米国臨床腫瘍学会(AACR)は9月27日、生物情報学に基づいて薬効再評価(リポジショニング)した抗うつ薬が、小細胞肺癌を治療できる可能性を示唆した研究を紹介しています(AACR学会誌Cancer Discoveryに掲載されています。Repurposed Antidepressants Have Potential to Treat Small-cell Lung Cancer)



小細胞肺癌は、神経内分泌系由来の肺癌サブタイプで、予後不良であると知られています。本疾患に承認された標的療法は現在なく、ここ数十年新薬物も同定されていない状況です。

この研究では、生物情報学から得たデータに基づき、向神経活性リガンド受容体相互作用の伝達経路とカルシウムシグナル伝達経路の2つを標的とする薬剤を絞り込み、SCLC細胞株とヒトSCLC担癌マウスを用いた実験結果から、うつ治療を適応としているイミプラミンプロメタジンの2種類を検討しています。

その結果は、以下の様なものでした。
イミプラミンプロメタジンの2つともに、小細胞肺癌に細胞死を誘発することが認められました。シスプラチン抵抗性のヒト小細胞肺癌マウスの実験でも、イミプラミンによる腫瘍増殖阻害が認められ、標準化学療法に難治性を示す患者にも有効であることが示唆されています。

イミプラミン(製品名:トフラニール)は、第1世代の三環系抗うつ薬として知られ、夜尿症の治療薬としても用いられています。脳内神経末端へのノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、セロトニンの再取り込みを阻害することで薬効をもたらします。

プロメタジン(製品名:ピレチア、ヒベルナ)は、第1世代の抗ヒスタミン薬です。その他、抗パーキンソン剤として用いられる薬剤です。H1受容体を遮断し、鎮静作用、嘔吐抑制作用、抗ムスカリン作用を有します。乗り物酔いの薬としても使用されています。

このような薬が小細胞肺癌の治療薬として使用できるのならば、抗癌剤プラスαとしての使用方法や、抗癌剤治療が困難な患者さんにも使用できそうですね。治療成績の集積が早く行われ、結果が出ることが望まれます。