ビタミンB1の欠乏が生じると、末梢神経炎(脚気)、うっ血性心不全(脚気心)などの症状が現れます(ビタミンB1は、体内でピロリン酸エステルになり、補酵素としてα-ケト酸の酸化的脱炭酸反応やケトール形成反応に関与するといわれています)。成人のビタミンB1所要量は、男性1.1mg、女性0.8mgと言われています。

ビタミンB1欠乏による脚気は、かつては日本の国民病であったといわれています。最近では、ビタミンB1含有量の少ないインスタント食品の普及により、散発的に典型的脚気の報告があります。今回のドラマでも、単身赴任でインスタント食品ばかりを食べていた、といったこともあり、生じたと考えられます。

また、高カロリー輸液施行患者さんで、ビタミンB1欠乏のため代謝性アシドーシスによる死亡が多く発生した時期がありました。

自覚症状として、全身倦怠感、動悸、手足のしびれ感、下肢のむくみなどを訴えます。軽症時には多発性末梢神経障害がみられ、四肢末端の知覚鈍麻、痛覚と温覚の低下が起こります。さらに深部知覚、平衡感覚も侵されます。運動障害は知覚障害より遅れて出現し、筋力低下、筋萎縮がみられます。腱反射は初期に亢進し、その後、低下または消失しますが、アキレス腱反射が最も早期から侵されます。

脚気心では、心悸亢進、心窩部痛、呼吸困難が出現し、浮腫が認められます。収縮期駆出性雑音、第2肺動脈音の亢進、拡張期血圧の低下、心拡大などをみます。心電図ではT波の平低化あるいは逆転をみます。衝心脚気は急性心不全をきたす劇症型であり、強い呼吸困難やチアノーゼを認めます。

重度の場合Wernicke(ウェルニッケ)脳症やKorsakoff(コルサコフ)症候群なども認めることもあります。

これらは以下のようなものです。
Wernicke(ウェルニッケ)脳症では、症状として
1)眼の症状:眼球運動障害(水平性が主、垂直性も)。眼振(垂直よりも水平が強い)。縮瞳。対光反射遅。眼瞼下垂。調節障害。視神経炎。網膜出血。
2)運動失調:体幹失調。起立歩行障害。振戦や四肢の失調は軽度〜稀。
3)知能障害:コルサコフ症候群(記銘力障害、見当識障害、作話)。意識障害。
これらがみられます。

さらに、Korsakov症候群とは、記銘力障害、失見当識、作話を特徴とする健忘症候群を指します。新しく経験したことを記憶に留める(記銘)能力が障害され、記憶の欠損を作話で埋める、ということが目立ちます。時には質問に対して的はずれ応答することがあります。また、時間と場所に関する見当識が障害されますが、人物に対する見当識は比較的保たれています。

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