読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、西陣病院整形外科医長である大宝英悟先生は次のようにお答えになっています。
変形性膝関節症とは、関節軟骨を中心とした膝関節の構成体が徐々に退行性変性を来たし、疼痛、腫脹、変形などが生じる疾患です。簡単にいえば、膝関節の2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。
60歳以上(平均71.1歳)の住民調査(受診率70%で対象319例638膝)では、25.5%にX線所見ならびに症状を認め、X線所見に変形性変化を認めるが症状のない変形性膝関節症予備群を加えると50%を超えるといわれています。
原因としてはまず肥満が原因としてあげられます。体重が重いと、どうしても負荷が大きくなってしまうわけです。軟骨は加齢とともに減っていくので、年齢も要因となります。
症状としては、初期は膝関節の疼痛、特に歩行時や歩行後の疼痛が主症状となりますが、通常は安静により軽快します。また、内側型のものが圧倒的に多いため、疼痛も膝関節の内側部に訴えることが多いです。一方、主病変が膝蓋大腿関節にある場合には、階段の昇降や立ち上がり動作など屈曲位で荷重する際に疼痛を訴えることが多いです。
病期が進むと疼痛も増悪し、炎症症状が強くなると関節水症も出現してきます。さらに進行して骨や軟骨の変形が進むと、内反変形(O脚)、可動域制限などの形態変化も明らかになります。
診断は、こうした臨床症状とX線検査が参考になります。単純X線写真は、正面像、側面像、膝蓋骨の軸射像の3枚に加え、立位正面像(または立位屈曲45度の正面像)を撮影します。これにより、関節裂隙の狭小化(軟骨の摩耗を示す)の所見が確かなものとなります。
内外側の大腿脛骨関節の狭小化が出現する関節リウマチと異なり、内側型では内側の、外側型では外側の大腿脛骨関節の狭小化が特徴的です。軟骨下骨の硬化や骨棘の形成もみられます。
CTは、複雑な骨変形を伴う場合の病態の把握、手術療法を行う場合の骨切りなどのプランニングに用いられます。MRIは、半月板や靱帯など軟部組織の病態の把握、滑膜炎の程度の判定などに用いられます。
変形性膝関節症の治療としては、以下のようなものがあります。
まず、保存的な治療としては、肥満がある場合は、減量を指示します。
大腿四頭筋訓練も有用であるといわれています。これは、仰臥位で膝伸展のまま10〜40度程度下肢を上げ、5秒ほど静止して下ろします。これを30〜50回繰り返す運動です。
ほかにも、股関節外転筋訓練といって、側臥位で下肢を上げ下げする訓練が、症状を改善させることが証明されています。
内側型関節症では、外側楔状足底挿板(外側が8 mm程度高い靴の中敷)を処方し、下肢荷重軸の移動をはかります。薬物療法としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方します。これは疼痛の軽減だけでなく、関節水症を減少させる効果も期待できます。
関節腔内注射では、ヒアルロン酸ナトリウムやステロイド薬を用い、膝蓋骨の近位で外側から穿刺します。関節水症が強ければ排液の後、薬剤を投与します。
手術療法としては、上記のように関節鏡や骨切り、人工関節置換術などがあります。関節鏡(鏡視下デブリードマン)は、比較的早期の症例や半月症状が主体であるとき考慮します。関節鏡視下に変性半月や骨棘を切除し、関節の洗浄を行います。
【関連記事】
変形性膝関節症の痛みでお困りの方に−その予防や治療
変形性膝関節症に対する手術3種
変形性膝関節症 「我慢せずに、すぐに受診を」
O脚と診断されました。治療法はありますか。どんな症状があれば治療を受けた方がよいのでしょうか。(60歳代女性)
この相談に対して、西陣病院整形外科医長である大宝英悟先生は次のようにお答えになっています。
O脚とは一般的に、「気をつけ」の姿勢をした際に両膝が離れ、両脚のすき間がまるでアルファベットの「O」のように見える状態のことを指します。見た目だけで健康に問題がない場合と、膝の軟骨がすり減り、痛みが出る「変形性膝関節症」という病気の場合の二通りがありますが、ここでは、病気の場合についてご説明します。
変形性膝関節症の患者は中高年の女性を中心に、国内で1000万人以上いるとされます。中でも、膝の軟骨の内側(足の親指側)がすり減るタイプが多く、そうなると膝が外側に向かって弓なりに曲がり、徐々にO脚の変形が進みます。
O脚になると、膝で体重をバランス良く支えられなくなり、内側ばかりに体重がかかり、痛みを覚えます。放っておくと、内側の軟骨がさらにすり減り、症状が進むという悪循環に陥りがちです。
変形性膝関節症とは、関節軟骨を中心とした膝関節の構成体が徐々に退行性変性を来たし、疼痛、腫脹、変形などが生じる疾患です。簡単にいえば、膝関節の2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。
60歳以上(平均71.1歳)の住民調査(受診率70%で対象319例638膝)では、25.5%にX線所見ならびに症状を認め、X線所見に変形性変化を認めるが症状のない変形性膝関節症予備群を加えると50%を超えるといわれています。
原因としてはまず肥満が原因としてあげられます。体重が重いと、どうしても負荷が大きくなってしまうわけです。軟骨は加齢とともに減っていくので、年齢も要因となります。
症状としては、初期は膝関節の疼痛、特に歩行時や歩行後の疼痛が主症状となりますが、通常は安静により軽快します。また、内側型のものが圧倒的に多いため、疼痛も膝関節の内側部に訴えることが多いです。一方、主病変が膝蓋大腿関節にある場合には、階段の昇降や立ち上がり動作など屈曲位で荷重する際に疼痛を訴えることが多いです。
病期が進むと疼痛も増悪し、炎症症状が強くなると関節水症も出現してきます。さらに進行して骨や軟骨の変形が進むと、内反変形(O脚)、可動域制限などの形態変化も明らかになります。
診断は、こうした臨床症状とX線検査が参考になります。単純X線写真は、正面像、側面像、膝蓋骨の軸射像の3枚に加え、立位正面像(または立位屈曲45度の正面像)を撮影します。これにより、関節裂隙の狭小化(軟骨の摩耗を示す)の所見が確かなものとなります。
内外側の大腿脛骨関節の狭小化が出現する関節リウマチと異なり、内側型では内側の、外側型では外側の大腿脛骨関節の狭小化が特徴的です。軟骨下骨の硬化や骨棘の形成もみられます。
CTは、複雑な骨変形を伴う場合の病態の把握、手術療法を行う場合の骨切りなどのプランニングに用いられます。MRIは、半月板や靱帯など軟部組織の病態の把握、滑膜炎の程度の判定などに用いられます。
変形性膝関節症の治療としては、以下のようなものがあります。
症状が軽いうちに矯正することがとても大切です。体重が重いと膝に大きな負担がかかるので、バランスの良い食事や運動などで、適正な体重を保ちましょう。小指側をやや高くした中敷き(足底板)を靴の底に入れたり、つえを使ったりして、膝への負担を和らげるのも効果的です。
手術をする方法もあります。膝関節の少し下にあるすねの骨の内側を切り、その部分を人工の骨に置き換えてO脚を矯正します。手術後は膝を曲げるなどのリハビリを行います。
質問者のO脚が見た目だけで症状がなければ特に治療は必要ありませんが、痛みがあれば整形外科を受診し、主治医によく相談なさるとよいでしょう。
まず、保存的な治療としては、肥満がある場合は、減量を指示します。
大腿四頭筋訓練も有用であるといわれています。これは、仰臥位で膝伸展のまま10〜40度程度下肢を上げ、5秒ほど静止して下ろします。これを30〜50回繰り返す運動です。
ほかにも、股関節外転筋訓練といって、側臥位で下肢を上げ下げする訓練が、症状を改善させることが証明されています。
内側型関節症では、外側楔状足底挿板(外側が8 mm程度高い靴の中敷)を処方し、下肢荷重軸の移動をはかります。薬物療法としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方します。これは疼痛の軽減だけでなく、関節水症を減少させる効果も期待できます。
関節腔内注射では、ヒアルロン酸ナトリウムやステロイド薬を用い、膝蓋骨の近位で外側から穿刺します。関節水症が強ければ排液の後、薬剤を投与します。
手術療法としては、上記のように関節鏡や骨切り、人工関節置換術などがあります。関節鏡(鏡視下デブリードマン)は、比較的早期の症例や半月症状が主体であるとき考慮します。関節鏡視下に変性半月や骨棘を切除し、関節の洗浄を行います。
【関連記事】
変形性膝関節症の痛みでお困りの方に−その予防や治療
変形性膝関節症に対する手術3種
変形性膝関節症 「我慢せずに、すぐに受診を」