中国製など食品不信が広がる中、米食品医薬品局(FDA)は23日、深刻な食中毒の一種であるボツリヌス中毒に感染する危険があるとして、キャッスルベリーズ社(ジョージア州)が製造するホットドッグ用チリソースやペットフードなど缶製品の使用を直ちにやめるよう消費者に警告した。
 
FDAによると、これまでにインディアナ、テキサス両州で計4人がホットドッグ用チリソースを食べてボツリヌス中毒となり入院した。ボツリヌス菌の感染によって、食後6時間から36時間後に視力や言語の障害が起き、筋力麻痺、呼吸困難などに進み、致死率も比較的高い。

キャッスルベリーズ社は先週、原因のチリソースを製造したオーガスタの工場の操業を停止し、同じ工場から出荷された約90種類の缶食品の自主回収を開始。製品は全国約8500の小売店に流通し、影響は数千万缶に及ぶ可能性がある。
(広がる食品不信…中国の次は米国製の缶食品)


食中毒は、その原因になった因子・物質によって、細菌性食中毒、ウイルス性食中毒、化学性食中毒、自然毒食中毒、その他に大別されます。

食中毒の直接の原因は、飲食物などに含まれていた有害・有毒な原因物質を摂取することによりますが、その原因物質が直接に毒物として作用する場合と、原因物質が微生物であり、その増殖によって消化管の感染症を発症する場合に分けられます。つまり、
1)細菌によって産生された毒素が原因→毒素型食中毒
2)細菌が腸管で増殖したことが原因→感染型食中毒
となります。

毒素型食中毒のほうは症状が早く現れ(食べられる前に既に毒素が産生されているため)、感染型食中毒のほうが遅く出てくる(腸管で増えるまでに時間が掛かる)という違いがあります。毒素型では、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌が原因となります。一方、感染型では、腸炎ビブリオやサルモネラ属菌が原因となります。

ボツリヌス毒素の致死量は体重70kgのヒトに対しA型毒素を吸入させた場合、0.7〜0.9μgと考えられており、自然界に存在する毒素としては最強とのことです。

多くはボツリヌス毒素を含んだ食物を食べること(傷口から感染することもあるが少ない)で、ボツリヌス症は起こります。特に、乳児が蜂蜜を食べることで感染する乳児ボツリヌス症は比較的有名ではないでしょうか。乳児に、蜂蜜を与えるのは止めた方が良さそうです。

ボツリヌス毒素は、神経筋接合部に到達すると、神経細胞側の細胞膜(シナプス前膜)に存在する毒素受容体タンパク質と、毒素の結合サブユニットが結合します。作用は末梢性に限られ、筋弛緩・鎮痛作用などが確認されています。この作用を用いて、シワとり(ボトックスの注射によって)が美容整形で使われています。

ですが、ボツリヌス症では神経、主に四肢の麻痺を引き起こし、重篤な場合は呼吸筋を麻痺させ死に至ることもあります。その他、複視・構音障害・排尿障害・発汗障害・喉の渇きがみられることもあります。

ボツリヌス菌は芽胞となって高温に耐えることができるが、ボツリヌス毒素自体は加熱することで無害化します。ボツリヌス毒素自体は、100℃で1〜2分の加熱で失活されます。このため、ボツリヌス菌による食中毒を防ぐには、食べる直前に食品を加熱することが効果的です。

国内では、いずし、なれずし、カラシ蓮根などを食べて発症した人がいるそうです。食品の安全性が揺らいでいる今、十分に気をつけていく必要がありそうです。

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