香川県立中央病院(高松市)の受精卵取り違え疑惑で、人工中絶した被害女性に対して、妊娠9週でも親子鑑定できる可能性があったことを病院側は伝えていなかった。病院は女性に「15週で検査ができるが、その時期の中絶は母体に負担が大きい」などと説明、女性は自分の子かどうか確認できないまま中絶した。
専門家は「9週でも検査は可能で、検査機関も少ないながらある。倫理上、その事実を夫婦に伝えるべきだった」と指摘する。
胎児の出生前診断に詳しい鈴森薫・名古屋市立大名誉教授によると、妊娠9~11週の胎児の親子鑑定は「絨毛検査」という方法を使えば可能だ。絨毛(胎盤の突起)から胎児の細胞を取り、DNA(遺伝子の本体)を夫婦のDNAと比べる。鑑定結果は約2週間で出る。
しかし絨毛検査ができる施設は限られ、胎児の親子鑑定をする信頼できる検査機関も日本で1、2カ所という。「引き受ける機関はないだろう」と言う専門家もいるが、鈴森名誉教授は「今回のような場合は事情を説明すれば検査してもらえると思う。夫婦が望むなら中絶を急がず鑑定結果を待ってもよかったのではないか。検査機関を紹介すべきだった」と話す。
女性の担当医だった川田清弥医師は「絨毛検査は日本ではほとんど行われておらず、危険な検査だ。このため説明しなかった」と話した。
([受精卵取り違え]「9週でも鑑定可能」病院説明せず)
体外受精(IVF;In Vitro Fertilization)とは、不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
簡単な流れとしては、卵子を採取し(採卵)、体外で精子と受精させ(媒精、顕微授精)、培養した胚を子宮腔に戻します(胚移植)。
具体的には、まず複数の成熟卵子を採取するため、内因性ゴナドトロピンをGnRHアゴニストで抑制しつつFSH/hMG製剤にて卵胞発育を促します(スプレキュア点鼻液や、リュープリンなど)。主席卵胞径が18mmに達したら、FSH/hMG製剤を終了し、LHサージの代用となるhCG製剤を投与して卵成熟を促します。
hCG投与の34〜36時間後に、採卵を行います。局所麻酔または静脈麻酔のもと経腟超音波ガイド下に卵胞を穿刺し、卵胞液とともに卵子を吸引します。
卵子を2〜4時間培養した後、最終運動精子濃度が10万/mL程度になるよう精子浮遊液を加えて媒精します。顕微授精では、第2減数分裂中期に達した成熟卵に対してICSI(卵細胞質内精子注入法)を行います。
ICSI(卵細胞質内精子注入法)とは、精子を不動化し、細いガラス管に捕らえてホールディングピペットで把持した卵の細胞質内に1個の精子を注入する方法です。他の顕微授精法に比較し、この方法は受精を得る確率が高く、広く用いられるようなっています。
2前核期胚(前核が2個見えれば、正常に受精した状態とされる)を受精後3日間は初期胚培養液で、4日目以降は後期胚培養液で培養します。初期胚培養液は高乳酸、低−無グルコースで非必須アミノ酸が添加され、後期胚培養液は高グルコースで必須アミノ酸と非必須アミノ酸を含みます。
胚盤胞の孵化が始まる6日目以降の胚移植では妊娠率が低下するので、現在では臨床的に培養期間は5日間が限度であるといわれています。
次に、胚移植を行います。カテーテルに形態良好胚を入れ、経頸管的に子宮腔に注入します。移植胚数は原則的に1個とされています(多胎妊娠を防止するため)。移植後にhCG製剤かプロゲステロン製剤を投与します。
この胚移植時に取り違えがおこり、問題が起こりました。その後、中絶という非常に不幸な転帰となってしまいました。上記で行うべきであったという親子鑑定は、以下のようなものです。続きを読む
専門家は「9週でも検査は可能で、検査機関も少ないながらある。倫理上、その事実を夫婦に伝えるべきだった」と指摘する。
胎児の出生前診断に詳しい鈴森薫・名古屋市立大名誉教授によると、妊娠9~11週の胎児の親子鑑定は「絨毛検査」という方法を使えば可能だ。絨毛(胎盤の突起)から胎児の細胞を取り、DNA(遺伝子の本体)を夫婦のDNAと比べる。鑑定結果は約2週間で出る。
しかし絨毛検査ができる施設は限られ、胎児の親子鑑定をする信頼できる検査機関も日本で1、2カ所という。「引き受ける機関はないだろう」と言う専門家もいるが、鈴森名誉教授は「今回のような場合は事情を説明すれば検査してもらえると思う。夫婦が望むなら中絶を急がず鑑定結果を待ってもよかったのではないか。検査機関を紹介すべきだった」と話す。
女性の担当医だった川田清弥医師は「絨毛検査は日本ではほとんど行われておらず、危険な検査だ。このため説明しなかった」と話した。
([受精卵取り違え]「9週でも鑑定可能」病院説明せず)
体外受精(IVF;In Vitro Fertilization)とは、不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
簡単な流れとしては、卵子を採取し(採卵)、体外で精子と受精させ(媒精、顕微授精)、培養した胚を子宮腔に戻します(胚移植)。
具体的には、まず複数の成熟卵子を採取するため、内因性ゴナドトロピンをGnRHアゴニストで抑制しつつFSH/hMG製剤にて卵胞発育を促します(スプレキュア点鼻液や、リュープリンなど)。主席卵胞径が18mmに達したら、FSH/hMG製剤を終了し、LHサージの代用となるhCG製剤を投与して卵成熟を促します。
hCG投与の34〜36時間後に、採卵を行います。局所麻酔または静脈麻酔のもと経腟超音波ガイド下に卵胞を穿刺し、卵胞液とともに卵子を吸引します。
卵子を2〜4時間培養した後、最終運動精子濃度が10万/mL程度になるよう精子浮遊液を加えて媒精します。顕微授精では、第2減数分裂中期に達した成熟卵に対してICSI(卵細胞質内精子注入法)を行います。
ICSI(卵細胞質内精子注入法)とは、精子を不動化し、細いガラス管に捕らえてホールディングピペットで把持した卵の細胞質内に1個の精子を注入する方法です。他の顕微授精法に比較し、この方法は受精を得る確率が高く、広く用いられるようなっています。
2前核期胚(前核が2個見えれば、正常に受精した状態とされる)を受精後3日間は初期胚培養液で、4日目以降は後期胚培養液で培養します。初期胚培養液は高乳酸、低−無グルコースで非必須アミノ酸が添加され、後期胚培養液は高グルコースで必須アミノ酸と非必須アミノ酸を含みます。
胚盤胞の孵化が始まる6日目以降の胚移植では妊娠率が低下するので、現在では臨床的に培養期間は5日間が限度であるといわれています。
次に、胚移植を行います。カテーテルに形態良好胚を入れ、経頸管的に子宮腔に注入します。移植胚数は原則的に1個とされています(多胎妊娠を防止するため)。移植後にhCG製剤かプロゲステロン製剤を投与します。
この胚移植時に取り違えがおこり、問題が起こりました。その後、中絶という非常に不幸な転帰となってしまいました。上記で行うべきであったという親子鑑定は、以下のようなものです。続きを読む