認知症の中で最も多いアルツハイマー病患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、青魚などに多く含まれる「ドコサヘキサエン酸(DHA)」が同病の発症予防に役立つ可能性があることを確認したと、京都大iPS細胞研究所の井上治久准教授らのチームが発表した。
イワシなどの青魚を食事でとることとの関係はこの研究では不明だが、新薬の開発などにつながる成果。22日付の米科学誌セル・ステムセルに掲載される。
アルツハイマー病患者の脳内では、Aβ(アミロイドベータ)と呼ばれるたんぱく質の「ゴミ」が過剰に蓄積することで、「細胞内ストレス」という有害な現象が起きて神経細胞が死滅し、記憶障害などを引き起こすことが知られている。
研究チームは、50代〜70代の男女の患者計4人の皮膚からiPS細胞を作製。それを神経細胞に変化させ、Aβが細胞内外に過剰に蓄積した病態を再現した。このうち、細胞内にAβが蓄積した2人の細胞に低濃度のDHAを投与した場合と、投与しなかった場合とで、2週間後に死滅した細胞の割合をそれぞれ比較。その結果、DHA投与の場合、細胞死の割合は15%で、投与しなかった場合は2倍以上の32%だった。
(DHAがアルツハイマー抑制…京大iPS研究所)

アルツハイマー病とは、初老期〜老年期に認知症を生ずる代表的な変性疾患です。簡単に言ってしまえば、何らかの原因によって大脳皮質の神経細胞が少しずつ死滅し、脳が萎縮、記憶や意欲など生きるために必要な能力が徐々に失われていく疾患です。
記銘力障害、失見当識で発症し、中期には失認・失行のため、日常生活に支障をきたします。ほかにも、物盗られ妄想や徘徊、不眠などの周辺症状のため、介護負担が大きいことも問題となります。
日本では、65歳以上での認知症の約半数がアルツハイマー型痴呆とされています。一般には65歳以上の高齢者に多い病気ですが、40歳から50歳という働き盛りで発症してしまうこともあります。これは「若年性アルツハイマー病」と呼ばれ、通常より進行が早いのが特徴です。
神経病理学的特徴としては、老人斑、神経原線維変化、神経細胞脱落などがあります。上記にもありますが、沈着するβ蛋白が発症に大きく関わっているといわれています。アミロイド前駆体蛋白(APP)から切り出されたβ蛋白が、神経細胞障害を起こし、神経細胞死や神経原線維変化が生ずる、と考えられています。
ほとんどが孤発性(遺伝性がない)のアルツハイマー病ですが、家族性アルツハイマー病では、APP遺伝子やプレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子の異常などが認められます。
症状としては、以下のような3期に分けられます。
治療としては、以下の様なものがあります。

治療としては、認知機能の障害を改善する薬物としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸拮抗薬があります。現在、日本で治療薬として認可されているものは前者の塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)があります。
なお、リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)があり、分子量が小さいため経皮吸収が可能であり、飲み薬ではなく貼り薬として使用することが出来るという特徴の薬が登場しています。このため比較的消化管への副作用が少なく、アセチルコリンエステラーゼだけでなくブチリルコリンエステラーゼも阻害するため、従来のコリンエステラーゼ阻害薬よりも効果が高いとの報告があります。
周辺症状の治療としては、幻覚妄想やせん妄、徘徊に対しては抗精神病薬(リスパダールなど)、抑うつに対しては、抗コリン作用の少ない抗うつ薬(トレドミン、パキシルなど)、不眠に対しては、マイスリーなどの半減期の短い睡眠薬などを用います。
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症例 アルツハイマー病−予防と生活習慣の関係
DHAが鬱病予防に有効かとの報告
イワシなどの青魚を食事でとることとの関係はこの研究では不明だが、新薬の開発などにつながる成果。22日付の米科学誌セル・ステムセルに掲載される。
アルツハイマー病患者の脳内では、Aβ(アミロイドベータ)と呼ばれるたんぱく質の「ゴミ」が過剰に蓄積することで、「細胞内ストレス」という有害な現象が起きて神経細胞が死滅し、記憶障害などを引き起こすことが知られている。
研究チームは、50代〜70代の男女の患者計4人の皮膚からiPS細胞を作製。それを神経細胞に変化させ、Aβが細胞内外に過剰に蓄積した病態を再現した。このうち、細胞内にAβが蓄積した2人の細胞に低濃度のDHAを投与した場合と、投与しなかった場合とで、2週間後に死滅した細胞の割合をそれぞれ比較。その結果、DHA投与の場合、細胞死の割合は15%で、投与しなかった場合は2倍以上の32%だった。
(DHAがアルツハイマー抑制…京大iPS研究所)
アルツハイマー病

アルツハイマー病とは、初老期〜老年期に認知症を生ずる代表的な変性疾患です。簡単に言ってしまえば、何らかの原因によって大脳皮質の神経細胞が少しずつ死滅し、脳が萎縮、記憶や意欲など生きるために必要な能力が徐々に失われていく疾患です。
記銘力障害、失見当識で発症し、中期には失認・失行のため、日常生活に支障をきたします。ほかにも、物盗られ妄想や徘徊、不眠などの周辺症状のため、介護負担が大きいことも問題となります。
日本では、65歳以上での認知症の約半数がアルツハイマー型痴呆とされています。一般には65歳以上の高齢者に多い病気ですが、40歳から50歳という働き盛りで発症してしまうこともあります。これは「若年性アルツハイマー病」と呼ばれ、通常より進行が早いのが特徴です。
神経病理学的特徴としては、老人斑、神経原線維変化、神経細胞脱落などがあります。上記にもありますが、沈着するβ蛋白が発症に大きく関わっているといわれています。アミロイド前駆体蛋白(APP)から切り出されたβ蛋白が、神経細胞障害を起こし、神経細胞死や神経原線維変化が生ずる、と考えられています。
ほとんどが孤発性(遺伝性がない)のアルツハイマー病ですが、家族性アルツハイマー病では、APP遺伝子やプレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子の異常などが認められます。
症状としては、以下のような3期に分けられます。
・第1期(初期):進行性の記憶障害、失見当識、失語・失行・失認、視空間失見当がみられ、被害妄想、心気-抑うつ状態、興奮、徘徊などを伴うことがある。
・第2期(中期):中等度から高度痴呆の状態。言語了解・表現能力の障害が高度となり、ゲルストマン症候群、着衣失行・構成失行、空間失見当などがみられる。
・第3期(末期):精神機能は高度荒廃状態となる。言語間代(言葉の終わりの部分,または中間の音節部を痙攣様に何回もくり返すような発語障害)、小刻み歩行、パーキンソン様姿勢異常、痙攣発作などが出現する。
治療としては、以下の様なものがあります。
アルツハイマー病の治療

治療としては、認知機能の障害を改善する薬物としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸拮抗薬があります。現在、日本で治療薬として認可されているものは前者の塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)があります。
なお、リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)があり、分子量が小さいため経皮吸収が可能であり、飲み薬ではなく貼り薬として使用することが出来るという特徴の薬が登場しています。このため比較的消化管への副作用が少なく、アセチルコリンエステラーゼだけでなくブチリルコリンエステラーゼも阻害するため、従来のコリンエステラーゼ阻害薬よりも効果が高いとの報告があります。
周辺症状の治療としては、幻覚妄想やせん妄、徘徊に対しては抗精神病薬(リスパダールなど)、抑うつに対しては、抗コリン作用の少ない抗うつ薬(トレドミン、パキシルなど)、不眠に対しては、マイスリーなどの半減期の短い睡眠薬などを用います。
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DHAが鬱病予防に有効かとの報告