妊婦の採血だけで胎児に三つの染色体の病気がある可能性が、高い精度でわかる新型出生前診断について、今年4月の導入から6月末までの3か月間で、全国で約1500人の妊婦が受けていたことがわかった。受精卵診断と出生前診断―その導入をめぐる争いの現代史

診断を行う医師らによる共同研究組織「NIPTコンソーシアム」が15日、横浜市内で開いた会議で報告した。
新型検査は現在、日本医学会が認定した国内23の病院で行われている。

同研究組織は当初の予定として、臨床研究の調査・症例規模を約1000例としていたが、導入から3か月間でその1・5倍の検査が行われたことになる。ハイペースで検査が行われた背景には、高齢妊婦を中心に検査の希望者が多いことがある。臨床研究の開始後、問い合わせが相次ぎ、検査の予約も取りづらい状況が続いている。

同研究組織は遺伝カウンセリングについて、妊婦が検査結果の意味や対象となる病気の説明をどれだけ理解したかなど、その効果を検証し、論文としてまとめる予定だ。

また、検査の結果、染色体の病気が疑われる「陽性」と判定された数は、導入1か月で9人だったが、3か月間での陽性判定数など、具体的な検査結果については近く、日本産科婦人科学会(日産婦)に報告する。
(新型出生前診断1500人、研究予定の1・5倍)

出生前診断とは


出生前診断とは、胎児の異常の有無の判定を目的として、妊娠中に実施する検査のことです。

出生前診断の目的としては、1) 妊娠の診断(胎児が存在しているか、生存しているかの判断)、2) 胎児の位置(胎位)や向き(胎向)、あるいは胎児環境が危険なものでないか(たとえば前置胎盤や常位胎盤早期剥離など)の評価、3) 胎児の状態評価、4) 胎児に先天異常や遺伝疾患を含めた何らかの異常がないかの評価…などです。

具体的な方法としては、超音波検査、胎児検体の解析です。胎児検体の解析は、羊水検査から始まり、羊水中にわずかに浮遊する胎児由来細胞(多くは胎児皮膚からの線維芽細胞)を集め培養することにより、胎児の染色体解析を初め、酵素活性などを測定できるようになりました。その後、絨毛生検、胎児採血、組織生検といった検査もできるようになりました。

新型出生前診断とは


新型出生前診断とは、以下のようなものです。
新型出生前診断は、妊婦から採血しその血液中の遺伝子を解析することにより,胎児の染色体や遺伝子を調べる非侵襲的検査です。無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT),あるいは母体血細胞フリー胎児遺伝子検査(maternal blood cell-free fetal nucleic acid [cffNA] test)、MPS法(massively parallel genomic sequencing method)などとも呼ばれます。

母体血中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、胎児性別診断、RhD陰性妊婦での胎児のRhD血液型診断、胎児の単一遺伝子病や染色体異常の診断、妊娠高血圧症候群の発症予知・胎盤機能評価の評価などが可能になると考えられています。

新型診断が対象にしているのは、13(13トリソミー;パトウ症候群)、18(18トリソミー;エドワーズ症候群)、21(ダウン症)番染色体の数の異常です。一方、海外ではこれ以外の染色体を調べられる検査も登場しています。