ミュージカル「キャッツ」「オペラ座の怪人」などのクリエイターとして知られるアンドリュー・ロイド・ウェバーが、前立腺がんであることをスポークスマンが発表した。

それによると発見されたガンは初期で、すでに治療を始めており、今年の終わりには仕事に完全復帰する予定とのこと。
(「キャッツ」「オペラ座の怪人」のアンドリュー・ロイド・ウェバー、前立腺ガンであることを公表)

前立腺癌とは


前立腺とは、男性のみに存在し、膀胱の前下部で直腸膨大部の前面に位置する栗の実様の器官です。尿道の起始部(前立腺部)を取り囲んで放射状に配列する分枝胞状管状腺の集合体で、線維性の皮膜に包まれています。

前立腺癌は、主に前立腺外腺(peripheral zone)より発生する腺癌です。臨床癌は50歳以上の男性に多く(典型的な高齢者癌)、高齢になるほど発生率が高いです。

発見率、罹患率ともに増加しており、特に腫瘍マーカーである前立腺特異抗原Prostate Specific Antigen(PSA)を用いたスクリーニングでPSA高値のみで発見される早期癌の割合が増えています。

日系アメリカ人の年齢調整罹患率は、日本在住の日本人のそれの約5倍高いといわれています。このことは生活環境が前立腺癌の顕性化に大きな影響を与えていることを推測させます。

罹患率は、1975年以降増加していますが、その理由の1つとして前立腺特異抗原(PSA)による診断方法の普及によると指摘もされています。

前立腺は男性ホルモンの標的臓器であり、その構造および機能の維持は男性ホルモン依存性です。このように強い男性ホルモン依存性臓器である前立腺から発生する前立腺癌の90%以上は男性ホルモン依存性を有しているといわれています。

日本の取扱い規約では腺癌は高分化、中分化、低分化に3分類されています。ほかに、Gleason分類、WHO-Mostofi分類があり、近年アメリカを中心にしてGleason分類が頻用されています。

原発腫瘍(T)、所属リンパ節(N)、遠隔転移(M)の性状によるTNM臨床分類もあり、頻用されています。局所的には精嚢、膀胱に浸潤し、骨盤内リンパ節に容易に転移します。遠隔転移としては腰椎、骨盤に好発します。

前立腺癌の診断


前立腺癌の症状としては、発生部位が周辺部なので早期癌だけでは排尿障害などの症状はありません。ただし、肥大症と合併することが多く、排尿障害があることもあります。骨転移による症状も起こることがあり、骨の痛み、病的骨折、進行例では造血機能障害、発熱などがみられることもあります。

直腸指診では、大きさ、硬さ、被膜周囲の状態をみます。経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography;TRUS)でも、同様に経直腸的に前立腺の大きさ、エコーレベル、被膜の状態がわかります。

前立腺癌の疑いのある患者さんに対しては、前立腺特異抗原prostate specific antigen(PSA)検査、直腸内触診(DRE)、経直腸的超音波検査(TRUS)を行います。

前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は、前立腺肥大症(BPH)でも上昇しますが、前立腺癌ではさらに上昇します。75〜95%の前立腺癌患者では異常高値(>4ng/ml)を示し、病勢,癌細胞の量をよく反映し、治療が奏功すると低下、前立腺全摘除術後は測定限界以下となります。

前立腺針生検では、確定診断ができ、経直腸超音波断層法ガイド下6ヶ所の生検を行います。血清PSA >10ng/mlでは癌発見率40%、血清PSA 4〜10ng/ml(グレーゾーン)では癌発見率10%であるといわれています。

直腸診で陽性の場合やTRUS陽性の場合、またはPSA値10.1ng/ml以上の場合には超音波ガイド下6か所系統的前立腺針生検を行います。PSAが10.0ng/ml以下の場合には年齢階層別PSA,、PSAD、 PSAvelocityを参考にして、前立腺針生検を行います。病理組織学的に確定診断された症例をもって前立腺癌とするので、針生検などの病理学的検索は重要です。

また、骨盤CT、MRIでは、前立腺の形態と骨盤内リンパ節の腫大を判定できます。骨シンチグラフィーでは、いずれかの骨に異常積像を認めれば転移が考えられます。

前立腺癌の治療


前立腺癌の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む