読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
38歳の嫁のことで相談します。長男4才は前置胎盤で帝王切開にて出産しました。次男2歳は正常妊娠で帝王切開にて出産しました。去年、秋の検診の際、将来、子宮内膜症になる可能性があるといわれ、定期的な検診を受けるように言われました。

検診を受けるだけでなく、内膜症になるのを予防することはできないのでしょうか。若いときは生理痛がひどかったようですが、出産後は以前よりも生理痛は軽くなっているということです。予防する治療法があれば、やって見たいと思いますのでご紹介ください。(68歳女性)

この相談に対して、慶応大学産婦人科教授である吉村泰典先生は次のようにお答えになっています。

子宮内膜症は生殖年齢の女性に好発する女性ホルモン依存性の病気です。主な症状は月経痛で、若い女性では不妊を訴えることがあります。一般に妊娠や分娩を繰り返すと子宮内膜症の症状は改善することが多いと言われています。

子宮内膜症は内診、超音波やMRI(磁気共鳴画像)検査で診断されますが、卵巣に腫瘍がある場合はまれに癌化することがありますので3〜4か月に一度の検診が必要となります。

子宮内膜症とは


子宮内膜症とは、子宮の内腔にある子宮内膜、あるいはその類似組織が、別の場所で生育・増殖する疾患です。子宮内膜とは、子宮の内側にある粘膜組織で、卵子が排出される時期に合わせて成長し、妊娠しなかった場合は、月経時に血液とともに排出されます。

ですが、実は月経の血液は、全てが体の外に排出されているわけでなく、その一部が、卵管を逆流し体内に留まってしまいます。

月経のたびに、子宮以外の場所で子宮内膜がはがれ、炎症の範囲を広げていったと考えられます。多くは骨盤内に発生し、その他、肺などの遠隔臓器などにも発生し、増殖していく可能性があります。

生殖年齢の女性に好発し、骨盤痛や不妊が主だった症状となります。好発臓器の一つである、卵巣に形成されるチョコレート嚢胞、そこから発生する卵巣癌も重要となります。

子宮内膜症の治療方針としては、以下のようなものがあります。

子宮内膜症の治療


2人のお子様がいらっしゃり、もう子供を作る予定がないということであれば、経口避妊薬の服用をお薦めします。服用により月経痛は改善され、月経量も減少し、子宮内膜症の進行も予防することができます。

産婦人科で定期検査を受けていれば、副作用に関して心配される必要はありません。また数年間にわたる長期服用も可能です。その他、月経痛が強い場合にはプロゲスチン製剤であるディナゲストが有効です。

子宮内膜症の治療は、年齢や挙児希望があるか、不妊期間などを考慮して決定します。未婚例では、頭痛への保存的対応が中心となり、非ステロイド系消炎鎮痛薬などが第一選択となります。無効例では、一相性低用量ピルなどが用いられます(根治性は基本的にはありません)。

症状の改善が得られない症例で、子宮の可動性制限や、ダグラス窩硬結がみられる場合には、腹腔鏡下手術による病巣の切除・焼灼あるいはGnRHアゴニストやジエノゲストによる内分泌療法を選択します。挙児希望があり、子宮内膜症が不妊症の主因と考えられる症例では、腹腔鏡下手術を選択されることが望まれます。

チョコレート嚢胞を合併しているケースでは、癌化の頻度が年齢が進み、嚢胞のサイズが大きくなるとともに上昇することがしられており、妊娠中にチョコレート嚢胞を指摘され、分娩に至った場合や、年齢的に不妊治療を終了した40歳以降の場合には、CT検査などを参考に手術を考慮します。

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