シンガー・ソングライターの樋口了一さん(49)は昨年、パーキンソン病であることを公表した。筋肉が萎縮する進行性の原因不明の難病だ。ギターの弾き語りができなくなり、シルキーボイスといわれた歌声も出しにくくなった。でも、まだ歌える。自分が歌い続けることで同じ病気の人たちに何かできるかもしれない。ヒット曲『手紙〜親愛なる子供たちへ〜』を無償で届ける「ポストマンライブ」の活動を続け、曲のメッセージを届けたいと考えている。手紙  親愛なる子供たちへ  

変だなと最初に思ったのは6年前。パソコンのキーボードを打つとき、右手が遅れ気味で文字を打つのがついていかない。肩こりと思い、整体に行ったが、やってもらった後は良くなった気がするけど、すぐ元に戻る。整形外科やマッサージ、また「かみ合わせが悪いせいだ」と言われ歯医者にも行ったけど、良くならなかった。

そのうちにギターを弾くときのストローク(ピックを使った演奏法)ができにくくなり、右足が前に出なくなった。体のこりではなく、脳とか神経の病気を疑い、大きな病院の神経内科を受診した。15カ所目ぐらいだったが、ここでの診断も納得がいかず、これはもう自分で調べるしかないと思った。

インターネットの検索画面に、嗅覚が落ちた▽歩くとつまずくけど、走るのはOK▽階段の上り下りは問題ない−など当時の症状を細かく入力したら、パーキンソン病患者のブログに行き当たった。その描写が自分の症状にしっくりはまった。

別の神経内科に行き、「パーキンソン病だと思うので調べてほしい」と頼んだ。MRI(磁気共鳴画像装置)と脳血流では異常が出ず、頼み込んでやってもらった心筋シンチ検査(心臓の筋肉の虚血状態をみる)で少し異常が出て、やっとパーキンソン病と診断された。これが平成21年の3月。症状に気づいてから丸2年たっていた。

〈パーキンソン病は脳の黒質で作られる神経伝達物質の一つ、ドパミン(ドーパミン)が減少して起こる。手足の震えや動作がぎごちない、動作が遅くなるなどが典型的な症状。初期にはこれらの症状がない人もおり、診断がつかない人は少なくないといわれる〉

診断がついた頃、『手紙〜』が注目されていた。体が動かなくなっていく詞の内容が自分の状態と重なり、曲が私小説みたいに思われるのが嫌で病気を公表しなかった。病気を他人に知られたくないという気持ちもあった。

でも、そのうちファンの方が心配するようになった。ステージでギターを弾かなくなったし、声の感じがおかしいと。これはまずいと思っていたとき、NHKでドキュメンタリー番組の収録があり、番組を通じて公表した。
(シンガー・ソングライター 樋口了一さん)


パーキンソン病の有名人


パーキンソン病の有名人としては、
永六輔さん
・山田風太郎さん
・モハメド・アリさん
・マイケル・J・フォックスさん
・三浦綾子さん
・岡本太郎さん
・E・H・エリックさん
などがいらっしゃいます。

パーキンソン病とは


Parkinson(パーキンソン)病とは、"錐体外路系"の障害を示す疾患です。神経の刺激によって骨格筋の運動が起こるとき、その情報は、まず中枢神経系を伝わって運動ニューロンに到達し、運動ニューロンの軸索が、中枢神経系を出て末梢神経を筋まで伝わります。

"錐体路"は、運動ニューロンに運動の情報を伝える経路で、大脳皮質の運動中枢から直接伝わります。それ以外はすべて錐体外路系ということになる。大脳基底核の神経核や脳幹の多くの神経核が含まれますが、小脳なども運動に関わるので錐体外路系に含めることがあります。

パーキンソン病では、中脳の黒質緻密層のドパミンニューロンが、選択的に変性・脱落し、残存神経細胞にLewy(レビィ)小体の出現をみる疾患です。初発年齢は50歳代前半から60歳代前半が最も多いですが、20歳代から80歳代まで広い年齢範囲の発症があります。


パーキンソン病の症状


臨床症状としては、以下の様なものがあります。続きを読む