まず、入院当初の病歴等を示します。

【患者】24歳女性
【主訴】両側下肢痛
【病歴】平成22年7月頃、スキューバダイビング(素潜り)中に、両側の下肢痛を訴え、溺れて呼吸困難に陥った。人工呼吸にて意識回復みられ、英仁大学付属名峰病院に救急搬送された。3ヶ月で三度、四肢の筋肉痛を訴え、同院救急外来を受診している。4月頃、屋外でスカッシュを行い、手足の痛み、嘔気あり。5月頃、友人とプールで遊んだ後、下肢の痛みと頭痛あり。6月頃、晴天時、屋外で作業中に手と背部痛あり。
【既往歴】上記のように四肢の筋肉痛あり。
【入院時現症】両側の下肢痛、圧痛あり。
【検査所見】
心電図、心エコー、脳波上にて特記すべき事項なし。採血、尿検査にて明らかな異常なし。頭部、胸腹部造影CTにて特記すべき事項なし。尿量:3,000 ml/day

まず、素潜りを行っていたため、潜函病を疑い高酸素療法を施行。結果、症状は軽快したために帰宅。数日後、富士山登山中に上肢と背部痛を訴え、意識消失し英仁大学付属名峰病院に救急搬送されています。血尿(尿性状は赤褐色)みられ、採血結果ではCKの上昇およびクレアチニン値の上昇を認め、急性腎不全を呈していました。横紋筋融解症を発症し、急性腎不全を併発したと考えられました。また、皮下出血やFibの低下、血小板減少、FDP上昇を認めたため、DIC(播種性血管内凝固)を併発していると考えられました。

DIC(播種性血管内凝固)の原因としては、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患などが考えられます。そのため、まずは抗生剤(メロペン)投与行ったが効果みられなかったため、感染症は否定的かと考えられました。さらには全身CTおよび新地グラム施行し、悪性腫瘍の所見認められないことから、自己免疫疾患を疑い、ステロイドパルス療法開始し、症状軽快みられ、血小板数も改善みられています。そのため、退院しています。

ですが、さらなる症状がみられました。
退院後、左側腹部痛を訴え、再び英仁大学付属名峰病院に救急搬送されています。搬送後、血圧低下みられ、ショック状態に陥ってしまいます。腹部CT上、原因は脾梗塞および出血と考えられました。

脾梗塞の起こる原因は、1)血栓 2)抗リン脂質抗体症候群、3)外傷 などが考えられましたが、どれも当てはまりませんでした。ホルター心電図、経食道心エコーにても明らかな異常なしでした。抗リン脂質抗体症候群を疑わせる所見も見られませんでした。

低酸素状態に陥ると、下肢痛などがみられていたことから、後藤英雄医師(東山紀之)は鎌状赤血球症を疑い、彼女の「祖父がブラジル人です」という情報を得た上で、運動負荷後に採血を行い、鎌状赤血球の存在を証明しました。

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