ついに、歴史通りに斬られてしまった坂本龍馬(内野聖陽)。寺田屋の女将・お登勢(室井滋)らに見守られる中、南方仁(大沢たかお)は橘咲(綾瀬はるか)と佐分利祐輔(桐谷健太)の手を借りて、大手術に臨む。

龍馬は額を斬られていた。その創部(傷口)からは大脳が一部露出している、という重篤な状態であった。すぐさま手術に移り、挫滅した大脳を除去し、そして脳浮腫に対しドレーンを留置した。手術自体は順調に進み、切除した頭蓋骨を大腿部に保存しようとしたところ、仁に頭痛が起こる。

ただならぬ状況を察知した佐分利は、手術を代わる、と申し出る。彼の力も借り、あとは龍馬が回復して自発呼吸を取り戻すまで、アンビューバッグで人工呼吸を続けるのみだった。代わる代わるで交代し、一晩明け、ついに龍馬は意識を取り戻す。

ところが、起き上がった途端に肺血栓塞栓症を引き起こし、ショック状態に陥る。心肺蘇生術に仁はとりかかるが、間もなく龍馬は息を引き取った。咲は、兄が龍馬暗殺に荷担していたことを仁に侘び、その姿を見た仁は「自分のせいで、周りの人々が悲しむ結果になってしまっている…」と考えるようになる。

仁友堂に帰った仁は、ペニシリンのニセの製法を教えた、というあらぬ疑いを掛けられ、山田医師らが非難の的となってしまい、囚われていたことを知る。勝海舟や医学所の医師らの助けもあり、三隅医師が裏で糸を引いていたことが明るみになり、仁友堂の疑いは晴れた。

ところが、仁は仁友堂の閉鎖を口にする。「自分のせいで、周りの人々が悲しむ結果になってしまっている…」といった思いや、自身の脳腫瘍のこともあったためである。ところが、山田医師らの説得や、亡き緒方洪庵の言葉を胸に、仁は仁友堂の継続、さらに医学的な知識を広めようと医学所などで講義を行うようになる。

だが、仁の病状はさらに悪化の一途を辿っていた。案ずる咲だったが、自体を打開するためには、仁が未来へ戻らなければならない。その方法も分からぬまま、咲は仁の身を案じていた。



肺血栓塞栓症とは


肺血栓塞栓症は、「エコノミークラス症候群」としても知られるように、長時間、同じ姿勢のまま過ごすと起きやすいことで知られています。新潟県中越地震では、被災地で車中泊をしていた人が多く発症したことが報告され、有名になりました。

一方で、病気や出産で入院したときなどにも起きやすく、手術で病気が治った直後の突然死、といったことが起こる可能性もあります。保険適応がなされるようになってから、術後に「間欠的空気圧迫法」と呼ばれる対策(空気圧で下肢に圧迫するもの)をとる病院が多くなってきたようです。

症状としては頻度の高いものとして、急に発症する呼吸困難(約80%)、多呼吸(約80%)、頻脈(約60%)などがあります。広範な塞栓の場合にみられる場合、不整脈や狭心症様の胸部重苦感、失神などが起こります。肺梗塞・肺水腫を伴う場合は、胸膜炎様胸痛、咳嗽、発熱などが起こることもあります。

男女比は5:4で、あらゆる年齢層に発症する可能性があります。ただ、高齢になるほど多く、60歳以上が患者全体の約50%を占めます。

臨床的には、後者(静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞)である肺塞栓症が大半です。急性肺血栓塞栓症は、その90%以上が下肢あるいは骨盤内の静脈に生じた血栓が原因であり、遊離して肺動脈を閉塞することにより生じます。

その他、空気(外傷、カテーテル)、脂肪(骨折)、羊水(自然分娩、帝王切開)、敗血症性塞栓(薬物濫用、カテーテル感染、中絶・分娩後の骨盤部血栓性静脈炎)などがあります。

肺血栓塞栓症の治療


肺血栓塞栓症の治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、呼吸循環管理や血栓塞栓の溶解除去、塞栓源への対処を中心とした迅速な治療が必要となります。呼吸循環管理としては、低酸素血症に対し十分量の酸素を投与します。また、低血圧に対してはカテコラミンを投与します。

抗凝固療法を早急に開始し、血栓の拡大・新生を防止します。血栓溶解療法〔組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)、ウロキナーゼなど〕や、基礎疾患の治療も必要となります(下肢静脈血栓症については、発症後10日以内であれば外科的に血栓除去術を行う)。

抗凝固療法は出血活動期などの禁忌例を除き、本症を疑った時点より全例に投与します。急性期には即効性のある未分画ヘパリンを使用します。

血栓溶解療法は抗凝固療法単独に比べ、早期血栓溶解効果、血行動態改善効果があるものの、出血性合併症のリスクが増すため、広汎型、亜広汎型が適応とされます。クリアクターを13,750〜27,500単位/kgを約2分間で静注します。

さらに、残存した深部静脈血栓の遊離による再発作が致死的となり得るため、早期に深部静脈血栓の有無を検索し、遊離した際に問題となる残存血栓を認めた場合には下大静脈フィルターを留置することもあります。

カテーテル治療も行われ、これは肺動脈内血栓を破砕、吸引する治療です。広汎型や亜広汎型で出血のリスクが高く薬物治療が行えない症例に適しています。

一方、外科的治療は急性PTEのうち、広汎型であるにもかかわらず血栓溶解療法の禁忌例や内科的治療に反応しない症例が直視下肺動脈血栓摘除術の適応とされます。

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