京都府立医科大学の元教授が関わった高血圧治療薬の臨床研究に関する問題で、論文のデータが改ざんされていたことが大学側の調査で分かった。
この問題は、京都府立医大の松原弘明元教授が関わった論文で改ざんやねつ造が見つかったとされるもので、大学は11日夜、調査結果を発表した。
製薬会社「ノバルティスファーマ」の高血圧治療薬「ディオバン」の効果を調べた研究について、脳卒中や狭心症のリスクを減らす効果があるようにデータが改ざんされていたという。大学は、「論文の結論は誤りだった」とした。
一方で、研究に関わった製薬会社の元従業員からは退職を理由に話を聞くことができず、誰が改ざんを行ったかなどは「分からなかった」と結論づけている。
この論文を広告に扱った「ディオバン」は、去年、1000億円以上を売り上げ、国内の医薬品でトップだったという。
(高血圧治療薬・ディオバン、データを改ざん)
ディオバン(一般名:バルサルタン)とは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AII拮抗薬、ARB、AIIAなどと表記されます)であり、血圧を下げる作用のある降圧薬の1つです。
昇圧物質である、アンジオテンシンII(以下「AII」)と拮抗し、AIIがAII受容体に結合することをブロックすることにより血圧が下がります。
他にも、2型糖尿病性腎症に対し、ニューロタン(一般名:ロサルタン)、心不全(ACE阻害薬不忍容例)に対してブロプレス(一般名:カンデサルタンシレキセチル)が使用されることがあります。
ディオバンの発売元である製薬会社・ノバルティス ファーマにて、公式見解が掲載されています。
京都府立医科大学によるバルサルタン医師主導臨床研究に係る 調査報告発表に対するノバルティス ファーマの見解によると、「恣意的なデータの操作があったとは確認できない」とあり、データの誤り(HPでは、"データ間の相違"と記載されています)は
にあったと記載されています。
上記の「心血管複合イベント」とは、狭心症や心筋梗塞などで、このデータが異なった理由としては「カルテと解析用のデータに齟齬がある」とのことでした。カルテを記載した医師の見解と、「イベントが起こったかどうか」を判定する試験の研究者での見解が異なっているため、とのことです。
一方、血圧のデータに関しては、「カルテと解析用データは概ね一致しているが、解析用データとWeb収集データとで一部の血圧値に相違があった」とあり、差異が生じた理由として、「Web収集データに欠測値(データが未入力)があった場合に、カルテに遡って血圧値を確認し、解析用データに反映したため」とある。
つまりは、ノバルティスファーマの見解としては、「恣意的・意図的に改ざんしたどうかは分からない。実データと取りまとめた解析データが異なることは、こうした試験ではよくあること」と言っているようです。
大学側の発表も「誰が改ざんを行ったかなどは不明」とのことであり、真実は藪の中…といったことになってしまっているようです。
ちなみに、撤回された論文は未だに読めます。
Effects of valsartan on morbidity and mortality in uncontrolled hypertensive patients with high cardiovascular risks: KYOTO HEART Study
興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。大きくRetracted(撤回済み)と書かれてますが。
ディオバンを内服している方にとっては、気が気ではないでしょうが、完全に薬効が無い、ということではないでしょう。たしかにダマされたと感じ、お怒りかもしれませんが、ディオバンで上手く血圧コントロールされている方は、継続しても問題ないと思われます。
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生活の中の医学
この問題は、京都府立医大の松原弘明元教授が関わった論文で改ざんやねつ造が見つかったとされるもので、大学は11日夜、調査結果を発表した。
製薬会社「ノバルティスファーマ」の高血圧治療薬「ディオバン」の効果を調べた研究について、脳卒中や狭心症のリスクを減らす効果があるようにデータが改ざんされていたという。大学は、「論文の結論は誤りだった」とした。
一方で、研究に関わった製薬会社の元従業員からは退職を理由に話を聞くことができず、誰が改ざんを行ったかなどは「分からなかった」と結論づけている。
この論文を広告に扱った「ディオバン」は、去年、1000億円以上を売り上げ、国内の医薬品でトップだったという。
(高血圧治療薬・ディオバン、データを改ざん)
ディオバン(一般名:バルサルタン)とは
ディオバン(一般名:バルサルタン)とは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AII拮抗薬、ARB、AIIAなどと表記されます)であり、血圧を下げる作用のある降圧薬の1つです。
昇圧物質である、アンジオテンシンII(以下「AII」)と拮抗し、AIIがAII受容体に結合することをブロックすることにより血圧が下がります。
他にも、2型糖尿病性腎症に対し、ニューロタン(一般名:ロサルタン)、心不全(ACE阻害薬不忍容例)に対してブロプレス(一般名:カンデサルタンシレキセチル)が使用されることがあります。
ディオバン(一般名:バルサルタン)にまつわる論文捏造問題とは
ディオバンの発売元である製薬会社・ノバルティス ファーマにて、公式見解が掲載されています。
京都府立医科大学によるバルサルタン医師主導臨床研究に係る 調査報告発表に対するノバルティス ファーマの見解によると、「恣意的なデータの操作があったとは確認できない」とあり、データの誤り(HPでは、"データ間の相違"と記載されています)は
・心血管複合イベント発生数
・血圧
にあったと記載されています。
上記の「心血管複合イベント」とは、狭心症や心筋梗塞などで、このデータが異なった理由としては「カルテと解析用のデータに齟齬がある」とのことでした。カルテを記載した医師の見解と、「イベントが起こったかどうか」を判定する試験の研究者での見解が異なっているため、とのことです。
一方、血圧のデータに関しては、「カルテと解析用データは概ね一致しているが、解析用データとWeb収集データとで一部の血圧値に相違があった」とあり、差異が生じた理由として、「Web収集データに欠測値(データが未入力)があった場合に、カルテに遡って血圧値を確認し、解析用データに反映したため」とある。
つまりは、ノバルティスファーマの見解としては、「恣意的・意図的に改ざんしたどうかは分からない。実データと取りまとめた解析データが異なることは、こうした試験ではよくあること」と言っているようです。
大学側の発表も「誰が改ざんを行ったかなどは不明」とのことであり、真実は藪の中…といったことになってしまっているようです。
ちなみに、撤回された論文は未だに読めます。
Effects of valsartan on morbidity and mortality in uncontrolled hypertensive patients with high cardiovascular risks: KYOTO HEART Study
興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。大きくRetracted(撤回済み)と書かれてますが。
ディオバンを内服している方にとっては、気が気ではないでしょうが、完全に薬効が無い、ということではないでしょう。たしかにダマされたと感じ、お怒りかもしれませんが、ディオバンで上手く血圧コントロールされている方は、継続しても問題ないと思われます。
【関連記事】
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