江蘇省南京市内の江蘇省人民医院(病院)で最近になり、「食道が爆発」して搬送された男性が、緊急手術でようやく一命をとりとめたことが分かった。男性は酒が飲めない体質だったが、友人と会食した際に「馬鹿にされる」のがいやでビールの小瓶2本を「一気飲み」し、嘔吐を我慢していたところ、腹部に激痛を感じて病院に運ばれたという。中国の各メディアが報じた。これぞ本物 氷のビアジョッキ

緊急手術を受けたのは30代男性の史威さん(仮名)。酒が飲めない体質だが友人らと会食した際、居合わせた皆に「あれやこれや」と理屈をつけられ、飲むように勧められた。意を決した史さんは300ミリリットル入りのビールの小瓶2本を、一気に飲み干した。

すぐに吐き気を感じ、トイレに急行しようとも思ったが、「やっぱりこいつに酒は無理だ」などと言われるのがいやで我慢した。

平静をよそおって吐き気をこらえつづけていたその瞬間、腹部に激痛が走った。史さん自身が、「これは大変なことになった」と思わざるをえないほどの痛みだった。

江蘇省人民医院に運び込まれた史さんは、ただちに手術を受けることになった。同病院胸心外科副主任の章斌医師によると、史さんは、きわめて危険な状態だった。腹腔を開いた途端に、酸味を帯びた臭気が立ちのぼった。腹腔内全体に食べたものが飛び散った状態だったという。

「食道が爆発した」とすぐに分かった。胃の内容物はすべて、食道の裂けた部分から腹腔内に噴出していた。「まるで、爆撃を受けた後のよう」だったという。食道の裂け目は横隔膜の上にも広がっており、胸腔内にも胃の内容物が飛び散っていた。「感染による化膿がいつ発生してもおかしくなかった。感染性のショックになれば、生命が危険でした」という。

食道の大部分と胃の上部を切除するしかなかった。食道癌(がん)の患者に対するのと同様の手術で、章医師は「この年齢で食道を失うとは」と残念がった。史さんは今後、一時に多くのものを食べることはできないという。

章医師によると、酒を飲めないのにビールを小瓶2本分を飲んで、胃が収縮。その結果、胃内にあったビールから出たガスと食べ物が食道に逆流した。胃に残存物がなかったことから、ガスや食べ物はすべて食道に押し込まれたと考えられる。ところが、本人が面子(メンツ)にこだわって無理に我慢したため、行き場を失った胃の内容物のために食道に強烈な圧力がかかり、一気に爆発したとみられる。

史さんのケースは極めて珍しいが、これまでにも広東省で、酒を飲んだ男性の食道が破裂した症例がある。広東省の男性は嘔吐をがまんしたわけではなかったが、腹圧が急に高まって胃の内容物を食道に押し込むことになっため、食道が圧力に耐えられなくなったという。

「食道の爆発を避ける方法」について章医師は、「まず、暴飲暴食をしないことです」と説明。嘔吐をするさいにも、できるだけ力を込めないようにすることが好ましいという。
(ビールを“イッキ飲み”、嘔吐こらえて食道が爆発=中国・江蘇)

食道破裂とは


食道破裂とは、食道内圧が急激に高まり、食道全層が大きく裂けた状態のことです。食道の場合、通常長軸に沿って縦に線状に破裂します。

原因不明なものを特発性食道破裂(ブールハーフェ症候群)といい、中高年男性の嘔吐後に多く発症し、横隔膜直上の下部食道左側壁に多いです(約90%を占める)。その原因は同部位が筋層が薄弱なこと、輪状筋の分節状欠損であり、血管神経入口部のため周囲支持組織の欠如が存在する解剖学的な脆弱性が挙げられます。

他に外因性の食道破裂の原因としては内視鏡やブジー(食道の内径を拡張する)、食道静脈瘤破裂時に用いられたセングスターケン-ブレークモア管による食道破裂などがあります。

診断には病歴聴取が重要であり、嘔吐など腹圧上昇をきたす要因を聴取します。他覚所見では、頸部皮下気腫、捻髪音を呈します。単純X線写真・胸部CT検査は重要で、皮下気腫や下部食道の解剖学的構造にしたがって縦隔気腫像(Naclerio V sign)を診断します。破裂が大きいと縦隔胸膜も破壊され、縦隔は腫大し水気胸を呈することもあります。

食道破裂の治療


食道破裂の治療としては、以下のようなものがあります。
胃内容の持続吸引は絶対に必要であり、上後縦隔に膿瘍を形成している場合は、縦隔切開にてドレナージを施行します。

状態が悪化し、膿胸、胸水貯留となった場合、対症的な治療に終始していると予後不良であり、できるだけ早期に胸腹腔ドレナージを含めた外科的な処置を行うことが治療の原則となります。さらには、栄養管理を行った後、直達手術として破裂創閉鎖や食道部分切除術なども行われます。

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