やけどのように皮膚が赤く腫れて水ぶくれができ、痛みやかゆみを伴う「線状皮膚炎」が、梅雨入り以降、鹿児島県内で増え始めている。俗名「ヤケド虫」という昆虫の体液によって起こる皮膚炎。9月ごろまで多く見られ、医療機関は「症状が出たらすぐに皮膚科受診を」と呼び掛けている。
 
ヤケド虫は、コウチュウ目ハネカクシ科のアオバアリガタハネカクシで、両先が黒く、腹部が藍色、残りはオレンジ色の体長約7ミリ。田や川岸、池など湿気がある場所に生息し、明かりを求めて飛ぶ。鹿児島大農学部害虫学研究室の津田勝男教授(55)によると、「農業面では、害虫を食べる益虫として役割を果たすことがある」という。
 
霧島市内では1日10人の患者が受診する病院もある。虫が人に付いただけでは影響はないが、つぶしたり払ったりすると、体液中のペデリンという毒で約10時間後に発症する。農作業中や寝ているときなどに被害に遭い、腕や首、顔などが線状に赤く腫れる。治療はステロイド軟こうの塗布などで、一般的には完治まで5〜10日かかる。
 
霧島市国分の浜田医院では1日4、5人が受診し、例年より多いという。同医院理事長で日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の浜田洋さん(49)は「皮膚の汁をさわると人にもうつる。虫を払ったら、まずは水で洗い流してほしい」と注意を促している。
(「ヤケド虫」に用心 鹿児島県内で増加中)

アオバアリガタハネカクシ(ヤケド虫)とは


アオバアリガタハネカクシは、体長 7 mm程度で、北海道〜南西諸島まで広く生息する虫です。成虫は水田、池・沼の周辺、川岸などの湿った地表に棲み、昼間は草むらや石の下にもいます。夏には灯火にも飛んでくるそうです。

この虫の体液には毒があり、ペデリン(Pederin)と呼ばれています。このペデリンが皮膚に付着すると、炎症を起こし、線状皮膚炎を引き起こします。虫が皮膚にとまった際、叩いたり潰したりすると体液が皮膚に付き、その体液中のペデリンで線状皮膚炎となるわけです。

アオバアリガタハネカクシ(ヤケド虫)による線状皮膚炎


症状や治療としては、以下の様なものがあります。
症状としては、1〜2日で体液が付いた部分に線状に発赤や発疹(ブツブツ)が生じ、数日で膿を生じたあと、爛れ(ただれ)てきます。掻痒感(かゆみ)はなく、ヒリヒリした痛みを伴います。2〜3週間で治りますが、色素沈着を残すことがあります。

治療としては、ステロイド外用薬を使用します。皮膚が爛れた後は、抗菌薬配合の外用薬を塗布します。皮膚にこの虫が止まった際には、を潰さないことです。そっと逃がしましょう。体液が付いた場合は、すぐに流水で洗い流しましょう。

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