『サムサッカー』『人生はビギナーズ』で知られているアメリカ人、マイク・ミルズ監督が「うつ」をテーマに日本で密着取材を敢行中だそうです。

映画『マイク・ミルズのうつの話』公式サイト

今や日本人の15人に1人がかかっているともいわれる「うつ病」。しかし、2000年までは「うつ」という言葉は精神 科周辺以外ではめったに聞かれなかった。

なぜ、この短期間で「うつ」は爆発的に広まったのか? 90年代のユース・カルチャーを代表する映像作家マイク・ミルズは、その理由のひとつに製薬会社によって行われた「心の風邪をひいていませんか?」という 広告キャンペーンがあると考え、その実態に迫るドキュメンタリーを作ろうと思い立つ。舞台は近年、急速にうつが常識化した日本。

撮影対象となる条件は
1)抗うつ剤を飲んでいること
2)日常生活をありのままに撮らせてくれること
本作でマイク・ミルズは、うつ患者たちの壮絶な日常を、独特の優しく明るい目線で捉えることで、この現代を象徴する病気に対する処方箋を調合するとともに、今の日本社会の問題点も鮮やかに描き出す。

うつ病とは


うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。

うつ病の頻度は一般人口の 2〜3%といわれています。中でも、うつ病相に加えて躁病相をもつ双極性障害は 0.5〜1%であり、平均発症年齢は20歳代後半〜30歳代と言われています。女性2:男性1と女性に多く、更年期に発症する頻度が高いといわれています。

DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。

具体的なうつ病の診断手順は、i)うつ状態であることを確かめる、ii)身体疾患に伴ううつ状態を除外する、iii)併用する薬物起因性でないことを確かめる、といったことがあります。こうした鑑別を行い、その次にうつ病(内因性)の診断を下す順序が大切であると言われています。

また、最近の傾向としては、身体症状を前景とする軽症うつ病(仮面うつ病)が増加しているそうです。うつ病の8割が、一般診療科を受診するという報告もあります。身体に多彩な症状がみられ、症状の部位によって、多くの診療機関を受診(いわゆるドクター・ショッピング)しています。

よくある症状は、「睡眠障害」「全身倦怠・疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」の3つです。うつ病と診断された患者が初診時にどのような身体症状を訴えていたかを調べた結果(新臨床内科学第8版)、消化器症状が63%と最も多く、次に循環器症状20%、呼吸器症状14%、泌尿・生殖器症状6%、運動感覚器症状4%といわれています。

中でも、うつ病と消化器症状はきわめて関連が深いそうです。うつ病に伴う消化器症状として食欲不振78%、体重減少56%、便通異常44%、ガス症状33%、悪心・嘔吐29%、咽喉頭部・食道の異常感26%、腹痛23%、胃部不快感20%、口内異常感14%、胸やけ・げっぷ10%などが認められています。

うつ病の治療


うつ病とは、いわばエネルギーが枯渇し、疲弊した状態であるといわれています。そのため消耗を避け、エネルギーの蓄積・回復を図るのが治療の基本となります。

まずは、希死念慮の程度を確認し、必要なら行動制限・行動監視を行います。危ないものを身辺に置かない、家族に付き添ってもらう、といったことが必要です。身体管理としては、脱水・低栄養状態などに必要な補液・栄養補給を行います。

休養は重要であり、安静や睡眠の確保を行います。焦燥感が強い場合は、鎮静作用の強い抗精神病薬であるレボメプロマジンなどを適宜併用して、安静・睡眠確保を図ります。

薬物療法としては、抗うつ薬により抑うつの改善を図ります。また、精神療法として病気としてのうつ状態の説明、予後の保証、治療の必要性、経過の見通し、治療内容・薬物の説明を繰り返しわかりやすく伝えることが重要です。

抗うつ薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるマレイン酸フルボキサミン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である塩酸ミルナシプラン、モノアミン再取り込み阻害薬である塩酸アミトリプチリンなどがあります。

抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

また、SSRIであるフルボキサミン、パロキセチンは、セロトニン受容体を刺激するため、投与初期に不安、焦燥や不眠を引き起こしたり、性機能障害などを生じることがあります。