読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、東邦大医療センター大森病院リウマチ膠原病センター長である川合真一先生は、以下のようにお答えになっています。
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica;PMR)とは、高齢者にみられる、体幹近位筋群の激しい痛みとこわばりを主症状とする炎症性疾患です。現在の所、原因は不明です。
多くの症例は65歳以上で発症し、男女比は1:2で女性に多いです。主症状は全身の筋肉の痛みとこわばりがみられます。特に、体幹近位部の上肢帯、下肢帯がよく侵され、朝のこわばりもみられます。
全身倦怠感、微熱、食欲低下などの前駆症状に続き1-2週間のうちに症状が完成することが多いです。しばしば抑うつ状態がみられます。
検査では赤沈やCRPの著明な亢進がみられ、治療反応性の良い指標となります。関節炎や筋炎の所見はなく、リウマトイド因子や抗核抗体は陰性で、筋原性酵素は正常です。
リウマチ性多発筋痛症の約30%に側頭動脈炎を合併するとされ、その際には頭痛、視力障害、顎跛行を呈しますが、本邦では合併は少ないです。一方、側頭動脈炎の約50%にPMRの合併がみられ、PMRと側頭動脈炎は類縁の疾患と考えられています。側頭動脈炎の診断には浅側頭動脈の生検が必要です。
上記のような症状を疑い(特に60歳以上の高齢者が、筋肉痛とこわばりを訴えた場合に疑う)、診断基準に照らし合わせて診断を行います。リウマチ性多発筋痛症の診断は、Birdらの基準が用いられます。
リウマチ性多発筋痛症の症状・所見は、非特異的であるため除外診断が必要で、時に高齢発症の早期関節リウマチとの鑑別が困難な時があります。また、リウマチ性多発筋痛症が腫瘍随伴症候群として発現することがあり、特にステロイド剤への反応性の悪い例(非定型PMR)では注意を要します。
リウマチ性多発筋痛症の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む
全身の痛みが数年間続き、眠れない時もあり、かかりつけ医に「リウマチ性多発筋痛症じゃないか」と言われました。検査はまだです。何科を受診すればよいですか。(69歳女性)
この相談に対して、東邦大医療センター大森病院リウマチ膠原病センター長である川合真一先生は、以下のようにお答えになっています。
リウマチ性多発筋痛症は、リウマチという名前が付いていますが、関節が壊れることもある関節リウマチとは全く違う病気です。原因は不明ですが、高齢者に多く、首、肩、腰、太もものほか、時に胴体の筋肉の痛みや、こわばりが続き、関節痛や微熱、不眠などがみられることがあります。
単なる筋肉痛や関節リウマチと診断されて鎮痛薬などが処方され、いくつかの病院や診療所、鍼灸院などを転々としている患者さんも少なくありません。
しかし、この病気を念頭に、特徴的な症状や、血液中の炎症反応の上昇などを総合的に見れば、比較的容易に診断がつき、ほとんどが薬で治ります。医師や一般の方に正しく理解されることが大切です。
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica;PMR)とは、高齢者にみられる、体幹近位筋群の激しい痛みとこわばりを主症状とする炎症性疾患です。現在の所、原因は不明です。
多くの症例は65歳以上で発症し、男女比は1:2で女性に多いです。主症状は全身の筋肉の痛みとこわばりがみられます。特に、体幹近位部の上肢帯、下肢帯がよく侵され、朝のこわばりもみられます。
全身倦怠感、微熱、食欲低下などの前駆症状に続き1-2週間のうちに症状が完成することが多いです。しばしば抑うつ状態がみられます。
検査では赤沈やCRPの著明な亢進がみられ、治療反応性の良い指標となります。関節炎や筋炎の所見はなく、リウマトイド因子や抗核抗体は陰性で、筋原性酵素は正常です。
リウマチ性多発筋痛症の約30%に側頭動脈炎を合併するとされ、その際には頭痛、視力障害、顎跛行を呈しますが、本邦では合併は少ないです。一方、側頭動脈炎の約50%にPMRの合併がみられ、PMRと側頭動脈炎は類縁の疾患と考えられています。側頭動脈炎の診断には浅側頭動脈の生検が必要です。
リウマチ性多発筋痛症の診断
上記のような症状を疑い(特に60歳以上の高齢者が、筋肉痛とこわばりを訴えた場合に疑う)、診断基準に照らし合わせて診断を行います。リウマチ性多発筋痛症の診断は、Birdらの基準が用いられます。
1)両肩の疼痛・こわばり
2)急性発症(2週間以内)
3)赤沈亢進(≧40mm/時)
4)朝のこわばり(≧1時間)
5)高齢(≧65歳)
6)抑うつ状態・体重減少
7)両側上腕筋の圧痛
これのうち
・3項目以上ある場合
・1項目以上と側頭動脈の異常所見がある場合
・疑診例でもステロイド剤の有効な場合
これらの場合は、確診例と診断される。
リウマチ性多発筋痛症の症状・所見は、非特異的であるため除外診断が必要で、時に高齢発症の早期関節リウマチとの鑑別が困難な時があります。また、リウマチ性多発筋痛症が腫瘍随伴症候群として発現することがあり、特にステロイド剤への反応性の悪い例(非定型PMR)では注意を要します。
リウマチ性多発筋痛症の治療
リウマチ性多発筋痛症の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む