看護師相手に元気いっぱいに遊ぶトニーは、本当に重い病気を抱えているのか?ある日、担当医師は内緒でトニーの検査をする。結果はもちろんどの数値も正常。リサに報告すると、勝手に検査を行ったことに激高し、検査のやり直しを要求!仕方がなく再検査を行うと…突然異常な数値が出た!明らかにおかしい・・・。

医師はリサが「代理ミュンヒハウゼン症候群」ではないかと疑い、警察に通報。捜査の結果、警察は動かぬ証拠を見つける。リサの自宅からトニーが元気に走り回る姿や、サンドウィッチを食べる様子が映ったビデオが見つかったのだ。
裁判でリサには児童虐待の有罪判決が下された。今後、リサはトニーと暮らすことは難しい。トニーは現在、父親と姉と3人でひっそりと暮らしている。
(病弱な息子と母の秘密)

代理ミュンヒハウゼン症候群とは


身体的な症状や、精神的所見が、意図的あるいは偽装的に作り出されたものを虚偽性障害と言います。別に、病院嗜癖症候群と言うこともあります。

虚偽性障害の一番の特徴は仮病ですが、その目的は、病人として扱ってもらう事自体にあります。そのような行動の動機として、患者の役割を演ずるという心理的欲求が考えられ、経済的利益を得るとか、法則的責任を回避するといった外的理由によるものとは異なります。

心理的症状を作り出す典型例としては、認知症を装ったり、偽精神病症状を呈するガンゼル症候群があります。

さらに、ミュンヒハウゼン症候群とは、以下のようなものを指します。
身体症状や所見を呈するものとしてはミュンヒハウゼン症候群がその例で、急性腹症、出血(吐血)、失神などで入院し、手術を含めて応急処置を受け、退院したらまた他の病院に入院するということを繰り返すことがあります。

虚偽性障害では、医学的な専門知識を持っている事が多く、病気のフリが巧妙で、病院に入院できさえします。うまく入院できたら、できるだけ長くいられるように、いろいろな工作をしたりします。

また、こうしたことは患者は本人のことが多いですが、時に保護者(多くは母親)によって幼児が犠牲になることもあります。これを、代理ミュンヒハウゼン症候群といいます。

こうした虚偽性障害の直接的な原因は不明ですが、幼少期におけるトラウマや家庭環境の関与が推定されています。

父親不在で、母親が子供に愛情をあまり示さないような状況で、たまたま、病気になって入院した時、周りの人が自分をやさしくしてくれた経験があったら、病気になると愛情が得られると、無意識に心が覚えてしまう、といったことが考えられます。

また、子供時代、親から溺愛されて育ってしまうと、過剰の愛情を受けるのが当然と思っても、大人になると、周りの人は自分の事をそんなに構ってくれないので、愛情を得るため、病気のフリをしてしまうといったこともあります。

また、医療の現場で、患者さんが周りのスタッフから大切にケアされているのを見て、自分もあのように大切にされたいと、心が学習してしまうこともあります。このように、虚偽性障害は医療関係者にもみられます。

満たされない心、それを満たそうと必死になってこのような行動に出てしまう人もいるようです。ただ、その犠牲となった子供にとっては、たまったものではありませんね。

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