すい臓に持続的な炎症が起こり、炎症細胞が増えたり、細胞が死んだりする。進行すると、すい臓全体が硬くなる(線維化)慢性の病気だ。治癒する急性すい炎と違って元に戻らず、病気と一生つきあうことになる。発症後、重要なのは生活習慣の改善で進行を遅らせることだ。
【男は大酒飲みに多い】
すい臓が炎症を起こす原因は、飲酒(アルコール性)約67%、原因不明(特発性)約20%、胆石(胆石性)約3%と続くが、男女別でみると男性はアルコール性(約77%)、女性は特発性(約56%)がトップになる。
東京慈恵会医科大学附属病院/消化器・肝臓内科の西野博一教授は「アルコール性慢性すい炎の人の多くに喫煙習慣がある。ニコチンもすい臓を刺激するのでお酒にタバコは非常に悪い」と話す。
年間発症者は約4万5000人(2002年厚労省調査)。男女比は3対1で、男性は50代、女性は60代の発症がピークだ。
【腹痛が消えたら進行】
発症すると多くは食後、数時間後にみぞおち辺りから左上腹部にかけて痛みが出現する(痛みの出ない人もいる)が、それは食物中に含まれている脂肪が小腸の細胞を刺激してホルモンを分泌し、すい臓を刺激するからだ。
ところが、「慢性すい炎が進行していくと、食事をしても痛みの出現がなくなってくる」(西野教授)という。
この段階になると、すい臓の消化酵素の分泌が低下して、下痢や脂肪を含んだ便が出る。インスリンの分泌も低下するので血糖値も上昇する。
西野教授は「とくにアルコール性の人は10−15年以上たつと約7割がすい臓の中に石(すい石)ができ、約5割が“すい性糖尿病”を合併する」と話す。
【特効薬なく飲食制限】
怖いのはそれだけじゃない。長い目でみると、すいがんをはじめ他の部位のがんを合併する危険性が高いのも特徴だ。
治療は、痛みには鎮痛薬、下痢や脂肪便には消化酵素薬、糖尿病にはインスリンの注射などと症状に対する対処療法はあっても、慢性すい炎を完治させる特効薬はない。
生活習慣の改善が最も重要で大原則は、禁酒・禁煙、脂肪食は控える、腹8分目、コーヒーや香辛料などの制限だ。
「大酒家の人が肝硬変と慢性すい炎の両方を発症することは、なぜかほとんどない。肝機能が大丈夫だからと飲み過ぎていたら危険」と西野教授。
酒とタバコの量をもう一度見直してみよう。
(「慢性すい炎」大酒飲みの男性は注意、生活習慣の改善が重要)
慢性膵炎とは、腹痛や背部痛などの臨床症状を呈し、膵臓の内部に不規則な線維化・細胞浸潤・実質の脱落・肉芽組織の形成などの慢性変化が生じ、膵臓の外分泌・内分泌機能の低下をきたす難治性の慢性疾患です。
原因はアルコール性55%、特発性33%、胆道原性6%などとなっています。男性はアルコール性が圧倒的に多く、女性は特発性(原因不明)が多いです。
経過としては、膵機能が比較的保たれ、血中膵酵素上昇を伴う上腹部痛が主症状の代償期と、膵組織が破壊され膵外分泌機能の低下による消化吸収障害や膵内分泌機能低下による糖代謝障害が出現する非代償期に分けられます。
慢性膵炎の症状としては、以下のようなものがあります。
【男は大酒飲みに多い】
すい臓が炎症を起こす原因は、飲酒(アルコール性)約67%、原因不明(特発性)約20%、胆石(胆石性)約3%と続くが、男女別でみると男性はアルコール性(約77%)、女性は特発性(約56%)がトップになる。
東京慈恵会医科大学附属病院/消化器・肝臓内科の西野博一教授は「アルコール性慢性すい炎の人の多くに喫煙習慣がある。ニコチンもすい臓を刺激するのでお酒にタバコは非常に悪い」と話す。
年間発症者は約4万5000人(2002年厚労省調査)。男女比は3対1で、男性は50代、女性は60代の発症がピークだ。
【腹痛が消えたら進行】
発症すると多くは食後、数時間後にみぞおち辺りから左上腹部にかけて痛みが出現する(痛みの出ない人もいる)が、それは食物中に含まれている脂肪が小腸の細胞を刺激してホルモンを分泌し、すい臓を刺激するからだ。
ところが、「慢性すい炎が進行していくと、食事をしても痛みの出現がなくなってくる」(西野教授)という。
この段階になると、すい臓の消化酵素の分泌が低下して、下痢や脂肪を含んだ便が出る。インスリンの分泌も低下するので血糖値も上昇する。
西野教授は「とくにアルコール性の人は10−15年以上たつと約7割がすい臓の中に石(すい石)ができ、約5割が“すい性糖尿病”を合併する」と話す。
【特効薬なく飲食制限】
怖いのはそれだけじゃない。長い目でみると、すいがんをはじめ他の部位のがんを合併する危険性が高いのも特徴だ。
治療は、痛みには鎮痛薬、下痢や脂肪便には消化酵素薬、糖尿病にはインスリンの注射などと症状に対する対処療法はあっても、慢性すい炎を完治させる特効薬はない。
生活習慣の改善が最も重要で大原則は、禁酒・禁煙、脂肪食は控える、腹8分目、コーヒーや香辛料などの制限だ。
「大酒家の人が肝硬変と慢性すい炎の両方を発症することは、なぜかほとんどない。肝機能が大丈夫だからと飲み過ぎていたら危険」と西野教授。
酒とタバコの量をもう一度見直してみよう。
(「慢性すい炎」大酒飲みの男性は注意、生活習慣の改善が重要)
慢性膵炎とは
慢性膵炎とは、腹痛や背部痛などの臨床症状を呈し、膵臓の内部に不規則な線維化・細胞浸潤・実質の脱落・肉芽組織の形成などの慢性変化が生じ、膵臓の外分泌・内分泌機能の低下をきたす難治性の慢性疾患です。
原因はアルコール性55%、特発性33%、胆道原性6%などとなっています。男性はアルコール性が圧倒的に多く、女性は特発性(原因不明)が多いです。
経過としては、膵機能が比較的保たれ、血中膵酵素上昇を伴う上腹部痛が主症状の代償期と、膵組織が破壊され膵外分泌機能の低下による消化吸収障害や膵内分泌機能低下による糖代謝障害が出現する非代償期に分けられます。
慢性膵炎の症状としては、以下のようなものがあります。
アルコール性慢性膵炎の場合、飲酒を始めてから5〜20年経って腹痛で発症することが多いといわれています。上腹部痛は約80%に認められる主要な症状であり、激しい腹痛発作を呈し、急性膵炎と同様の病態をとる急性増悪期と、強い腹痛発作を認めない間欠期に分けられます。
間欠期には持続性の心窩部痛が多く、しばしば背部へ放散する。腹痛は背位で増強し、深い前屈位で軽減する傾向がある。大酒家では、数時間から数日間にわたる腹痛発作が反復する傾向がみられます。
一方、終始、無痛性に経過する無痛性慢性膵炎が10%前後存在し、この場合、糖尿病症状や膵石の存在によって初めて診断されることが多いです。
腹痛以外の自覚症状として、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹部重圧感、体重減少、腹部膨満感が40〜50%の症例で認められます。時に、脾静脈に炎症が及んで血栓を形成し、胃静脈瘤破裂による消化管出血の原因になることもあります。
腹部の圧痛は約60%に観察され、その他、やせ、腹部抵抗、発熱が20〜30%に認められるといわれています。総胆管膵部に狭窄があるものでは、腹痛発作時に膵頭部の炎症性膵腫大によって胆管狭窄が増強し、一過性の黄疸が認められることがあります。上腹部に腫瘤を触知する頻度は10%程度です。日本では欧米に比べ脂肪摂取量が少ないため、肉眼的な脂肪便の頻度は低いといわれています。
診断は、日本膵臓学会 慢性膵炎臨床診断基準などにより診断します。画像診断にてUSやCTで膵石が検出されたり、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)で分枝膵管の不規則な拡張を認めた場合、または膵外分泌機能検査や膵の病理組織学的検査によって確診されます。
慢性膵炎では、病期に応じた治療が必要であり、特に膵炎の原因と病態促進因子の除去が重要です。全経過を通して重要なことは、禁酒を含めた生活指導と食事療法であるといわれています。
まずは、お酒をほどほどに、できれば禁酒をしていただきたいと思われます。そしてなにより、健康診断などの機会がありましたら、その血液検査や超音波検査の結果をしっかりと受け止めていただければ、と思われます。
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膵臓癌と誤診され、貯蓄を使い果たした男性
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間欠期には持続性の心窩部痛が多く、しばしば背部へ放散する。腹痛は背位で増強し、深い前屈位で軽減する傾向がある。大酒家では、数時間から数日間にわたる腹痛発作が反復する傾向がみられます。
一方、終始、無痛性に経過する無痛性慢性膵炎が10%前後存在し、この場合、糖尿病症状や膵石の存在によって初めて診断されることが多いです。
腹痛以外の自覚症状として、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹部重圧感、体重減少、腹部膨満感が40〜50%の症例で認められます。時に、脾静脈に炎症が及んで血栓を形成し、胃静脈瘤破裂による消化管出血の原因になることもあります。
腹部の圧痛は約60%に観察され、その他、やせ、腹部抵抗、発熱が20〜30%に認められるといわれています。総胆管膵部に狭窄があるものでは、腹痛発作時に膵頭部の炎症性膵腫大によって胆管狭窄が増強し、一過性の黄疸が認められることがあります。上腹部に腫瘤を触知する頻度は10%程度です。日本では欧米に比べ脂肪摂取量が少ないため、肉眼的な脂肪便の頻度は低いといわれています。
診断は、日本膵臓学会 慢性膵炎臨床診断基準などにより診断します。画像診断にてUSやCTで膵石が検出されたり、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)で分枝膵管の不規則な拡張を認めた場合、または膵外分泌機能検査や膵の病理組織学的検査によって確診されます。
慢性膵炎では、病期に応じた治療が必要であり、特に膵炎の原因と病態促進因子の除去が重要です。全経過を通して重要なことは、禁酒を含めた生活指導と食事療法であるといわれています。
まずは、お酒をほどほどに、できれば禁酒をしていただきたいと思われます。そしてなにより、健康診断などの機会がありましたら、その血液検査や超音波検査の結果をしっかりと受け止めていただければ、と思われます。
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