17日に76歳で死去した作詞家の吉岡治さんの遺体が18日午後2時前、東京都文京区春日のマンションにある事務所に無言の帰宅をした。事務所には川中美幸(54)、五木ひろし(62)ら、作品の提供を受けた歌手が弔問。名曲「天城越え」を歌った石川さゆり(52)は遺体の傍らで泣き通した。また、この日までの病理検査で死因は心筋梗塞(こうそく)と判明した。

石川は午後3時すぎに弔問。前日夜から眠れなかったのか、顔は青白く憔悴(しょうすい)しきっていた。外で待っていた吉岡さんの妻・久江さん(74)を見ると左腕にしがみつき、大粒の涙をこぼした。

それから4時間、吉岡さんのそばを離れることができなかった。午後7時頃に事務所を出た際も「すいません、気持ちが落ち着かなくて…。何も…本当に、言葉が浮かびません。ごめんなさい」と言葉を振り絞るのがやっと。恩師を亡くしたショックの大きさを物語っていた。

関係者によると、石川は17日、高松市での昼夜2公演の間の休憩中に悲報に接した。この時も言葉を失ったというが、夜の部では気丈に振る舞い、18日午前に帰京した。
(石川さゆり号泣…吉岡治さん無言の帰宅)

心筋梗塞とは


心筋梗塞とは、心臓を栄養している冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。日本全体では、約25万人の急性心筋梗塞症の発症が推測されています(その中で、約8万人が死亡しているとされています)。

冠動脈が閉塞する原因としては、冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

日本では心筋梗塞は欧米と比較して大変少なかったですが、食習慣や生活様式の西欧化、社会生活におけるストレスの増加、人口の高齢化などに伴って近年増加しています。増加率は若年者に低く、高齢者で高いという特徴があります。

心筋梗塞の症状


症状としては、狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)を生じます。「痛い」よりも「胸が苦しい」「重い感じがする」など、締め付けられる(絞扼感)を訴えることが多いといわれています。

通常、狭心症では胸痛の持続時間は数分程度でおさまりますが、安静にしていても30分以上胸痛の持続する場合は急性心筋梗塞を疑います(通常30分以上持続する前胸部の強度の胸痛や絞扼感で、恐怖や不安感を伴う)。

大多数は典型的な胸痛・絞扼感を主訴としますが、中には心窩部・背部痛呼吸困難、悪心・冷汗・失神などの非典型的な症状を訴えることもあります。典型的な急性心筋梗塞の胸痛と鑑別を要する疾患には、解離性大動脈瘤、急性心膜炎、肺塞栓が最も重要であり、次に胸膜炎、自然気胸、逆流性食道炎などがあげられます。

悪心・嘔吐などの消化器症状も伴うことがあるため、胆石症、胃・十二指腸潰瘍などとの鑑別が必要になることもあります。高齢者や脳梗塞、糖尿病を有する患者さんでは、無痛性に発症することもあります。その結果、放置してしまうケースもあります。

また、関連痛といって、疾患のある臓器以外の部位に出現する痛みが生じることがあります。具体的には、胃の痛みを中枢へと伝える神経と、心臓の痛みを伝える神経が近い位置にあるため、誤って「胃の痛み・不快感」として伝えられてしまったような状態です(共通の神経で痛覚が脳へ伝達されるために起こると考えられている)。

心筋梗塞の治療


心筋梗塞の治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、まずは対症療法中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理します。通常は、アスピリン内服、酸素吸入、輸液、硝酸薬などを中心に行います。

発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小可能であるといわれています。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)を行う場合や、血栓溶解療法(PTCR)、狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈大動脈バイパス移植術 (CABG) が行われる施設もあります。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は、1977年にGruentzigらにより初めて行われて以来、さまざまな技術上の、あるいは器具における進歩を遂げています。

当初は、バルーンによる拡張術のみであり、経皮的バルーン冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)とよばれていました。ですが、冠動脈ステント留置術(coronary artery stenting)、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)、ロータブレーター、といった新しい器具の発明とそれを用いた治療が普及するにつれ、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)と総称されるようになりました。

経皮的冠動脈形成術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)とは、心臓を栄養する血管である冠動脈の閉塞した箇所にカテーテルを用いて、バルーン(風船)を拡張して狭くなった冠動脈を拡げる手術です。

PTCAは約3分の1の割合で、再狭窄が数か月後に起こるのが欠点の1つとして挙げられていましたが、最近ではステントと呼ばれる小さなメッシュ状の金属チューブを動脈壁に留置することが行われています。

ステントを留置することにより、再狭窄を少なくすることができると考えられます。ステントによって、再狭窄率は15%前後にまで低減することができたと言われています。急性閉塞や再狭窄を抑制する目的で、円筒状の金属ステントを留置する手技が開発され、現在では冠動脈ステント留置術がPCIの主流となっています。

特に、2004年夏から日本に導入された薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、新生内膜増殖を抑制する薬剤をステント表面にコーティングしたステントであり、再狭窄率がきわめて低いため頻用されています。

また、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)は高速回転するカッターにて動脈硬化粥腫を切除する手技であり、入口部や分岐部病変において効果を発揮します。ロータブレーターは先端にダイヤモンドを埋め込んだドリルを高速回転させて血管を拡張するものであり、高度石灰化病変など、ほかのデバイスで拡張できない病変に有効です。

その他、冠状動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)という手術が行われることもあります。これは、冠状動脈の閉塞、狭窄に対して行われる外科的血行再建術です。体循環と冠状動脈の間にバイパスを作り(グラフトと呼ばれる血管を用いる)、心筋への動脈血流を増加させる方法です。

用いられるグラフトには、左右内胸動脈、右胃大網動脈、大伏在静脈、下腹壁動脈などが用いられます。長期開存性において、有茎の動脈グラフトが優れるといわれています。

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