手足などが不随意運動をしたり、認知障害などの症状が出る神経難病「ハンチントン病」は、病気の原因タンパク質によって、損傷したDNAを修復する仕組みが働かなくなるのが原因との研究結果を岡澤均東京医科歯科大教授(神経内科学)らが3日付の米科学誌に発表した。

ハンチントン病は、日本では人口10万人当たり約0・5人の患者がいるとされる。この仕組みを回復させることが、ハンチントン病の新たな治療法開発につながる可能性があるという。

ハンチントン病は、遺伝子変異が原因で「変異型ハンチンチン」という異常なタンパク質ができる。岡澤教授らは、タンパク質同士の結合を網羅的に調べる方法で、これが「Ku70」というタンパク質と結合することを見つけた。

Ku70は、ほかの2種類のタンパク質と複合体を作り、2本鎖のDNAが損傷した場合に修復する機能があるが、岡澤教授らは、変異型ハンチンチンがあると複合体を作りにくくなることをマウスの実験で確認した。

複合体を作る前に、Ku70が分解されるなどして少なくなるためとみられ、変異型ハンチンチンがあるマウスでKu70を通常の2倍程度作らせると、生存期間が約30%長くなった。

治療に応用するには、Ku70を作る遺伝子を導入する方法や、変異型ハンチンチンがKu70と結合するのを阻害する化合物の開発などが考えられるという。

岡澤教授は「毒性が低く有効な化合物を探すなど研究を進めたい」と話している。
(ハンチントン病、原因はDNA修復障害 実験で確認)

ハンチントン病とは


ハンチントン病とは、舞踏運動と人格変化・認知症を主症状とする常染色体優性遺伝疾患です。初発症状は手足にみられる舞踏運動であり、不規則な不随意運動を示しますが、一見随意運動様に見える場合もあり、「落ち着きのない癖」と表現されます。不随意運動は、次第に顔面、頸部に及びます。

原因としては、線条体小型細胞の選択的細胞死によるといわれています。第4常染色体に位置するIT15遺伝子での三塩基CAGの異常伸長(>37、CAGリピートと言います)があり、継代的に異常伸長が累積して発症が早まり、重症化するといわれています。

通常、30〜50歳頃舞踏運動が顕在化するといわれており、その前に10年に及ぶ軽度の精神症状・行動異常の時期があるともいわれています。若年発症者はけいれんや筋強剛が主体となります。進行性で、経過は10〜15年程度といわれています。

MRI上、尾状核が萎縮し、側脳室が開大します。診断は遺伝歴と経過、画像で比較的容易ですが、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、神経有棘赤血球症、各種症候性舞踏病、Huntington-like疾患2型などを鑑別する必要があります。

また、スクリーニング検査や脳波では異常がみられません。ポジトロンCT(PET)やSPECTなどの脳血流量や脳代謝の検査では、初期から大脳基底核の機能低下を示します。

このように、ハンチントン病では、常染色体優性遺伝を示し(家族歴あり)、進行性の舞踏運動を主体とする不随意運動と性格変化・集中力低下を主体とする精神症状がみられ、CT・MRIにて尾状核頭部の萎縮を認めれば、本症の可能性が高いといわれています。また、近年では遺伝子診断も可能となっています。

ハンチントン病に対する治療法


ハンチントン病に対する治療法としては、現在のところ以下のようになっております。
現在のところ、本症に対する根本的な治療法はありません。不随意運動や精神症状に対して対症的な薬物治療を行い、栄養や介護などの面からの配慮が重要となります。

不随意運動に対する薬物療法としてドパミン作動系を抑制する薬物(ハロペリドールなどの抗精神病薬)が効果を示すことがあります。精神症状に対する薬物療法としては、不随意運動に対する薬物の増量や抗うつ薬を適宜組み合わせます。

上記のような発見により、根本治療に結びつくかも知れないと期待されます。是非とも、患者さんの懊悩(患者さんは家族の変わりゆく姿を見て、自身の行く末を知っていらっしゃいます)を取り除くことができればと思われます。

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