第1話の患者さんは、全身性・進行性の筋力低下をきたした患者さんでした。頭部MRIの矢状断像にて、Chiari(キアリ)奇形1型と診断されました。

Chiari(キアリ)奇形は、脳幹部、小脳、脊髄、脊椎、後頭蓋窩などが尾側に偏位している状態で、短頸、水頭症、小脳症状、眼振などを伴っていることが多いです。I型からIV型まで分類されています。

I型は成人型で、橋、延髄、第4脳室、小脳扁桃などが大後頭孔の中に陥入したもので、MRIで小脳扁桃のくさび状陥入を確認することができます。
 
II型は幼児型で、第4脳室が脊椎管に落ち込み延髄も引き伸ばされて陥入しているものをいいます。二分脊椎spina bifida、髄膜脊髄瘤meningomyelocele,扁平頭蓋底、頸椎体の分離不全であるKlippel-Feil症候群などを合併することが多いです。

IV型は小脳低形成をみるもので、Dandy-Walker(ダンディー-ウォーカー)症候群としてMagendie(マジャンディー)孔やLuschka(ルシュカ)孔が閉塞して水頭症をきたすものと同じです。

MRIの普及により、病態も解明され、早期診断治療が行われるようになりました。I型が最も多く、その発症年齢は30歳前後の成人であるといわれています。

I型の特徴としては、以下のようなものがあります。
Type?の症候は、脳幹症状と小脳症状に脊髄空洞症に起因する脊髄症状が加わり多彩です。

脳幹症状としては、頭痛、頚部痛、顔面の知覚障害、構音障害、嚥下障害、舌萎縮などであり、小脳症状としては眼振、小脳失調が認められます。脊髄症状としては、主に合併する脊髄空洞症による宙吊り型の解離性知覚障害、四肢、体幹の知覚障害、四肢の筋力低下および筋萎縮、歩行障害、側弯症、Charcot関節、排尿障害などです。また、扁平頭蓋、頭蓋底陥入症などの多くの奇形を合併します。

I型における後頚部痛は、努責(いきみ)やくしゃみなどにより誘発もしくは増大されることが特徴です。この点について問診するか、実際に誘発もしくは増大すれば診断価値が高いです。

MRIが最も有用で、診断基準としては1)小脳扁桃先端が大孔より3mm以上下方に突出している、2)下垂した小脳扁桃の先端が楔状になっている、3)大孔周辺のくも膜下腔の狭小化の3つが挙げられます。

ドラマでも指摘されていましたが、頭部MRIでは水平断(横切り)でみるのが一般的で、矢状断(縦切り)は特にみたい病変がないとあまり気にしないことが多いです。今回では、矢状断(縦切り)を行い、診断に結びついています。

成人例(Type?)の外科的治療は、大後頭孔部減圧術(C1後弓切除を含む)による脳幹圧迫除去と、合併する水頭症に対するシャント手術が主体をなします。ドラマでも手術が行われ、快復していました。

【関連記事】
GM〜踊れドクター 第1話のカルテ