YomiDrの医療相談室に「中耳炎で鼓膜切開 小さな穴が閉じない」という相談が寄せられていました。
7歳の息子のことで相談があります。3歳ぐらいから「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」で鼓膜切開を数回繰り返して治療してきたのですが、切開から半年たっても鼓膜に開いた小さな穴が閉じていません。問題ないのでしょうか。何か、日常生活で注意すべき点などありますか。(35歳女性)

この相談に対して、日本医科大学名誉教授・人間環境大学長である八木聰明先生は以下のようにお答えになっています。
小児の滲出性中耳炎は両側性が多く、その状態が長く続くと中等度の難聴が持続します。そのために、耳からの情報が最も必要な時期に情報量不足になり、知識を含めたその後の生活に大きな影響を及ぼします。また、滲出性中耳炎の治療を怠っていると、さらに難治の中耳炎に移行することがあります。

そこで、滲出液を排泄し、鼓室(鼓膜の内側)に空気を入れる(換気)ための治療が行われます。最も効果的なのが鼓膜切開です。しかし、切開した鼓膜は通常1週間から10日程度で自然に閉鎖してしまうので、切開をくり返す必要が出てきます。頻回の鼓膜切開でも、直ぐに鼓膜が閉鎖し滲出性中耳炎が再発するときには、鼓膜の小穿孔を持続させるために、鼓膜切開したところに換気チューブを挿入します。

このように、滲出性中耳炎では、正常な中耳のように鼓室に空気を入れておくことが最も大切な治療になります。そこで、ご相談の7歳で鼓膜に小さな穴の開いている状態は、決して悪い状態ではありません。小穿孔では、ほとんど難聴は起きませんし、耳栓をしてプールに入ることもできます。もし、鼓膜の小穿孔が自然閉鎖しないようであり、反対耳に滲出性中耳炎が起きないことが確認されれば、10歳頃を目安に鼓膜閉鎖の小手術(外来あるいは1日入院)によって閉鎖すればよいでしょう。


滲出性中耳炎とは


滲出性中耳炎とは、鼓膜に穿孔がなく中耳腔に液体が貯留し、軽度の難聴、耳閉塞感を認ますが、耳痛、発熱などの急性炎症症状を欠く中耳炎のことを指します。滲出性中耳炎の多くは小児、特に乳幼児期に生じます。上気道炎罹患後などには成人にもみられ、高齢者にも発症の小ピークがあります。

どうして滲出性中耳炎が起こるかというと、耳管機能の障害で起こります。鼻咽腔からの通気(含気)がなくなり中耳腔が陰圧になることで生じます。中耳腔が陰圧になると中耳粘膜から滲出液が生じ、鼓室を含めた中耳腔内に滲出液が貯留することになります。

耳閉感,耳の違和感,軽度難聴が生じますが、乳幼児期では症状を訴えず耳痛もないために見逃されることが多いです。「テレビの音を大きくする、テレビに近寄って見る」、「呼んでも返事をしない」、「聞き返しをする」の3項目を問診すれば難聴の発見につながります。軽度であれ乳幼児では言語発達期であるために言語発達に遅れが生じます。

滲出性中耳炎の治療


滲出性中耳炎の治療としては、以下の様なものがあります。続きを読む