夏場に流行し、手や足、口などに発疹ができる「手足口病」の患者が、東京都内で小さな子どもを中心に急激に増え、この時期としては過去10年で最も多くなっています。東京都はこまめに手を洗うなど予防に努めてほしいと注意を呼びかけています。

手足口病は、主に小さな子どもがかかるウイルス性の感染症で、手や足、それに口の中などに発疹ができ、まれに髄膜炎や脳炎を起こして重症化することがあります。

東京都によりますと、今月に入ってから患者が急激に増え、今月14日までの1週間に報告された患者数は1つの医療機関当たり10.97人で、この時期としては、過去10年で最も多くなっています。

患者のほとんどは6歳以下の子どもで、このうち3分の2は2歳以下だということです。手足口病は、患者のくしゃみなどの飛まつやウイルスがついた手などを通じて感染するため、手洗いを徹底し、おむつの取り扱いなどに注意することが大切です。

東京都感染症情報センターの杉下由行課長は「1週間で患者の報告数がほぼ倍に増え、今後、さらに増えることが予想される。まれに重症化することもあるので、タオルの共用を避け、こまめに手を洗うなど予防に努めてほしい」と話しています。
(手足口病の患者 都内で急増)

手足口病とは


手足口病は、エンテロウイルス属であるコクサッキーウイルスA10、A16やエンテロウイルス71型などに感染し、口腔内、手掌足底に水疱性発疹をつくる疾患です。ほかにもコクサッキーA5、コクサッキーA9、コクサッキーB1、コクサッキーB3などが原因として報告されていますが、コクサッキーA16、エンテロウィルス71がほとんどです。

主に夏季に流行し、好発年齢は4歳以下です。不顕性感染(特に症状が現れない)に終わることも多く、ほとんどの成人は感染していると考えられます。飛沫または経口感染します。

症状としては、4〜6日の潜伏期の後、発熱や口内痛、食欲低下をきたします。手足では手背、指間、足背、趾間、手掌や足底にも皮疹が出現することが特徴的です。顔面では両頬部、肘・膝・臀部にも同様の皮疹がみられます。数日〜1週間で痂皮化(かさぶたになる)します。

口腔粘膜には、紅暈を伴った浅い潰瘍がみられます。口内では口蓋、口腔粘膜、舌には小水疱、びらんを生じ、数日で治ります。口内疹は疼みが強いため、お子さんでは食欲不振になることもあります。

通常は全身症状はなく、あっても元気がなかったり、微熱があったりする程度ですが、まれに急に頭痛、嘔吐、高熱、痙攣、意識消失などの髄膜炎症状を呈したりすることもあります。また、不整脈・呼吸困難などの心臓循環器症状を呈する場合もあります。

合併症として、無菌性髄膜炎を伴うことがありますが、後遺症もなく予後は良好です。しかし、まれに脳炎を合併することがあり、特に最近ではマレーシア、台湾でエンテロウイルス71による手足口病が流行した際、脳炎を合併し死亡した症例が多く報告されています。

一般にエンテロウイルス71による手足口病は、コクサッキーA16をはじめとしたその他のエンテロウイルス属による場合に比べ、より高率に重篤な中枢神経系合併症を起こすといわれています。

診断は、手足に生じる特徴的な皮疹と、口腔内潰瘍よりできます。便、咽頭ぬぐい液、水疱内容よりウイルスの分離またはウイルス抗原をFA法(蛍光抗体法)にて検出できます。ペア血清による血中抗体価の上昇もみられます。

手足口病の治療


治療としては、抗ウイルス薬など特異的なものはないため、発熱に対する解熱薬の投与や、口腔内の疼痛のため経口摂取が妨げられるような場合には、輸液をするなど対症的な治療のみとなります(口腔内の痛みに対し、刺激の少ないものを摂取させることが大切)。

お子さんの場合、出席停止期間に関しては、発疹が消失し全身状態が改善すれば登校可能となります。

成人以降でも、手足口病になることはあります。一般的には1〜2週で治癒し予後はよい疾患(ただ発症後、数週間は感染力をもつ)です。しっかりと休んでいただければ、と思われます。